EMS(エネルギーマネジメントシステム)とは?重要な3つの要素、仕組みや種類、メリットを徹底解説

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EMS(エネルギーマネジメントシステム)は、企業がエネルギーを効率的に運用し、コスト削減や政府の環境政策に沿った経営を実行する上で重要な設備です。今回はEMSとはそもそも何かという基礎的な説明から始め、仕組みや種類、メリット等についても解説します。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)とは

EMS(エネルギーマネジメントシステム)とは

EMS(Energy Management Systemエネルギーマネジメントシステム)とは、 建物・工場・施設などで使われる 電力・ガス・熱・再生可能エネルギーなどのエネルギーの使用状況を「見える化」し、最適な制御・管理を行う仕組みやシステムのことです。 EMSを構成するセンサーや計測機器でエネルギー使用量を計測し、収集・統合したデータに基づいて運用や制御を最適化します。これにより、リアルタイムでのエネルギー消費動向を把握し、データに基づいた省エネ制御や運用改善を行うことが可能です。

EMSの活用により、過剰消費部分を把握し省エネ制御や運用改善に繋げたり 、空調・照明・生産設備などの自動制御・最適化が実現します。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の3つの要素

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の3つの要素

EMSには3つの重要な要素があります。見える化・制御・最適化です。

見える化はエネルギー使用量をリアルタイムで可視化する機能です。どの機器・設備がどれだけ使っているかを把握でき、設備ごとのエネルギー消費の内訳が明確になります。

制御は必要に応じて機器の動作・運転タイミングを制御します。空調や照明を状況に合わせて自動的に最適化した運転を行います。

最適化は過去データを分析し、無駄な消費を削減する機能です。 電力需要ピークの平準化やコストを最小化することで、データに基づく合理的なエネルギー運用を実現します。

この3つを備えていることで電力・ガス・熱・再エネを統合管理でき、効率的なエネルギー運用が可能となります。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)が必要とされる背景

EMS(エネルギーマネジメントシステム)が必要とされる背景

EMSが必要とされる背景には大きく2つの要素があります。

まずはエネルギー価格の上昇です。近年、原油・液化天然ガス・電力などのエネルギー価格は国際情勢や需給バランスの変動で高止まりする傾向が続いています。 電気料金や燃料費の上昇は企業・施設・家庭のコスト増につながるため、エネルギー消費を効率化してコストを抑える取組が必要になっています。 このような背景から、エネルギー使用を細かく「見える化」し、効率的に管理・制御する EMSの価値が高まっています。

もう一つは省エネルギーやカーボンニュートラル・GX政策推進の流れです。日本政府は2050年カーボンニュートラル目標 や GX(グリーントランスフォーメーション)政策を進めています。 GX政策は、温室効果ガス排出の大幅削減と同時に、エネルギー供給の安定・産業競争力の強化を目指す国家戦略です。こうした政策の実現には、エネルギー使用の効率化や需要管理が不可欠であり、EMSはその上で重要なインフラになります。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の基本的な仕組み

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の基本的な仕組み

EMSには基本となる機能や設備、さらに運用のフローがあります。これらを満たしたEMSを設置しましょう。ここからはEMSの構成要素とデータの流れを解説します。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の構成要素

EMSにはセンサー・スマートメーター、通信ネットワーク、管理・分析ソフトウェアという、大きく3つの構成要素があります。

センサー・スマートメーター

測定・データ取得の基盤にあたるのがセンサー・スマートメーターです。日本ではスマートメーターが全国で導入されており、消費電力量を30分ごとに計測・通信しています。これにより、需要家(家庭・ビル・工場等)はエネルギー使用量の詳細なデータ取得が可能です。スマートメーターの導入は、遠隔検針・データ取得・省エネ促進を目的として進められています。

参考:資源エネルギー庁『スマートメーターのオプトアウト制度に関するQ&A』

EMSでは、こうしたスマートメーターをはじめとし、温湿度センサー、設備ごとの電力センサー、ガス・熱量センサーなどから、リアルタイムや短周期でエネルギー消費データを収集します。これが「見える化」の最初のステップです。

スマートメーターは、単に電力使用量を計測するだけでなく、再生可能エネルギーやエネルギー供給システムとの双方向データ連携を可能にし、将来的な需要制御・最適化も実現します。

通信ネットワーク

スマートメーターなどから収集したデータは、通信ネットワークを通じて中央の管理プラットフォームやクラウドサーバーへ送信され、データの集約や各機器・サービスの統合連携を行います。そのため、有線・無線のネットワーク通信が必須です。

