工場立地法は工場の周辺環境を保全し、環境負荷や地域住民の生活環境への影響を抑えるために定められた法律です。今回は工場立地法の対象要件、緑地率、手続きについて解説します。自社工場が対象になるか、対象になる場合は工場立地法の定めを満たしているかチェックし、漏れなく届出を行いましょう。
工場立地法の概要と目的

工場立地法とは、「工場の新設・増設・変更などを行う際、一定の規制を設けることで、環境の保全を図り適正な工場立地を実現すること」を目的とする法律です。具体的には、工場敷地の利用に関し、生産施設・緑地・環境施設に関する面積割合を規定し、これに基づく届出や勧告・命令等の仕組みを設けています。
工場立地法の目的
工場立地法の第一条によると
“この法律は、工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行なわれるようにするため、工場立地に関する調査を実施し、及び工場立地に関する準則等を公表し、並びにこれらに基づき勧告、命令等を行ない、もつて国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上に寄与することを目的とする。”
と明記されています。
引用:e-GOV『工場立地法』
環境の保全、国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上といったことに触れられているため、
・工場が立地される際の環境負荷を最小限にする仕組みづくり
・工場と周辺住民の生活環境を両立させるルール作り
・持続可能な地域発展を促す制度設計
といった環境や生活、地域と工場を両立させるという狙いがわかります。
また、工場立地法では、準則において「緑地面積率・環境施設面積率の基準」を定めています。これらの規制により周辺環境への影響を改善し、景観の維持や生物多様性、住民生活との調和を図る狙いがあります。
工場立地法の対象となる要件

工場立地法の規制対象となるのは「特定工場」と呼ばれる工場で、規模要件と業種要件の両方を満たす場合に該当します。この特定工場に該当すると、新築や増改築・改修の際に事前届出義務や敷地利用基準(緑地率等)が適用されるようになります。
規模要件
敷地面積9,000m2以上もしくは建築面積3,000m2以上のいずれかを満たすと、特定工場となり工場立地法の対象となります。
敷地面積とは、工場本体のほか、駐車場や資材置場、附属施設を含む全体の土地面積も指します。また建築面積は工場の延べ床面積ではなく、建物が地面に接している面積です。
建物を増築した際に、建築面積3,000m2を超えてしまったことに気づかず申請漏れとなるケースがあるので注意しましょう。
対象業種
以下の業種が工場立地法の対象となります。
・製造業:物品の製造・加工等の事業(加工修理業含む)
・電気供給業:発電所等の電気供給(ただし、水力、地熱、太陽光は除く)
・ガス供給業:都市ガス等の供給事業
・熱供給業:熱(蒸気・温水など)の供給事業
上記のように、ものづくりやエネルギー供給に携わる工場は基本的に対象となります。一方、倉庫や物流センターは工場立地法の対象外です。発電所に関しても、水力や地熱、太陽光発電施設は除外されます。
対象外となるケース
敷地面積9,000m2以上、建築面積合計3,000m2以上のいずれにも満たない工場は、工場立地法の対象外です。
また、前述したように倉庫や物流センターも対象外ですが、該当の倉庫を含む複合施設で製造行為や加工行為がある場合は別途判断が必要となります。
さらに、特定工場に指定されている既存工場に関しては基本的に改装増築などの際に届出が義務付けられていますが、「軽微な変更」に関しては届出が不要となることがあります。一例を挙げると、「変更が修繕目的のもので、修繕に伴い増加する面積の合計が三十平方メートル未満のケース」などが該当します。ただし、正確を期すなら自治体窓口等に判断を仰ぐ必要があります。
「緑地率」とは?

