GXとDXが加速するなか、まちづくりの現場では“地域の固有性”を軸にした新たな動きが広がりつつある。神奈川県鎌倉市では、産学官民が連携して循環型都市づくりのプロジェクトが進み、都市が自ら進化していく未来像を描き始めている。では、こうした取り組みは日本の産業団地や都市の姿をどう変えていくのか。GX2040ビジョンが示す未来に向け、求められるまちづくりの在り方を、鎌倉で循環型まちづくりを牽引する慶應義塾大学の田中浩也教授に聞いた。
| PROFILE 田中浩也(たなか・ひろや) 慶應義塾大学環境情報学部教授 1975年北海道札幌市生まれ。1998年京都大学総合人間学部卒業、2000年京都大学人間環境学研究科修了、2003年東京大学工学系研究科社会基盤工学専攻、博士(工学)。2003年京都大学COE研究員、2004年東京大学生産技術研究所助手を経て、2005年より慶応義塾大学環境情報学部専任講師。2008年より同准教授。2010年マサチューセッツ工科大学建築学科客員研究員。2011年ファブラボ鎌倉設立。2012年慶応大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ設立・代表。東京2020オリンピック・パラリンピックではリサイクルプラスチックを用いた3Dプリント表彰台98台の設計統括を担当。大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)では、日本館内「ファクトリーエリア」での常設展示制作を担当。 |
「その街でしか成立しないテーマ」を軸にした産学官民連携へ

――産業まちづくりに企業・自治体・大学が連携していくとしたら、どのような形が理想だと思いますか。
ポイントは、“そのまちでしか成立しない実証テーマ”を明確に立てることだと思っています。私は慶應義塾大学SFCの教員として、鎌倉市と「循環型のまちづくり」をテーマに10年間の共同研究を続けています。鎌倉を選んだ背景には、人口10万人以上の自治体でリサイクル率58%という全国トップの実績や住民のリテラシーの高さ、そして過去30年にわたり積み重ねてきた「ごみ削減」の取り組みの歴史などがありました。
こうした土地柄が、慶應義塾大学が持つAI・微生物・3Dプリンターといった研究領域とも親和性が高く、「まず鎌倉を日本の中都市型・循環型都市のモデルケースにしよう」ということで、長期プロジェクトにつながりました。産学官民が本気で連携するというのは、こうした“地域の文脈に根ざした必然性の高いテーマ”を掲げ、10年単位でその街に伴走しながら育てていくことだと思っています。
逆に、テーマが曖昧なまま進めると、表面的な連携にとどまり、実践が長続きしません。なぜそのまちなのか。まちのどんな固有性を生かすのか。そこが明確であることが不可欠です。地域に腰を据え、関係者とともに長期でプロジェクトをつくりあげる意志と体制があってこそ、持続的な産学官民連携が成立するのだと思います。
――地域と密接に関わっていくことが必要なんですね。
大切なのは、その“関わり方の多重性”です。私もひとりの鎌倉市民として、地域のお祭りに参加したり、コミュニティに溶け込むことを行っています。と同時に、専門性をもった研究者として、このまちの10年後、20年後がどうあるべきかということを常に考えている。特に最近は「都市経営」という視点の重要性を痛感しています。地域の文脈を理解しつつ、プロジェクトを企画し、長期的に伴走しながら、まち全体を「経営」できる人材が必要で、そういった人をどう育て、どう配置するか。それが、今後のまちづくりにおいて大きなテーマになるでしょう。
まちの文脈を読み解き、象徴をデザインするという視点

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