管理・分析ソフトウェア

管理・分析ソフトウェアは 「見える化・分析・判断・制御指令の発出」 を行います。 EMSの運用においては、センサー・メーターから集められた膨大なデータをリアルタイム集計し、ダッシュボードやレポートで可視化するソフトウェアが不可欠です。これにより、エネルギー使用の状況を一目で把握でき、過去データとの比較、ピーク時間帯の特定、CO₂排出量算定なども可能となります。また、クラウドベースで提供される管理・分析ソフトウェアであれば、複数拠点・複数設備のデータを一元管理しやすいです。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)における実際のデータの流れ

EMSのデータ活用はリアルタイム監視、AI・アルゴリズム制御、自動・遠隔制御の3ステップで実施されます。

1. リアルタイム監視

まずはデータを計測し見える化します。センサー・スマートメーターなどが取得したデータは、EMSの管理プラットフォームでリアルタイムに監視・可視化されます。設備ごとのエネルギー使用量や再エネの発電量が自動でグラフ化・数値化され、運用者が瞬時に状況を把握できます。

2. AI・アルゴリズム制御

収集したデータはログとして蓄積されるだけでなく、 AIやアルゴリズムを用いて分析・運用されます。例えばピーク時の電力消費予測、再エネ発電量に応じた負荷の最適配分、過去の使用傾向から最適運転パターンを割り出す等です。これにより、エネルギー使用における無駄な消費を発見したり、将来の需要予測に基づいた需給バランスの最適化が可能になります。

3. 自動・遠隔制御

分析結果を元に、EMSを通じて 空調・照明・生産設備・蓄電池などの制御装置に対して指令を送信します。ピークシフトや負荷制御などが自動的に実行され、遠隔からでも設定変更や運用制御が可能です。またシステムによってはAIが制御判断を部分的に自動化し、最適なエネルギー運用をリアルタイムで実現する機能もあります。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の種類と違い

EMS(エネルギーマネジメントシステム)の種類と違い

EMSには施設の種類や規模感によって大きく4種類あります。それぞれについて解説します。

BEMS(ビル向けEMS)

BEMS(Building Energy Management System)は、ビルや商業施設・オフィスなどの建物を対象にしたEMSです。主な対象はオフィスビル、商業施設、病院、学校など 。空調(冷暖房)、照明、換気・給排気、電力設備全般を管理します。

BEMSはエネルギー使用データの「見える化」や消費ピークの最適化・削減、設備間の統合管理・制御 、快適性とエネルギー効率の両立、ビル単体でのデータ収集・制御を行います。

省エネ法やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)政策※1 などと関連が深いです。

※1 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)政策:建物全体の省エネルギー性能を高めると同時に、再生可能エネルギーによって建物内で年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにする建築物のこと

参考:環境省 ZEB PORTAL『ZEBに関する用語集』

FEMS(工場向けEMS)

FEMS(Factory Energy Management System)は、 工場・生産ライン・製造拠点などを対象にしたEMSです。製造機械の稼働やエネルギー消費、圧縮空気や蒸気設備など複数のエネルギー源、工場全体の負荷バランスなどのデータ収集・制御を行います。

FEMSによって、生産活動とエネルギー使用の「見える化」やエネルギー消費を効率化と生産性の両立、投入エネルギーあたりの生産量向上、設備の最適な稼働計画の実行が可能になります。工場は多様なエネルギー源や設備が混在しており、エネルギー消費が全体のコスト構造に与える影響が大きいです。FEMSはそれらを統合管理する役割を担います。

HEMS(住宅向けEMS)

HEMS(Home Energy Management System)は、戸建て住宅のような一般住宅を対象にしたEMSです。 家電や照明、冷暖房、 太陽光発電システム、蓄電池、EVとの連携を行います。

HEMSによって家庭の電力使用量や機器の稼働を見える化することで、電気・ガス・水道などの消費データを一元管理し、節電やピークカット、再エネ利用促進に繋がります。

CEMS・地域EMS

CEMS(Community Energy Management System)は、 複数の住宅やビル、工場などをまとめて地域規模でのエネルギーを最適化するEMS です。スマートシティ、自治体エリア、産業団地 等の複数施設が混在する地域で用いられます。

