DX・GXの進展に伴い、企業のデジタル基盤を支えるデータセンターの重要性が高まっています。データセンターは膨大な情報を安全に管理・処理する施設であり、その立地選定は事業の持続的成長や運用コストに直結する重要な経営判断となります。データセンターの立地を検討する際には、災害リスクの低さ、安定した電力供給、通信インフラの整備状況など、多岐にわたる条件を総合的に評価する必要があります。加えて近年では、脱炭素化の観点からGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する立地も喫緊の課題です。本記事では、データセンターの立地条件や選定のポイント、国内の立地状況などを解説します。
データセンターとは何か

ITインフラの中核を担う施設として、現代企業の事業継続に欠かせない存在となっているデータセンター。ここでは、データセンターの基本的な定義と役割、企業におけるデータセンター活用の意義について解説します。
データセンターの基本的な役割
データセンターは、サーバーやネットワーク機器、ストレージ等を集約して運用・管理することを目的として機能している建物や設備の総称です。
企業の重要なデータを安全に保管・処理する機能を提供するとともに、24時間365日の安定稼働を実現する設備と、専門的人員を含む盤石なサポート体制を整えているのが特徴です。
一般的なオフィスビルとデータセンターの一番の違いは、データ管理と運用に特化した専用の電源設備や、各種情報通信機器を安定稼働させるための専用の空調・冷却システム、万全を期したセキュリティ設備、データの消失を防ぐための防災設備を備えていることにあります。
また、物理的な施設としての特性を持つ点で、よく混同される「クラウド」とは明確に異なります。クラウドは仮想環境に構築されたサービス提供形態の一つですが、データセンターはそのサービス自体を支える物理的なインフラストラクチャです。
そのため、データセンター事業者が直接クラウドサービスを提供することもあれば、クラウド事業者がデータセンターを活用してクラウドサービスを提供することもありうるわけです。
参考:日本データセンター協会『データセンター セキュリティ ガイドブック 2017年版』
企業にとってのデータセンターの重要性
データセンターは、企業にとってBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策としての重要な役割を果たしています。
自社拠点のみでサーバー室を持つ場合、地震・台風などの災害時における業務停止のリスクや、専門人材の確保、設備投資などのコスト負担といったリスクが伴います。データセンターの活用を行うことで、より安全かつ低コストな事業継続が期待されるのです。
また、現代における企業活動では、デジタル化・DX推進におけるインフラ基盤として、データセンターの存在が不可欠となっています。さらに、データ主権の確保と経済安全保障の観点からも重要性が増しており、総務省の資料では”データは21世紀の石油”と表現され、国内にデータ拠点を置くことが国際競争力に直結する旨が明記されています。
引用:総務省 総合通信基盤局『データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について』
データセンター立地の基本条件

データセンター立地において考慮すべき基本的な条件として、災害リスク、電力インフラ、通信インフラ、アクセス性の4つの観点から解説します。これらの条件をバランスよく評価して立地選定することで、データセンターの長期的な運用成功につながります。
地盤が安定しており災害リスクの低い地域であること
データセンター立地において最も重要な条件は、地震リスクが低く地盤が安定している地域を選ぶことです。特に、活断層からの距離や地盤の安定性を慎重に評価する必要があります。
日本データセンター協会が規定している『データセンター ファシリティ スタンダード』においても、地震や災害によるデータ損壊を防ぐ耐災害性の高さは最重要基準となっています。
参考:日本データセンター協会『データセンター ファシリティ スタンダードの概要』
また、電気設備全般は水に弱いため、水害リスクが低い地域であることも重要な条件です。実際に、オフィス近隣の川の堤防決壊による浸水被害にあった企業が、基幹システムをデータセンターにアウトソーシングしていたことでシステムが無事だった例があります。
参考:国土交通省『浸水被害防止に向けた取組事例集~ 社会経済被害の最小化の実現に向けて ~』
そうした災害時のバックアップ的な役割を果たすからこそ、データセンターの立地選定において、災害リスクが少ないかどうかは念には念を入れて検証する必要があります。浸水想定区域外で、河川・海岸からの距離が十分に確保された立地が理想的です。
土砂災害や雪崩など他の自然災害リスクも含めて、国土交通省が提供するハザードマップを活用した総合的なリスク評価が欠かせません。
さらに、サーバーを安定して稼働させるための地盤の平坦性と、将来的な拡張性確保のために、平坦で広い土地の確保も必要な条件として挙げられます。
