AIが業務に入り込み、「考える」「探す」「整える」といった作業の一部を肩代わりするようになりました。その結果、都市のデジタル化に対する見え方も大きく変わりました。
都市における行政サービスのオンライン化や交通の最適化といった便利さは、もはや大前提となり、都市の競争力を左右するのは、「AIを動かし続けられるか」ということになりつつあります。
実際、AI競争の激しい米国では、データセンター※1 の需要増に対し、電力を求めて多くの企業が競争をしています。
※1 データセンター:サーバーや通信機器を集約し、大量のデータの保存や処理を行う専用施設。AIの学習やクラウドサービスの運用など高度な計算処理を担うため、安定的かつ大量の電気が必要となる。
電力が足りないなら、発電所を建てればいい。
そう言いたくなるところですが、実務はそう単純ではありません。系統の増強や、変電所、変圧器、非常用発電機、冷却設備の建設や設置は、調達と工事で時間がかかるからです。
米国でも、設備供給網や電力・土地の制約で欲しい時期に立ち上がらないケースが増えていると報じられています。
ここでAI社会の進展にとって厄介なのは、AIの価値がデータで決まるはずなのに、現場で先に問題となるのが電力だということです。
国際エネルギー機関(IEA)は、世界のデータセンターの電力消費が2024年の約415TWhから、2030年には約945TWhへと倍増すると見ています。 伸び率は年15%程度で、他部門の電力需要の伸びを大きく上回るとのことです。

出典:IEA (2025)、世界のデータセンターの電力消費量(機器別、ベースケース、2020~2030年)、ライセンス:CC BY 4.0
※本図表はIEAの資料に基づき執筆者が独自に作成・加工したものであり、その内容についてIEAまたはその加盟国が保証・承認するものではありません。
さらに、2030年時点で世界全体の電力消費の3%弱をデータセンターが占めるといいます。 しかも、945TWhは「いまの日本全体の電力消費量を少し上回る」規模だ、という指摘もあります。
そんな中、IEAは、将来のデータセンター需要増の約8割が米国・中国・EUに集中するとしていて、インフラ制約や供給網次第では2030年の供給は945TWhではなく670TWh程度にとどまるというシナリオも示しています。
つまり、需要は強いが供給が追いつかない可能性があるという、不確実性が高まっているとも言える状態なのです。
「ワット」と「ビット」が同じテーブルに
データは貯めれば資産になります。しかし電力は、足りなければ止まる。しかもデータセンターは、工場のように昼夜で波があるわけではなく、基本的に24時間・高稼働で動き続けます。
仮に100MWの設備がフル稼働すると、単純計算で年876GWhです。
- 1世帯あたりの年間電気使用量の平均は3,950kWh/年なので、およそ22万世帯分の電気量にあたるが、AIに特化したデータセンターは、100MW以上になることもあると言われている
たった1拠点で、日本全体の年間消費電力量の0.1%を飲み込む。これがいま需要構造の変化として起きていることなのです。
日本でも、この変化はすでに「雰囲気」ではありません。
資源エネルギー庁は、データセンター・半導体工場の新増設が需要を押し上げ、2034年度に向けて最大需要電力が増加するという見通しを示しています。
2034年度の全国最大需要は1億6459万kWで、2024年度比で699万kW(4.4%)増。さらに途中経過として、2025年度は+56万kW、2029年度は+431万kWといった増加ペースも示されています。

つまり、事業を推進する上で必要なのは、何平方メートルの用地だけではなく、何MWの電気を何年で引けるか、ということも重要なのです。
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