ITツールやサービスを利用して事業のDXを促進したい場合に、うまく活用したいのがDX関連の補助金です。一言にDXといっても多様な目的や業界を対象にしたものがあり、管轄の省庁が該当する補助金事業を様々運営しています。今回は、日本全国の事業者が使えるDX関連の補助金事業を紹介します。
※記事掲載時はすでに公募が終了しているものも含みます。
【1】DX型CO2削減対策実行支援事業

DX型CO2削減対策実行支援事業は、脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)のうちの一つです。DXシステムを用いた設備運用改善による省CO2化や運転管理データに基づく効果的な改修設計をした場合に補助金が交付されます。
具体的には工場や事業場の運用改善状況をDXシステムでリアルタイム計測し、CO2の削減に役立てたり、データ等を用いて適切な設備容量への改修計画を策定しCO2削減に役立てるという使い方が想定されています。
導入するDXシステムの重要なポイントとして、以下が指定されています。
《DX システムとは》
活動量・エネルギー使用量を計測・記録できるシステムで以下の機能要件を満足するシステムとします。
• 活動量(エネルギー使用量)及びCO2削減対策を提案するために必要なデータを計測できること
• 少なくとも1時間ごとに必要なデータを取得保存できること
• 取得保存したデータを事業報告期間中は電子的に維持管理できること
補助対象として認められるのは、DXシステムだけでなく、導入に伴う様々な経費も対象になります。具体的には支援を行うために必要な支援機関の人件費、通信交通費、消耗品費、印刷製本費、光熱水費、リースやレンタルの借料及び損料、会議費、外注費などが代表的です。もちろん、実際に導入する機器・システム関連費も補助対象となります。
補助金を利用したい事業者は事務局が指定する支援機関リストから2社以上を選び、見積もり依頼をし選定、支援内容について合意をとります。事業者が独自で民間の支援機関(コンサルなど)を選び補助金申請をすることはできません。支援機関が実施するのは、現状の把握、現地踏査・計測、現状分析・課題抽出、対策効果分析・対策選定、診断報告書の作成、診断結果報告会の実施、削減対策の実践伴走支援、支援完了報告会の実施という流れになります。
支援完了報告会を開催し、業務の納品・検収を行なったのち費用を支払います。事業者は完了実績報告書を提出し、審査を経て補助金が交付されるという流れです。また、事業者は事業年度後の3年間、各年度終了後30日以内に過去 1 年間の対策の実施状況及びCO2排出量の実績等を事業報告書として提出する義務があります。
参考:『令和 7 年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金公募要領』

補助金上限は一律200万円、補助率は対象経費に対し3/4となっています。
参考: 環境省『令和7年度 脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)の公募開始について』
『令和7年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領』
【2】IT導入補助金2025(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