安定した電力供給が確保できること
データセンターは24時間365日変動せずに電気を消費し続け、需要の変動幅は年間わずか1%未満という特徴があるため、安定した電力供給が不可欠です。
データセンターは大量の電力を消費する施設であり、日本データセンター協会事務局長のインタビューによれば、最小規模でも3万kW程度の電力が必要とされています。これは一般家庭約1万世帯分に相当する規模です。
出典:電子力産業新聞『電気を爆食しているのはデータセンターではない(日本データセンター協会事務局長 増永直大さん インタビュー)』
既存の一般的な電力供給インフラでは、この高い電力需要を到底賄いきれないため、特別高圧電源など大容量電力供給体制の確保は必須条件といえるでしょう。
また、大容量の電力確保だけでなく、非常用電源や無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)といった電源の冗長化技術や、複数の発電所・変電所への分散、AIによる予測型電源管理システム、蓄電池技術などを組み合わせることで、幾重にも給電停止リスクを防ぐことが求められます。
参考:中四国負荷試験サービス株式会社『データセンター必読!非常用電源の冗長性確保』
通信インフラが整備されていること
高速・大容量通信回線へのアクセスは、データセンターの基本要件の一つです。特に、インターネットエクスチェンジ(IX)拠点からの距離が重要な要素となります。
内閣官房の資料によると、IX接続数の約74.2%が関東、約24.2%が関西に集中している状況です。東京大手町、大阪堂島がその中心となっており、これらの拠点からの距離が通信遅延(レイテンシ)に直接影響します。
出典:内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)『データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について』
また、特定のキャリアのシステム障害による通信停止を防ぐため、複数キャリアの通信回線が利用可能な環境、いわゆるキャリアダイバーシティの確保が可能な環境であることも重要な条件として挙げられるでしょう。
参考:EnterpriseZine『キャリア・ダイバーシティが実現する止まらないネットワーク IIJグローバルソリューションズ 岩澤利典社長インタビュー』
アクセス性と利便性が高い地域であること
主要拠点からのアクセスのしやすさは、データセンターの運用面において重要な条件となります。
緊急時の迅速な対応や定期メンテナンスにおける移動コストを考慮すると、たとえば主要幹線や高速道路IC、空港等の、交通の要所への適度なアクセス性が求められます。
参考:内閣官房『GX産業構造実現のためのGX産業立地政策について-第5回GX産業構造実現のためのGX産業立地ワーキンググループ事務局資料-』
データセンターの地域分散も検討すべきでしょう。メインサイトとバックアップサイトを地理的に分散させることにより、特定の場所が被災しても基幹システムが停止するリスクが軽減できます。地域分散の際は、電力供給先の発電所がどこにあるのかを把握することも重要です。
参考:日本データセンター協会『データセンター セキュリティ ガイドブック 2017年版』
データセンター立地選定の具体的なポイント
立地選定時には、以上のような基本的な立地条件の他に、施設の構造・設備面での評価基準、セキュリティと運用体制といった具体的かつ細かいインフラ面の検討も非常に重要です。これらの要素は、データセンターの信頼性と長期的な運用効率に直結します。
建物の耐震性・免震性
地震に強い建物設計は、データセンターにとって必要不可欠な条件といえます。地震大国日本の建築物はさまざまな仕組みで地震に強い構造を構築しているため、耐震構造と免震構造の違いを理解し、それぞれの効果を評価することが重要です。
内閣官房の資料によると、東日本大震災時のデータセンター被害は「免震台の被害4件、免震床の被害1件」と限定的だったことが記録されています。これは、適切な耐震・免震設計の有効性を示す事例といえるでしょう。
出典:内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)『データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について』
地震リスク評価(PML※1)のほか、データセンターファシリティスタンダード(ティア1~4)の認証レベル、サーバーラックの固定や転倒防止対策も含めた総合的な地震対策なども、選定時の重要な指標となります。
参考:日本データセンター協会『データセンター ファシリティ スタンダードの概要』
※1 PML(Probable Maximum Loss):想定される最大級の地震が発生した場合に、建物や設備が被ると見込まれる最大損失額を評価する指標。
冷却設備の効率性
データセンターにおいて、冷却は極めて重要な要素です。マッキンゼー・アンド・カンパニーの推定によると、データセンターが消費する総エネルギーのほぼ40%を冷却が占めているとされています。