工場立地法の準則として、工場敷地内の生産施設、緑地、環境施設の面積割合を国が定めています。中でも緑地率は、敷地面積に占める緑地の割合で、工場の新設・増設等の際にはこの基準を満たす必要があります。緑地率について詳しく解説します。
緑地面積の基準(原則)
敷地面積の20%以上を緑地として確保する必要があります。これは、国が定める「工場立地に関する準則(国準則)」における原則的な基準です。ただし、地方自治体が条例により緑地率等を緩和・変更している場合もあります。
参考:『工場立地に関する準則』(平成10年告示、最終改正:平成29年)
例えば敷地面積100,000m2であれば、少なくとも20,000m2以上は緑地が必要になるという計算です。ただし、ここでいう緑地とは単なる草むらではなく、適切な整備を行い周辺生活環境の保持に寄与する緑化施策となっていることが求められます。
緑地として認められるもの
緑地として認められる代表例は以下の通りです。
・樹木が生育する区画された土地
・芝生などの地被植物が覆う土地
・建築物屋上等の緑化施設(屋上緑化)
・壁面緑化などの立体的な緑化
ただし農地やビニールハウスの栽培面積などは、工場周辺の生活環境の保持に寄与しない農作物用地と捉えられるため、緑地面積として算入されません。
環境施設面積の基準
敷地面積の25%以上を環境施設として確保しなければなりません。ただし、環境施設には緑地を含むことができます。緑地だけで敷地面積の25%以上を満たしていても認められます。
緑地以外の環境施設とは、以下のような施設が該当します。
・噴水、水流、池など
・屋外運動場、広場など
・雨水浸透施設や、一定の要件を満たす太陽光発電設備など
いずれも周辺地域の生活環境の保持に寄与するものとして管理されるものに限ります。
参考:『工場立地に関する準則』(平成10年告示、最終改正:平成29年)
地方自治体による緩和制度
国の基準は緑地率20%以上が基本ですが、地方自治体ごとに条例で緩和基準を定めているケースが多数あります。
例えば旭川市は工業・工業専用地域では緑地率5%、準工業地域では10%以上に緩和しています。奈良県でも指定の工業団地内にある工業専用地域に関しては緑地率10%以上に緩和しています。自社の工場があるエリアに緩和基準があるか確認しましょう。
参考:旭川市『工場立地法の手続(緑地面積率等を緩和する条例を制定しました)』
工場新設・移転時の手続きの流れ

工場新設、移転時には自社の工場が工場立地法上の特定工場に該当するか確認し、該当すれば所定の手続きを取る必要があります。工場新設・移転時の手続きの流れを解説します。
事前届出制度とは?
工場立地法では、特定工場の新設や増設、用途変更などを行う場合、工事着工の前に「事前届出」を行うことが義務づけられています。
原則として、特定工場の新設及び変更については工事着工の90日前までに届出を行わなければなりません。届出内容が「工場立地に関する準則」に適合しており、内容に不備がなければ、90日のところを最大30日までに短縮申請できる制度も認められています。ただし、これは自己判断できるわけでなく必ず自治体の窓口に確認する必要があります。
届出に必要な書類
自治体によって多少異なるケースもありますが、基本的には以下の書類が必要です。
・特定工場新設(変更)届出書:届出に必要な本体書類です。
・事業概要説明書:工場の事業内容や用途、稼働計画を記載します。
・配置図、面積計算書:工場敷地内の生産施設や緑地、環境施設の配置と面積を記載します。
・準則計算表、緑地・環境施設面積計算表:工場立地法準則に基づく面積比率計算資料を添付します。
・工事日程表:着工・完了予定日などの日程表
・その他添付資料:用地利用状況説明書、兼業調書など、届出の信頼性を高めるものや自治体の求めに応じた資料を用意します。
変更届出が必要なケース
以下のようなケースで変更届出が必須です。
・敷地面積の変更
・建築面積や生産施設面積の増加(増築や設備拡張が該当)
・既存工場の建物の増設や追加建設
・用途変更(用途変更によって特定工場としての要件に該当する場合)
最後の用途変更は、例えばこれまで倉庫として使っていた施設を、工場に変更した場合などが該当します。
届出先はどこ?
届出先は自治体によって異なりますが、都道府県または市区町村の窓口です。
工場立地法は「早期確認」が最大のポイント

工場立地法において、自社の敷地面積や建築面積、業種を確認すれば、特定工場に該当するか判断できます。また、緑地率を満たしていれば、工場立地法に適合した工場となります。気をつけなければいけないのは、新築や増改築の際に90日前届出の義務をしっかり念頭に入れて計画することです。「要件は満たしていたが届出が間に合わず大幅なスケジュール変更が必要となり損失が出た」ということを防ぐためにも、自治体窓口に細かく確認しながら届出を行いましょう。
GREEN CROSS PARKについて

東急不動産が推進する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、GX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)・まちづくりを融合させ、日本の産業競争力と地域活性化を同時に実現する「産業まちづくりプロジェクト」です。
本事業では、産業団地の開発を起点に、持続可能な都市機能と強靭な産業基盤の構築を目指しています。地域ごとの特性や企業ニーズを踏まえた拠点整備を全国で展開し、再生可能エネルギーを活用した次世代インフラの導入にも積極的に取り組んでいます。 将来的には、100%再生可能エネルギーで稼働するデータセンターの実現も視野に入れ、GX時代に求められる高い環境性能と信頼性を兼ね備えた産業拠点の創出を構想しています。