全国の企業や自治体から次世代産業団地として注目を受ける佐賀県鳥栖市の「サザン鳥栖クロスパーク」。その背景にあるのは、単なる工業団地開発ではなく、県と市が強く連携し、官民連携の次世代産業まちづくり「GREEN CROSS PARK(GXP)」の性質にある。工業団地政策の歴史を持つ鳥栖市が、なぜ今、新たな産業拠点に着手したのか。脱炭素や成長産業への対応も含めて、その狙いを聞いた。
| 北村 志帆(きたむら・しほ) 佐賀県 産業労働部 企業立地推進監 |
| 古沢 修(ふるさわ・おさむ) 鳥栖市 経済部 商工観光課 次長兼課長 |
工業団地の枠を超えた新たな産業拠点

——まず、「サザン鳥栖クロスパーク」とは、どのようなプロジェクトなのでしょうか。
古沢:サザン鳥栖クロスパークは、佐賀県と鳥栖市の連携事業として進めている約34haの新たな産業拠点開発プロジェクトです。2023(令和5)年に開発事業者を公募し、2024年に東急不動産株式会社を代表事業者として、日本国土開発株式会社、丸紅株式会社(現在は丸紅都市開発株式会社)で構成されるコンソーシアムと基本協定を締結しました。その後、2025年には九州旅客鉄道株式会社も参画し、2030年のまち開きを目処に新しい産業団地の開発を進めています。
製造業を中心とした企業誘致を図るだけでなく、再生可能エネルギー100%を活用し、自動運転や工場自動化といった先端産業ニーズも見据えた、新しい時代の産業団地として構想されている点が大きな特徴です。加えて、地域との関わりも意識しながら、これまでの工業団地の枠を超えた拠点づくりを目指しています。
県と市が進める脱炭素計画とも合致

——やはり脱炭素は、提案の大きな特徴だったのでしょうか。
北村:佐賀県としては、2030年度に県内の温室効果ガス排出量を2013年度比で47%削減し、2050年カーボンニュートラルを見据えて取り組みを進めています。そうした中で、再生可能エネルギーの活用やGXを意識した産業拠点の提案が出てきたことは、自治体の目標とも非常に親和性が高いと感じています。
——鳥栖市としても、その一致は大きいですか。
古沢:東急不動産の提案には、再エネ100%やGX・DXを軸にした構想が含まれていて、市が進めたい方向と非常に合っていると感じました。市としても、「ゼロカーボンシティ宣言」※1 を行っており、脱炭素の方向性は県と市で共有されています。自治体が目指す方向と、民間事業者の構想が大きく一致していることは、事業を前に進める大事な推進力になっていると思います。
※1 ゼロカーボンシティ宣言:2050年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにすることを目指し、地方自治体の首長が表明する行動指針。宣言自治体は地球温暖化対策の一環として、自治体、市民、事業者が一体となって脱炭素社会を実現する計画を進めている。
スピード感を重視した官民連携体制

——従来の工業団地造成や企業誘致と比べて、今回のプロジェクトはどこが大きく違うのでしょうか。
古沢:行政が進める工業団地造成は、議会での審議や各種調整も含めると、どうしても実現までに10年以上はかかってきたのが実情です。一方、サザン鳥栖クロスパークは、スピード感を重視しようということで、経済産業省の地域未来投資促進法※2 を活用しながら、官民連携で進めている点が大きく異なります。自治体単独で進めれば、シンプルな工業用地となりがちですが、そこに、民間事業者のノウハウや発信力、ネットワークを活かしながら具体化を図っていることが、これまでとの大きな違いだと感じています。
※2 地域未来投資促進法:地域の特性(技術、人材、観光資源など)を活かして高い付加価値を生み出し、地域経済への波及効果が見込まれる事業(地域経済牽引事業)を国と自治体が連携して支援する法律。設備投資に対する税制優遇、金融支援、規制の特例措置などが用意されている。
——今回のプロジェクトでは、県と市の連携も強く印象に残ります。どのような役割分担なのでしょうか。
北村:鳥栖市は現地自治体として、地元調整などを主体的に担っています。一方、県は広域的な産業政策の観点から、制度活用や企業誘致に関する協力、県全体の産業戦略との接続を担っています。それぞれの役割を果たしながら同じ方向を向いて、非常に強い連携体制ができていると思います。
歴史ある工業団地の新たな挑戦

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