エネルギーも物流も、すべてが変わる 次世代産業まちづくり事業「GXP」が描く“新たな成長基盤”

エネルギーも物流も、すべてが変わる 次世代産業まちづくり事業「GXP」が描く“新たな成長基盤”

円安や地政学リスクに揺れるなか、製造業の国内回帰やサプライチェーン強靱化は喫緊の課題となっている。同時に、脱炭素や情報開示といった環境対応も企業価値を左右する重要な要素となった。これらの社会課題に一気通貫で応えるのが、東急不動産が手がける「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」だ。再生可能エネルギー100%を基盤にGXとDXを融合させる次世代型インダストリアルパークの全貌を、プロジェクトを統括する石井拓也氏に聞いた。

石井拓也
東急不動産株式会社 インフラ・インダストリー事業ユニット インダストリー事業本部 開発企画部
基幹産業拠点推進室 室長

2005年、東急不動産入社。以後、住宅分譲事業、賃貸事業(オフィス・商業)、不動産証券化事業等に従事。2025年4月より現職。

再エネ100%が創る次世代の勝ち

産業まちづくりイメージ

――まず、GXPプロジェクトの概要について教えてください。

「GREEN CROSS PARK(GXP)」は、東急不動産が全国で展開する産業まちづくり事業を総称するブランドです。各拠点にはそれぞれの特色がありますが、それらを包括的に位置づけるものとして立ち上げました。具体例としては、佐賀県鳥栖市で手がけている「サザン鳥栖クロスパーク」や、高速道路のインターチェンジに近接の立地を活かした各地の物件などがあります。

――プロジェクト始動の背景はなんだったのでしょうか。

きっかけは、佐賀県鳥栖市や茨城県で用地取得が実現したことでした。当社は全国各地で地域創生に取り組んできました。そうした活動と重ね合わせるかたちで、各地域の特色を生かした産業のまちづくりを進めれば、日本全体の活性化にもつながります。個別案件の積み重ねから、徐々に全国へと広がっていきました。

――その「サザン鳥栖クロスパーク」にはどんな特長があるのでしょうか。

「サザン鳥栖クロスパーク」は、九州地方における交通の要衝である佐賀県鳥栖市に位置しています。南北の高速道路が交差する結節点であり、交通利便性が非常に高いのが最大の特長です。昨年運用を開始した小郡鳥栖南スマートインターチェンジからも至近距離にあり、物流拠点としての優位性を備えています。周辺には住宅地も広がっており、雇用の厚みという観点でも優れたエリアです。加えて、水資源が豊富でインフラ面が整っていることも大きな強みのひとつとなっています。

――インターチェンジ至近という立地を生かして、自動運転を取り入れた各拠点間の連携構想もあると伺いました。

将来的には行政等との対話を通じて、自動運転トラックが通行できるような環境整備を進める計画です。実証実験を行いながら、団地内へそのまま進入し回遊できる仕組みを実現することで、物流効率をさらに高められると期待しています。

――GXPでは、GX(グリーントランスフォーメーション)をどのように産業まちづくりに組み込んでいるのでしょうか。

当社は GXの推進に向け、再生可能エネルギーの開発・供給体制を核とした産業まちづくりを進めています。25年9月現在、グループで約2.5GWの再エネ発電能力を保有しており、2030年度には4GWに拡大予定です。再エネ電力を100%供給することで、団地全体を脱炭素化する計画です。

――再エネ100%の産業団地は、進出企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

近年、大手上場企業を中心に、環境や情報開示への対応がより一層求められるようになっています。自社工場をクリーンエネルギー100%で運営できることは、入居企業様の企業価値を高める大きな要素になり得ます。実際に、当社が展開するオフィスビルや商業施設はRE100※に対応しており、それが入居の決め手となった事例もあります。産業団地においても、進出いただく企業様に環境面での付加価値を感じていただけるよう取り組んでいく予定です。

※RE100:2014年に発足した、企業が使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目指す国際イニシアチブ

――欧州では環境規制が厳しくなっています。こうした流れが企業ブランドや海外取引に与える影響をどう見ていますか。

非常に大きな影響があると見ています。サプライチェーンにおける環境対応が不十分な場合、取引面で不利になることもあります。資金調達の面でも対応の有無が評価に直結することは皆さんご存知の通りです。これから先、環境やDXへの取り組みは間違いなく、企業にとって大きなメリットにつながるはずです。

供給網危機に応える、国内回帰の新たな解決策

供給網危機に応える、国内回帰の新たな解決策

――エネルギーマネジメントの内容や、それが進出企業にどう還元されるのかを教えてください。

まだ計画段階ではありますが、産業団地を広く展開することでスケールメリットを生かしたエネルギーマネジメントを検討しています。具体的には、一括受電による効率的な電力供給や蓄電池を活用した電力需要のピークカットなどです。こうした仕組みを組み合わせることで、団地全体のコストを抑え、そのメリットを進出企業にも還元できると考えています。

――政府が掲げる「GX2040ビジョン」では、脱炭素と産業競争力の両立を柱としています。GXPはこのビジョンとどのように連動しているのでしょうか。

※「GX2040ビジョン」: 2040年を見据え、エネルギー転換・産業構造転換を通じて脱炭素と経済成長の両立を目指す指針

GXPは自社開発のインフラを活用し、再生可能エネルギー100%によるまちづくりを進めるものであり、その点で政府の指針とも方向性を同じくしています。しかしながら、この構想は政府のビジョンを受けて始まったものではありません。当社は10年以上前から再生可能エネルギーの開発や社会課題への取り組みを進めており、結果的に政府の政策とも合致するものとなりました。

――サプライチェーンの強靭化も重要な課題です。国内回帰やBCPの支援についてはどのように考えていますか。

GXP立ち上げの背景には、海外に流出していたサプライチェーンの一部が、円高や地政学リスクなどを契機に国内回帰の動きを強めているという状況があります。産業団地を供給することで、企業の国内回帰を支え、サプライチェーン強靭化にも貢献できると考えています。

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