これからGHG(温室効果ガス)削減に取り組むにあたり、どこから着手すべきか、どの程度のコストや体制が必要か等、判断に迷う企業は少なくない。福岡銀行では、金融機関の立場から企業のGHG削減に向けた支援を行っている。今回は神園龍一氏に具体的な支援の内容や、GHG削減・GXをめぐる地方の中堅企業・中小企業の動向について伺った。
| 神園龍一(かみぞの・りゅういち)福岡銀行 ソリューション営業部 サステナビリティ推進グループ 部長代理ふくおかフィナンシャルグループ ソリューション事業本部 兼務 SDGs/ESGスコアリングモデルサービス「SSI(Sustainable Scale Index)」による企業のSDGs/ESGへの取り組みの「見える化」をはじめ、持続的な成長(サステナビリティ)への伴走支援業務などに従事。 |
知る・測る・見える化の3ステップをハブ役として支援

――福岡銀行では、これからGHG削減を行おうとする企業に対して、どのような支援を行なっているのでしょうか
ステップとしては3つあります。まずは「知る」。当社が開催・参加しているセミナー等を通してGHG削減に関してまずは知っていただくことが大切です。
次に「測る」。どれくらいのGHG排出量があるのかわからないと、削減が始められません。
最後に「見える化」。中長期的なGHG削減計画を立て、政府が掲げる2030年度目標(2013年比46%削減)にリンクしていくというアクションを行います。
我々としては、この3つのステップすべての支援を行なっております。もっとも、我々は技術的な専門家ではないので、ハブ役として企業と専門家を繋げるという役割です。例えば、大学や行政、さらに排出量算定サービス、環境経営コンサルタントなど、金融機関としてこれまで培ったネットワークを活用しながら、GHG削減の専門家と企業をつなげています。
現場としては多くの中堅企業・中小企業がこの3ステップのうち「知る」の段階であり、まさに緒に就いたところ。2020年代後半には時価総額3兆円以上のプライム企業に対してGHG排出量開示が義務化される予定なので、Scope3※1 まで含まれる企業もGHG削減の動きが本格化する可能性が高く、より支援の必要性は増すと考えています。
※1 Scope3:企業の事業活動に関連して発生する温室効果ガス(GHG)のうち、原材料調達、物流、製品の使用・廃棄など、自社の直接排出や購入電力以外のサプライチェーン全体で発生する間接排出を指す区分。
なお、Scope1は自社が直接排出するGHG、Scope2は購入した電力・熱などの使用に伴う間接排出を指す。
GHG削減への取り組みをビジネスの好機として捉える

――GHG削減に関して、どのように捉えている企業が多いのでしょうか
どうしてもコストと捉える方は多いです。もちろん、GHG排出量の測定にもお金はかかりますし、人件費もこれまでよりは上がる面はありますが、むしろポジティブに「ビジネスの好機」と捉えてほしいという思いはあります。もちろん、それをどう受け取るかはお客様次第ですが、我々としては好機であることを理解していただくようなご説明をするように心がけています。
イメージしやすい事例としては、北九州をはじめ日本各地にある製鉄所が、元々高炉だったのを電炉化していこうという流れがあります。そうなると大きく産業が変わるので、新たに生まれる事業もありますし、市場進出もできます。GXへの対応を進めることはビジネスの転換点にも立ち会うということ。GXとビジネスの好機を掛け合わせていくという考え方が大事だと思います。
――サプライチェーンに含まれている企業はGHG削減への対応を取引先から厳しく言われるケースは増えていますか
そういうケースをお聞きすることはありますが、今のタイミングであればむしろそれはチャンスと捉えるべきです。というのも、例えばティア0※2 のメーカーからそういった要望をいただいたとすれば、それは自社が非常に重要な取引先であることの裏返しだと言えます。引き続き大切にしたいパートナーなので、しっかりGHG削減に対応してもらいたいと先んじて声をかけてきてくれていると考えてみてはいかがでしょうか。
また、実際にあったケースだと、GHG削減にしっかり対応した企業が、その取り組みを評価した別の企業と新たに取引関係を構築するケースもあります。つまり、GHG削減に対応している取引先を、発注者側も苦心して探している現状が少なからずあると考えています。
※2 ティア0(Tier 0): サプライチェーンにおいて、完成品メーカーや事業主体となる企業自身を指す区分。部品や原材料を供給する一次・二次サプライヤー(ティア1、ティア2など)に対し、最上流で全体を統括する立場を示す。
グローバル市場に近い九州だからGHG削減のアクションが必要
この記事は会員限定です。
登録すると無料で続きを
お楽しみいただけます。