IT導入補助金は、中小企業が業務効率化やDX等の目的で、ITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する場合に支援を受けられる補助金です。注意点としては導入するITツールは事務局より採択を受けている「IT導入支援事業者及びITツール」であること。採択されていないITツールを導入しても補助金はでません。
交付申請を期限内に行い、交付決定後に対象となるITツールの支払いをし、それを用いた事業実績の報告を行い、補助金額の確認・承認が降りるという流れになります。
「IT導入補助金2025」には大きく5種類の申請枠があります。
- 通常枠
- インボイス枠
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携 IT導入枠
それぞれ具体的に解説します。
1.通常枠
自社の課題やニーズに合わせて導入したITツールが補助対象となります。例えば会計ソフト、受発注管理、販売在庫管理、顧客管理(CRM)、予約管理、勤怠管理、人事労務、給与ソフト等のソフトウェアやクラウドサービス。すでに導入しているソフトウェアの機能を拡張するプラグイン。複数ソフト・システム間でデータを連携・同期させる目的のデータ連携ツール。暗号化、ウイルス対策、アクセス制限、不正検知、情報漏えい防止策などを目的とするセキュリティ対策ソフト・サービス。さらに、導入コンサルティング、設定・構築、マニュアル作成、研修・教育、保守・運用サポートなどの導入支援や役務も対象となります。
ソフトウェア・サービスはどの業務プロセスを担当するかで下記に分類されます。
P1:顧客対応・販売支援
P2:決済・債権債務・資金回収管理
P3:供給・在庫・物流
P4:会計・財務・経営
P5:総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務
P6:その他業種固有のプロセス
P7:汎用・自動化・分析ツール
この7種類のうちの1プロセス以上担当するITツールを導入した場合、5万円以上150万円未満の補助金が受けられます。また、4プロセス以上担当するITツールを導入した場合、150万円以上450万円以下の補助金となります。ただしP7のみのITツールは対象外となります。
2.インボイス枠
インボイス枠はインボイス制度へ対応する「会計」「受発注」「決済」 の機能を持つソフトウェアが対象となります。また、それを使うためのプリンタやスキャナなどのハードウェアも対象となる場合があります。具体的には会計ソフト(インボイス対応)、受発注システム、決済システムなどのソフトウェア本体。主ソフトに付随する拡張ツール。暗号化ソフト、ウイルス対策、不正アクセス防止、アクセス制御ツール等のセキュリティ対策ツール。コンサルティング(導入支援・活用支援)、設定・導入作業、マニュアル作成、研修、保守・サポートなどの導入役務/サービス。ソフトウェアと合わせて導入するPC、タブレット、プリンタなどのハードウェアが挙げられます。
ソフトウェアに関しては1機能のみだと50万円以下、2機能以上だと350万円以下の補助金となります。ハードウェアはPC・タブレット等が上限10万円程度、POSレジや券売機が20万円程度の補助金です。
3.インボイス枠(電子取引類型)
こちらはオンライン決済などの電子取引上でインボイス制度に対応するITツールを導入する場合に使える補助金です。クラウド型の受発注ソフトウェア、サブスクリプション型のクラウドツール利用料、取引先へのアカウント無償提供機能などが対象となります。補助額上限は350万円となっています。
4.セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠はサイバー攻撃・情報漏洩リスクを低減するためのセキュリティ対策に対する補助金です。PC/端末向けセキュリティサービス、ネットワークセキュリティ機器やサービス、監視・ログ管理・アクセス監査、脆弱性診断、インシデント対応サービス、セキュリティ対策構築支援サービスなどが対象となります。補助額は5万円~150万円となっており、利用料の最大2年分までが対象です。
5.複数社連携 IT導入枠
複数社連携 IT導入枠は複数の事業者が連携してITツールを導入し、地域やグループ全体でDXを推進する際に使える補助金です。こちらは条件が複雑ですが、例えば基盤導入経費と消費動向等分析経費を合算すると最大3000万円まで補助金が出る大型のものとなります。
【3】ものづくり補助金

ものづくり補助金とは正式名称をものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金といい、中小企業や小規模事業者等が直面する制度変更に対応するために設備投資等を支援する補助金です。ものづくりと謳っていても製造業だけを対象にしたものではないことは頭に入れておきましょう。
補助対象事業は何種類かありますが、DXが関連するのは「革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援」する事業です。補助の対象になる経費には、機械装置・システム構築費は必須とし、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費等が該当します。
IT補助金との違いとしては、こちらはあくまで「革新的な新製品・新サービス開発の取り組み」が対象となるということ。既存の業務やサービスに関するDXはIT補助金を使うように棲み分けがされています。
申請には4つの要件を満たす事業計画書を提出する必要があります。
①付加価値額の増加要件(補助事業終了後3~5年の事業計画期間での付加価値額の年平均成長率を3.0%以上増加)
②賃金の増加要件(補助事業終了後3~5年の事業計画期間において非常勤を含む従業員及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加)
③事業所内最低賃金水準要件(補助事業終了後3~5年の事業計画期間において事業所内最低賃金を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より30円高くすること)
④従業員の仕事・子育て両立要件※従業員数21名以上の場合のみ(次世代法に基づき一般事業主行動計画を策定し、仕事と家庭の両立の取組を支援する情報サイト「両立支援のひろば」に策定した一般事業主行動計画を公表すること)
特に②③は事業実施後目標未達の場合は補助金の返還義務が生じる為、慎重に計画を立てる必要があります。
補助額割合は基本的には経費の1/2です。補助金上限は従業員数5人以下750万円、6~20人 1,000万円、21~50人 1,500万円、51人以上 2,500万円となっており、大型の補助金となっています。
参考:ものづくり補助事業『ものづくり補助金総合サイト』公募要項
【4】成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

