昨今の製造業では、一品一様への対応や、関税による資材高騰、人材不足など、様々な環境の変化に直面しています。このような状況下で、企業が持続的な成長を実現するためには、生産性の向上が不可欠です。
多くの製造業において、生産性向上の取り組みが進んでいるところではありますが、昨今の生成AIの登場により、それを業務フローに組み込むことで、ワークフローを自動化し、生産性を飛躍的に向上している企業が登場しています。
そこで、今回は、それを実現するための「ハイパーオートメーション」のアプローチと、その実現方法、将来への展望について解説します。
ハイパーオートメーションとは

ハイパーオートメーションは、製造業において、受注から生産計画、調達、製造、検査、出荷に至るまでの業務を部分としてでなく、全体としてつなぎ、なるべく人手を介さずに業務を遂行することを目指すものです。
RPA(ロボット・プロセス・オートメーション)などによる、定型作業の置き換えにとどまらず、部門間の業務の引き継ぎや承認、紙への転記、口頭の連絡といった「業務の間」に潜む「待ち時間」や「人による手作業」など、生産性向上の妨げになりがちな部分をまとめて削ることが可能です。
その効果は、工程ごとに足し算されるのではなく、全体で掛け算するかのように増幅することが重要です。
ここで、鍵になるのが「生成AI」です。生成AIは、さまざまなデータを読み解くだけでなく、図面や写真、成績書、日報、メールといった、構造化されていない情報を読み解き、人が理解できる指示や説明、報告に自動で言語化します。
これによって、ルール化しきれない判断や、例外処理、社内ルールに沿った文書づくりなどを、人の代わりに行います。
これにより、現場の人間は、最終確認と創造的な改善に集中することができるのです。
ハイパー・オートメーションの例
1)需要変動に対する、生産計画の自動変更
例えば、生産計画について考えます。生産計画は、需要の変動に敏感に変更する必要があります。
受注や予測、部品の在庫、工程の順番、設備の空き状況など、全ての状況を、人間が見渡し、意思決定を下すのはかなり難しいものです。
しかし、AIはそれら多くの情報を読み込み、段取り替えの回数や優先すべき納期を考慮するなど、条件を踏まえて、理由のわかる新しい生産計画の案を作ることができます。
また、必要に応じて代替案も示し、関係部門への連絡文まで作成することができます。
その結果、納期遵守率が上がり、仕掛在庫や待ち時間が減少します。なぜなら、データの変化に瞬時に反応することで、見直した計画と実際の現場の距離が縮まり、設備や人の使い方が最適化されるからです。
2)受け入れ検査を自動化
次に、受け入れ検査でも生成AIは活躍します。
納品書や成績書、写真などを読み取り、合格基準と照らし合わせて受け入れ可否を判断します。
判断の際、後で人間が見直せるように、根拠を文章に残すこともできます。
合格の場合は自動で受け入れ、不備の場合だけ人に通知するので、検査場の混雑や転記ミスがなくなり、監査対応も楽になります。
また、仕入れた部品についても、仕入先ごとの傾向が自然に可視化されるので、調達や品質保証のための仕入れ先との会話も建設的になります。
3)工程の品質低下を自動検知
さらに、工程の品質について言うと、問題点はできるだけ早く前工程で発見し、取り除くことが重要です。
各種センサーや産業機械が排出する計測データの傾向を可視化し、AIがばらつきの芽を捉えたら、原因の切り分けと暫定処置、恒久対策のたたき台を生成AIが作成して関係者に共有します。
その結果、現場での初動が早まり、問題解決までの時間が短くなります。
「外観検査の結果に原因候補と対処例のメモを添える」「段取り替えの前に治具や材料を先回りで用意させる」「出荷前にラベルや適合証、注意喚起を自動生成する」といった場面でも、人間が対応した場合のように、紙を回したり、担当者同士で会話をしたり、判断を待つなど、待ち時間を減らす効果も期待できます。
実践!生成AIとハイパーオートメーション
初手は、生成AIも活用して業務プロセスを可視化
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