GXが変える企業立地戦略――脱炭素時代、不動産はどう選ばれるのか

GXが変える企業立地戦略――脱炭素時代、不動産はどう選ばれるのか

移転、新設する施設が脱炭素・再生可能エネルギーなどのGX(グリーントランスフォーメーション)に対応しているかを考慮して立地選定をしなければいけない時代となった。判断にどのような影響が出ているのか、海外の状況との比較、GXの観点で新しい拠点を選定する際のポイント等について、世界最大の事業用不動産サービス企業であるCBREグループの日本法人シービーアールイー株式会社の田口 淳一氏に伺った。

田口 淳一(たぐち・じゅんいち)
シービーアールイー株式会社 アドバイザリーサービス|リーシング マネージングディレクター 1991年に生駒商事株式会社(現 シービーアールイー株式会社)入社。物流施設や工場等の事業用不動産の仲介業務を経て、現在はリーシング マネージングディレクターとして国内の事業用不動産の賃貸仲介事業を統括。

移転・新設時に、GX対応の施設かどうかを重視する企業が増加

移転・新設時に、GX対応の施設かどうかを重視する企業が増加

——企業がGX(グリーントランスフォーメーション)に向き合うことで、施設の立地判断にはどのような変化が出ていますか

お客様がご入居を検討している施設が環境認証※1 を取得しているか、聞かれる割合が増えました。当社では物流施設の賃貸を仲介することも多いですが、現在の大型マルチテナント型物流施設の8割以上の物流施設が環境認証を取得している状況なので、企業側も選びやすく、施設側としても環境意識の高い企業を誘致しやすい状況だと思います。また、その施設が再生可能エネルギーをどの程度利用できるかも、気にされている企業が増えている印象です。

※1 環境認証:建物や事業活動が、環境配慮や省エネルギーなどの基準を満たしていることを第三者機関が評価・認証する制度。

しかしながら、GXに関連する取り組みはまだ日本国内において始まったばかりです。だから、環境認証や再生可能エネルギーを立地判断の最優先事項としている企業はまだ多くないと思います。あくまで、コスト、エリア、広さなど既存の判断軸と同列かその次くらいに環境へ配慮する要素がくるというのが現状です。かといって優先度が低いというわけでもなく、企業によってかなり比重の違う捉え方をしています。

海外事例のローカライズには産業団地やデータセンターが有効

——日本企業のGX立地戦略は、海外と比較してどんな段階にありますか

ヨーロッパ、北米は日本よりかなり進んでいる印象があります。これは欧州において環境へ配慮する意識がそもそも高いというところと、それによって法的な枠組みもできているのが理由です。全体にGX立地戦略が普及していくには、国の制度や取り組みが先にあり、そこに企業が対応していくという順番になるので、政府の動向を注視することが重要だと思います。

——海外の施設では具体的にどのように再生可能エネルギーが運用されているのでしょうか

工場にしても物流施設にしても数十年の長いスパンで運用するものなので、ある程度若い施設であれば、建て替えるのではなく太陽光発電や蓄電池などの設備を後付けして再生可能エネルギーを活用していくというケースが多いようです。やはり、太陽光が敷地面積やコストを考慮した際に最も導入しやすいでしょう。中には風力やバイオマスを導入しているところもありますが、非常に少数です。日本においても、PPA※2 を活用するなどすれば初期費用をかけずソーラーパネルを設置できるので、やはり太陽光が再生可能エネルギーの主力になると思います。

※2 PPA(Power Purchase Agreement):発電事業者が企業の敷地などに太陽光発電設備を設置し、企業は初期費用を負担せず、発電された電力を長期契約で購入する仕組み。
関連コラム)PPA(電力購入契約)とは?企業が知っておきたいGX時代の電力戦略

また、中国企業だとAIと組み合わせての活用が進んでいます。例えば建物全体をソーラーパネルで覆って、AIを使い電気使用量を効率的に管理しているという事例も見かけます。

ただ、海外の成功事例を日本にそのまま持ってきてもうまくいくとは限りません。日本の土地や法規制に合わせてローカライズする必要があります。

——海外事例を日本に導入するにあたって難しい点は

海外の工場や物流施設は巨大な規模の産業パークのようなところに集積して立地していることが多いため、そもそも日本とは土地の広さやコスト感が全く異なります。そのため、いち企業が海外の施設と同じことをしようとしてもフィットしません。単独ではなく産業団地を開発して再生可能エネルギーの活用を進めていく方が効率的だと思います。

比較的新しい種類の施設としてデータセンター※3 がありますが、これに関しては国内でも北米等と同様の動きになりつつあります。例えば北海道石狩市には、広大な土地に様々な企業のデータセンターを集積させる計画があり、その1棟が今年竣工予定で、再生可能エネルギーで消費電力の100%を賄う予定となっています。大量の電気を消費するデータセンターは再生可能エネルギーを有効に使える可能性が高く、データセンターの集積が日本国内のGXが進む入り口の一つになる可能性は高いと思います。

※3 データセンター:サーバーや通信機器を集約して設置し、データの処理・保管・通信を行うための専用施設。大量の電力を消費するため、電力の安定供給や省エネルギー対策が重要とされる。

施設のGX対応が当たり前になる時代が来る

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