成長型中小企業等研究開発支援事業は、基盤技術およびサービスの高度化に向けた研究開発および事業化をする場合に使える補助金です。デザイン開発、情報処理、精密加工、製造環境、接合・実装、立体造形、表面処理、機械制御、複合・新機能材料、材料製造プロセス、バイオ、測定計測の以上12分野のいずれかの技術、先端技術を活用した高度なサービス開発、高付加価値企業への成長・変革を図る取り組みが対象になります。中小企業等が大学、公設試等の研究機関等と連携して行う取り組みであることが前提です。
補助上限は2種類あります。補助金としての通常枠は3年間合計9,750万円以下、出資獲得枠は3年間合計3億円以下です。
参考:中小企業庁『令和7年度予算「成長型中小企業等研究開発支援事業」の公募を開始します』
【5】交通DX・GXによる経営改善支援事業補助金等

交通DX・GXによる経営改善支援事業補助金等は、地域の乗合バス、貸切バス、タクシー、ライドシェアなどを営む事業者が、DX・GX等による経営改善に資する取り組みに対して支援する補助金です。具体的には運行管理支援システム、乗務日報自動作成システム、運行計画(ダイヤ・運行系統図等)作成支援システム、勤怠管理システム、売上集計・記録システム、車内空間を活用したデジタル広告、混雑状況提供システム、配車アプリ、キャッシュレス決済機能などをはじめとする31種類のメニューが対象です。
特に注意する点としては、対象が令和5年(2023年)3月31日時点で旅客自動車運送事業の許可を受けており、その後現在までの2年度に渡り営業利益又は経常利益が生じている事業者が対象になること。さらに、令和7年(2025年)度の給与総額を前年度比1.5%以上増額していることが条件となります。交付申請日において有効な運転者職場環境良好度認証を受けていることも必須です。
補助金額としては、31種類のメニュー各300万円を上限とし、導入費用の1/2もしくは1/3が補助率となっています。例えば運行管理システムは1/2が補助率、クレジット決済機器は1/3が補助率です。
参考:国土交通省『令和7年度交通DX・GXによる経営改善支援事業補助金等』
【6】介護テクノロジー導入支援事業

介護テクノロジー支援事業は厚生労働省による養護老人ホーム等の介護事業者向けの補助金事業です。介護ロボットの導入によるDX、介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービス、業務効率化に資するバックオフィスソフトの導入など、介護現場のICT化、見守り機器等の複数のテクノロジーをパッケージ導入した場合などに使えます。
申請は各都道府県の担当団体に行うフローになっており、各都道府県によって補助金の名称が微妙に違う場合があります。
補助額は移乗支援もしくは入浴支援を行う介護ロボットが上限100万円、その他の支援のロボットが上限30万円。指定のカタログの中からロボットを選定する必要があります。ICT機器の導入は職員数により上限額が異なりますが最大250万円です。パッケージ導入の場合は上限400~1,000万円となっています。
DX補助金の活用を検討しよう
以上DXに関連する補助金の紹介でした。DXを行うことで、企業の利益向上や新たな価値の創造につながるのはもちろん、CO2の削減や地球環境に貢献できる側面があります。さらに、今回紹介した補助金はかなり幅広い業界を網羅しており、自社が申請できる補助金を見つけることができる可能性が高いのではないでしょうか。是非DX関連の補助金をうまく活用して、自社の成長に役立ててください。
GREEN CROSS PARKのDX

東急不動産が手がける産業まちづくり事業「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、まち全体に先進的なDX基盤整備を行う構想のある新しい産業団地です。超高速通信や自動運転といった最先端技術を導入することで、参画するあらゆる産業のデジタル変革を後押しします。工業用地の導入を検討されている企業様や、GX・DXなど次世代の経営テーマに関心をお持ちのご担当者様は、GREEN CROSS PARKが実現する産業振興と地域共創にぜひご注目ください。