ファイナンスから読み解く、ESG経営の「E(環境)」支援の最前線 ― 企業経営に伴走する銀行の視点

ファイナンスから読み解く、ESG経営の「E(環境)」支援の最前線 ― 企業経営に伴走する銀行の視点

GHG(温室効果ガス)削減をはじめとするESG経営の「E(Environment)=環境」への取り組みは、企業にとって必要不可欠なものになりつつある。製造業や物流業に限定されない環境への取り組みにはどのようなものがあるのだろうか。企業経営の伴走者としての立場から、福岡銀行の神園龍一氏にお話を伺った。

神園龍一(かみぞの・りゅういち)
福岡銀行 ソリューション営業部 サステナビリティ推進グループ 部長代理
ふくおかフィナンシャルグループ ソリューション事業本部 兼務 SDGs/ESGスコアリングモデルサービス「SSI(Sustainable Scale Index)」による企業のSDGs/ESGへの取り組みの「見える化」をはじめ、持続的な成長(サステナビリティ)への伴走支援業務などに従事。

地方の中堅企業、中小企業でもGHG削減に向けた関心は高まっている

地方の中堅企業、中小企業でもGHG削減に向けた関心は高まっている

――昨今、GHG開示義務化※1 や気候関連情報開示※2 の流れが進むなかで、企業にはこれまで以上に環境対応が求められています。こうした動きを受けて、企業の意識や行動には具体的にどのような変化が生まれてきていますか

私が所属しているサステナビリティ推進グループが発足した2021年4月に比べると、確実に興味を持つ企業が増えている印象があります。当初は福岡銀行の顧客の中でも、東京に本社のある東証プライム市場の上場企業(以下、プライム企業)やグローバルな事業を展開している企業がGHG関連の取り組みを行うことが圧倒的に多かったですが、最近では顧客の大部分を占める福岡・九州に本社のある中堅企業、中小企業からも相談が増えてきました。

具体的なアクションはまだまだこれからの段階にある企業が大半ですが、まずは「知る」という最初のステップを踏んでいただいているところだと思います。

※1 GHG開示義務化:企業が事業活動に伴って排出する温室効果ガス(GHG)の量について、算定・報告・公表を義務づける制度。脱炭素政策の推進や、投資家が気候変動リスクを適切に評価できるようにすることを背景に、各国政府や規制当局が制度化を進めている。

※2 気候関連情報開示:気候変動が企業の財務状況や事業活動に与える影響について、リスクや機会を含めて投資家などに開示すること。

まず何から着手すべきかといった初期段階の相談の増加

まず何から着手すべきかといった初期段階の相談の増加

――福岡銀行様からはどのような働きかけを行うのでしょう

私どもの部署では企業に対してサステナビリティ分野での経営サポートを行っており、「SSI(Sustainable Scale Index)」というスコアリングモデルを提供しています。ESG/SDGsへの取り組みを指標化・評価するもので、これを元に優先課題の把握・伴走支援を行うことで、持続可能性および企業価値向上をサポートするためのものです。

さらに、GHG排出量算定サービスやTCFD※3 コンサルティング等の外部アライアンスとの連携、ポジティブインパクトファイナンス※4 やサステナビリティリンクローン※5 等のサステナビリティに紐づいた融資商品、さらにお客様からお預かりする資金を再生可能エネルギー分野向け融資に充当するグリーン預金等を通して、企業がサステナビリティ、GHG削減を行うサポートを行なっております。

※3 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures): 気候変動に関するリスクや機会を、企業がどのように把握し経営に反映しているかを開示するための国際的な枠組み。

※4 ポジティブインパクトファイナンス:環境・社会・経済に対して生み出す「ポジティブな影響」を評価し、その創出を目的として実行される融資や金融手法。

※5 サステナビリティリンクローン:企業が設定した環境・社会に関する目標の達成状況に応じて、金利などの条件が変動する融資の仕組み。

これらのサービスのご利用や、ご相談いただく企業は確実に増えています。背景としては世の中の流れというところもありますし、特に福岡・九州に立地する企業のうち、国内外大手の協力会社においては、「GHG削減のためにどのような取り組みをしているか、排出量を測定しているか」というアンケートが取引先から来るようになったとも耳にしています。これは、非常に幅広い業界で起こっている動きであり、結果として「まず何から始めるべきか」という相談が増加していると言えます。

――どのような業界の動きが活発なのでしょうか

製造業、エネルギー、流通、人材等、非常に幅広い業界です。サステナビリティ推進グループはサステナビリティやESG経営に関連するサポート全体を行っているので、入り口がGHG削減のようなESGの「E(Environment=環境)」の企業もいれば、雇用に課題がある「S(Social=社会)」の企業もいます。最近は特に「E(環境)」に関する取り組みに興味を持つ企業が増えている印象です。

とはいえ、製造業や物流業でもなければ直接的にGHG削減に取り組むことは、ハードルが非常に高いのは事実。実際に人材派遣業の企業から、「S(社会)とG(Governance=ガバナンス)に関しては取り組みが進んでいるが、E(環境)はできていない」という相談を受けたこともあります。

預金や融資の利用でESG経営のE(環境)に取り組める

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