10年後の産業地図を塗り替える~産学官民連携で挑む地域の活性化~

10年後の産業地図を塗り替える~産学官民連携で挑む地域の活性化~

「産業団地=工場の集積」という常識が変わろうとしている。住宅や教育機関、コミュニティ機能を備えた新しいまちは、企業の人材確保と地域の活性化を同時に実現する。未来を見据えた挑戦について、「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」プロジェクトを統括する東急不動産・石井拓也氏に聞いた。

石井拓也
東急不動産株式会社 インフラ・インダストリー事業ユニット インダストリー事業本部 開発企画部
基幹産業拠点推進室 室長

2005年、東急不動産入社。以後、住宅分譲事業、賃貸事業(オフィス・商業)、不動産証券化事業等に従事。2025年4月より現職。

暮らしと仕事を循環させ、人が根付く産業団地へ

ビジョンを実現する6つのコンセプト

――「GREEN CROSS PARK(GXP)」では「働く場・暮らす場・学ぶ場が共鳴する産業まちづくり」を掲げています。このようなまちを実現することで、企業や人々にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

GXPの産業まちづくりは、物流や工場にとどまりません。当社はこれまで渋谷を中心にまちづくりを進めてきたデベロッパーであり、その経験を産業まちづくりにも生かす計画です。産業まちづくりが発展することに伴い、周辺には新たな雇用が生まれます。そうした需要に対応するために、グループ一体で住環境を整備していくことも視野に入れています。住宅整備はもちろん、街区内には共用スペースや共用棟を設け、地域の方々がコミュニティスペースとして利用できる場所や、有事の際にBCP拠点として機能する場所も整備する予定です。こうした取り組みを通じて、「産業まちづくり=企業の拠点」という枠を超え、地域社会とともに発展するまちづくりを実現します。

――それらの実現により、人材確保や定着といったメリットも期待できるのでしょうか。

工場に進出される企業様の多くは、従業員の大半を地元で採用されています。そのため、地域としっかり連携しながら、地元の方々に継続的に働いていただける仕組みを整えることが重要になります。当社の産業まちづくりによって暮らしと仕事の循環を生み出し、人が根付く環境をつくることで、企業の安定稼働や人材定着につなげていきます。

――企業だけでなく地域住民や学生も巻き込むことで、どのような相乗効果が生まれるのでしょうか。

例えば、地域の教育機関や大学と連携し、産業団地内の工場を研究や実証実験のフィールドとして活用する。その過程で学生が産業団地に関心を持ち、卒業後も関わり続けることで、地域の人材循環につながるでしょう。こうした仕組みを通じて、産学官民が連携し合う相乗効果を生み出し、地域全体の活性化に貢献していきたいと考えています。

社会インフラを備え、防災にも強い“住みつづけられるまち”

――“暮らす”という観点で重視している魅力はなんですか。

私たちが進めているのは「産業のまちづくり」ですが、そこに社会インフラをパッケージとして組み込むこと自体が大きな価値になります。立地によっては交通の便が十分ではない場所もありますので、地域の拠点となる機能を集約する必要があります。買い物ができる施設など、生活に欠かせない社会インフラを産業団地の中に取り込み、公共的な役割を果たす場として開放していく。そうすることで街全体の利便性を高め、住む人にとっても魅力的な環境を実現できると考えています。

――災害時の電力供給や避難スペースの確保など、防災拠点としての役割も強調されています。どのような体制で企業や住民をサポートされるのでしょうか。

まずは有事の際にインフラが途絶えないよう、非常用発電や備蓄品確保などを整備します。加えて重要なのは、平時からの横のつながりです。先ほど触れたコミュニティスペースもその一環ですが、工場で働く方々が普段から連携し合える関係を築いておくことが、災害時には大きな力になります。そうした意味でも、我々のエリアマネジメントの中で日常的にコミュニケーションを育み、いざという時にスムーズに協力し合える体制を構築していきます。

ログアウト

ログイン