これまで挙げたHEMS・BEMS・FEMSなどの複数種類のEMSを統合し、地域内の電力需給バランス最適化や再生可能エネルギーを含むエネルギー資源の最適配分、エネルギーの地産地消、供給側と需要側でのピアツーピア型管理※2を実現します。

※2 ピアツーピア型管理:参加者(ピア)同士が対等な立場で直接エネルギーのやり取りを行う分散型の管理・通信方式

EMSを導入するメリット

EMSを導入するメリット

EMSを導入すると、コスト削減や政府の施策に沿った脱炭素・環境対策になるなど、様々なメリットがあります。どのようなメリットがあるのか具体的に紹介します。

コスト削減

EMSによる設備・建物・工場などのエネルギー消費の「見える化」と運用の最適化は、効率的な機器制御や無駄な消費の抑制につながり、結果としてコストが削減できます。例えば、設備の稼働パターンやピーク時のエネルギー使用傾向を分析することで、不要な運転や過剰な消費を抑制できます。

また、EMSはピークカット・ピークシフトを行い、電力需要が高まる時間帯の負荷を下げたり、消費を別の時間帯へ分散することができます。ピークカット・ピークシフトにより契約電力の最大デマンド値※3 の抑制が可能となり、基本料金や電力料金の負担軽減につながります。

※3 最大デマンド値:事業所などで使用する電力において、30分ごとの平均使用電力(kW)のうち1ヶ月で最も高い値。過去1年間の最大デマンド値が「契約電力」の基準値となり、電気代に大きく影響する

脱炭素・環境対策

日本政府のエネルギー政策では、GX(グリーントランスフォーメーション)政策や2050年カーボンニュートラル目標の達成が重要と位置付けられています。企業による温室効果ガス削減に向けた省エネルギーの取り組みは政策的にも推奨されています。EMSはカーボンニュートラルに向けた省エネ活動・CO2削減に直結する設備です。EMSによるエネルギー消費データの「見える化」は、どの設備・時間帯にCO2排出が多いかを把握しやすくするため、CO2排出量管理の基盤となります。

参考:資源エネルギー庁『第2章 グリーントランスフォーメーション(GX)・2050 年カーボンニュートラルの実現に向けた日本の取組』

さらに、EMSは、消費需要のバランスをリアルタイムで把握しながら最適化運用できるため、再エネの地産地消や効率的利用を支える技術基盤ともなります。リアルタイムで発電と負荷を統合管理することで、たとえば太陽光発電の余剰電力を蓄電池で保管し、需要ピーク時に活用するなど、再生可能エネルギーを活かしながらエネルギー消費の最適化が可能です。

投資家呼び込み

EMSの導入はESG(環境・社会・ガバナンス)評価※4 に良い影響があります。EMS導入によってエネルギー使用の透明性が高まり、環境負荷低減の実績を数値化できることは、投資家を呼び込む武器となります。

※4 ESG(環境・社会・ガバナンス)評価:企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの側面から、その企業の持続可能性や責任ある経営を行っているかを評価する指標や仕組み

災害対策強化

また、EMSは単にコスト削減や省エネだけでなく、データと制御を通じて需要ピークシフトや電力需給の可視化・最適化が可能なため、災害時・停電時のエネルギー最適化にも寄与します。

EMS(エネルギーマネジメントシステム)を経営戦略として実行しよう

EMS(エネルギーマネジメントシステム)を経営戦略として実行しよう

EMSはコスト削減やエネルギーの効果的な運用を実現します。また、国の施策として促進されているカーボンニュートラルやGX、スマートシティと直結する設備投資であり、導入することで新規市場への先行参入、補助金等の活用も先々視野に入れやすくなるはずです。経営戦略としてEMS導入・運用を実行しましょう。

GREEN CROSS PARKについて

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東急不動産が推進する産業まちづくりプロジェクト「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、産業団地の集積効果を最大限に高めることを目的とした次世代型産業エリアです。初期投資の抑制、物流効率の向上、BCP強化、人材確保といった従来型産業団地の強みを継承しつつ、エリア全体で先進的なDX基盤とGX(脱炭素)対応の環境整備を一体的に構想しています。高速通信インフラや自動運転技術を先行導入することで、企業間連携の高度化や業務プロセスの効率化を実現。さらに、再生可能エネルギーの活用やカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進し、持続可能な産業活動を支援します。DX・GX時代に求められる競争力の高い事業展開を可能にする環境を、産業が集積する「まち」全体で提供する――それが、GREEN CROSS PARK が目指す産業まちづくりの姿です。

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