出典:Boyd『データセンターのエネルギー消費:空冷と液体冷却』
冷却方法(空冷式と液冷式)の違いについて理解し、エネルギー効率の観点から適切な選択を行うことが重要です。なお、液冷式の方がエネルギー効率が高く、PUE※2(電力使用効率)の改善に寄与すると考えられています。
※2 PUE(Power Usage Effectiveness):データセンター全体の消費電力に対する、IT機器消費電力の関係を示す指標。
セキュリティ体制

データセンターは社内データや基幹システムなど会社の機密情報の宝庫となっているため、堅牢なセキュリティ体制は欠かせません。
まず、物理的なセキュリティ対策として、入退室管理システム、監視カメラ、多重セキュリティゲートの設置が基本となります。これらに加えて、サイバーセキュリティ対策との連携、24時間365日の監視体制の確保も重要です。
なお、物理的な攻撃や不正侵入などの回避のため、データセンターの正確な所在地についてはそもそも非公開であることが多くなっています。
バックアップ体制と冗長性
データやシステムのバックアップはもちろん、電源設備の冗長性、バックアップ体制の有無の確認も必須です。
無停電電源装置(UPS)の整備、自家発電設備、蓄電池など、冗長性に寄与する設備やシステムを備えているか、稼働時間の確認も含めて慎重に検討を行いましょう。複数の通信キャリアに接続可能な環境(マルチキャリア対応)や、冗長化された空調・冷却システムも、通信やサーバーの稼働を停止させないために欠かせない要素です。
参考:中四国負荷試験サービス株式会社『データセンター必読!非常用電源の冗長性確保』
日本国内のデータセンター立地状況
データセンターの立地判断を適切に行うためには、国内のデータセンター立地の現状と傾向、東京・大阪圏への集中と地方分散の動き、地域ごとの特性と優位性などについて詳しく知っておく必要があるでしょう。日本のデータセンター業界は現在、従来の大都市圏集中型から地方分散型への移行が進んでおり、この大きな転換は、災害リスク軽減だけでなく、コスト最適化やGX推進の観点からも注目されています。
東京圏・大阪圏への集中とその背景
経済産業省の2021年4月調査結果によると、日本国内のデータセンターの立地は、東京圏と大阪圏に80%が集中しています。
出典:日本法人 ジョーンズ ラング ラサール株式会社『国内回帰に舵を切るデータセンター立地場所』
より詳細には、内閣官房の資料では関東61.1%、関西24.3%と記載されており、合計で約85%という高い集中率となっています。
出典:内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)『データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について』
この集中の背景には、インターネットエクスチェンジ(IX)拠点との近接性があります。インターネットサービスプロバイダやコンテンツ事業者の相互接続拠点、すなわちIX拠点が東京の大手町、大阪の堂島に集中しているため、通信遅延を最小化する立地戦略として大都市圏への集積が進んだのです。しかし、この集中は大都市圏における用地不足と高コスト化の課題も生んでいます。
地方分散化の進展
政府はデジタル田園都市国家インフラ整備計画を通じて、データセンターの地方分散政策を推進しています。この背景には、リスク分散とBCP対策としての地方立地の重要性があります。
参考:総務省『デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)概要』
地方立地のメリットとして、用地確保のしやすさとコストメリット、地域経済活性化・雇用創出への貢献が挙げられます。実際に政府でも、令和3年度補正予算500億円、令和5年度補正予算100億円、令和6年度補正予算120億円のデジタルインフラ整備基金が設置され、東京圏以外のデータセンター整備を支援しています。
出典:総務省『データセンター等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業』
参考:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会『デジタルインフラ強靭化事業』
ただし、地方分散化には課題もあり、特に電力供給までのリードタイム問題が深刻です。日本データセンター協会事務局長へのインタビューによれば、変電所整備から実際の電力供給まで早くても6年かかり、特に高圧送電線の敷設には10年単位の期間を要するとされ、電力確保の面で大きなボトルネックとなっています。
IT業界の技術サイクルを考えれば、新たな設備の設置は現実的に考えれば3年ほどのスパンで行わなければならないため、このリードタイムの遅さは致命的とも言える状況です。また、専門人材の確保・育成などにも長いリードタイムを要すると想定されます。
出典:電子力産業新聞『電気を爆食しているのはデータセンターではない(日本データセンター協会事務局長 増永直大さん インタビュー)』
北海道など寒冷地の優位性
北海道をはじめとする寒冷地は、GX時代のデータセンター立地として考えた場合に色々なメリットがあり、注目されています。
最大のメリットは冷涼な気候による冷却効率の向上です。外気によるフリークーリングと雪冷房が活用できる場合、空調の消費電力と二酸化炭素排出量を(東京の一般的な空調と比較して)約90%削減可能とされています。
また、豊富な再生可能エネルギーの活用可能性も魅力的で、特に風力発電は全国1位のポテンシャルを有しています。特に北海道では広大な用地を低コストで確保できる点も、立地の優位性として挙げられるでしょう。
ただし、日本データセンター協会事務局長の指摘によると、冷えすぎもそれはそれで問題で、暖め直しも必要になってくるという課題もあります。冷えすぎへの対応の他、湿度管理、海の近くの場合は塩害対策などの余計なコストも考慮が必要とされています。
参考:電子力産業新聞『電気を爆食しているのはデータセンターではない(日本データセンター協会事務局長 増永直大さん インタビュー)』
立地戦略にはリスク分散とBCP対策が特に重要
データセンター立地において、単一拠点への依存は、災害時に甚大な影響をもたらす危険性があります。ここでは、データセンター立地におけるリスク分散の重要性や、BCP(事業継続計画)の観点から見た複数拠点の活用、災害時の事業継続性を高める立地戦略について解説します。東日本大震災等の大規模災害の教訓も踏まえ、戦略的な立地選定とリスク分散の重要性を理解することで、企業の持続的発展に向けたデータセンター活用につながります。
遠隔地バックアップの必要性
データセンターのメインサイトとバックアップサイトを地理的に分散させることの重要性は、東日本大震災の教訓からも明らかです。
内閣官房の資料によると、データセンター施設自体の被害は軽微で済んだものの、日米間を結ぶ複数事業者が管理する海底ケーブルの全て、ないしは多くが断線し、復旧に1ヶ月〜4ヶ月、最大で5ヶ月間を要したことが記録されています。
出典:内閣官房 GX実現に向けた専門家ワーキンググループ(第8回)『データセンター等のデジタルインフラ整備の現状と課題について』
データセンターそのものだけではなく、海底ケーブルなどの通信インフラ設備の断線・破壊のリスクも加味した上で、遠隔地へのバックアップ体制の構築を備えることが重要です。
複数拠点によるリスク分散
データセンター立地においては、同一災害の同時被災リスクを避けるため、一定の距離を確保したDRサイト※3 の設置が推奨されています。一般的には60km以上(日経記事にこの予測は古いという記述あり)、広域災害を考慮すれば最低でも300km以上の地域分散が必要です。
※3 DR(Disaster Recovery)サイト:災害発生時にシステムを復旧・継続させるためのバックアップ拠点。
また、DRサイトの選定においては、地震を引き起こす地殻プレートが異なる地域、異なる電力会社管内への分散配置も考慮すべきでしょう。活用目的に応じた拠点の使い分けや、クラウドとの併用によるハイブリッド戦略も有効なアプローチです。
参考:日経クロステック『[データセンター編]「DRサイトは60キロ離す」は古い』
GX時代に最適なデータセンター立地を検討しよう
データセンターの立地選定は、企業のデジタル戦略には欠かせないものとなっていくでしょう。とりわけDX・GX推進を左右する重要な経営判断となることは間違いありません。
データセンターの立地選定の際は、災害リスクの低さ、安定した電力供給、通信インフラの整備といった基本条件に加え、近年では脱炭素化や再生可能エネルギーの活用、省エネなどグリーン成長戦略的な観点も欠かせない判断材料となっています。
現在、国内データセンターの立地状況においては、リスク分散やBCP対策はもとより、コスト面でのメリットの観点からも、地方への分散が進んでいるのが現状です。特に冷涼な気候の地域や広大な用地を確保しやすい地域、豊富な再生可能エネルギーを活用できる地域は、GX時代の最適立地として注目を集めています。
政府も総額600億円の基金や各種補助金などの支援策を通じて、データセンターの地方分散と脱炭素化をサポートしています。企業はこうした支援策を活用しながら、自社のニーズに合った最適なデータセンター立地を戦略的に選定することで、事業の持続的成長とサステナビリティの両立が可能となるでしょう。
GREEN CROSS PARKについて

東急不動産が展開する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、GX・DX・まちづくりを掛け合わせ、日本の産業と地域の未来を支える「産業まちづくり」事業です。産業団地を起点に、持続可能な都市・産業基盤の構築を目指しています。
地域の特性や産業ニーズに応じた開発を全国で進める中で、再生可能エネルギーを活用した次世代インフラ整備にも注力。将来的には、100%再生可能エネルギーで稼働するデータセンターの実現も視野に入れ、GX時代に求められる環境性能と高い信頼性を備えた拠点づくりを構想しています。