自動運転トラックが社会に広がるとき、変わるのは車両だけではない。高速道路での無人運転と一般道での有人運転をどこで切り替え、物流施設ではどのように受け入れるのか。株式会社T2と東急不動産は、無人/有人運転の切替拠点「トランスゲート」※1 や施設設計の検討を通じて、自動運転を前提とした物流拠点づくりを進めている。次世代物流拠点はどのように変わるのか。その具体像と全国展開への可能性を、両社の現場担当者に聞いた。
※1 トランスゲート:T2社が、自動運転トラックの高速道路での無人運転と一般道での有人運転を切り替えるために設ける拠点。ドライバーがトラックに乗り降りする場所として、高速道路インターチェンジ近くへの設置を進めている。
| 河野 恵悟 株式会社T2 事業開発本部 ソリューション企画部 アライアンスチーム プロジェクトマネージャー |
| 吉川 靖一 株式会社T2 事業開発本部 ソリューション企画部 拠点開発チーム プロジェクトマネージャー |
| 中島 大誠 東急不動産株式会社 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部 事業開発部 新規開発グループ |
| 株式会社T2とは 2022年設立の物流スタートアップ。「自動運転技術を活用し、日本の物流を共に支える」をビジョンに掲げ、自動運転トラックの開発や幹線輸送の事業化を進めている。2025年からは関東―関西間でレベル2※1 自動運転トラックによる商用運行を開始し、2027年度以降のレベル4※2 自動運転トラックによる幹線輸送の開始を目指している。 |
※2 レベル2:ドライバーが運転主体となり、システムが一定の条件下で加速・減速やハンドル操作などを支援する自動運転レベル。
※3 レベル4:特定の走行環境条件を満たす限定された領域で、自動運転システムがすべての運転操作を担う自動運転レベル。
安全性と汎用性を両立する物流施設へ

——自動運転トラックが本格的に社会実装されると、物流施設そのものにも変化が求められるのでしょうか。
吉川:そうですね。自動運転トラックの場合、通常の有人運転よりも、安全性をより意識した施設設計が必要になると考えています。
当社の自動運転トラックでは、車体に取り付けたカメラをはじめとする各種センサーによって周辺の状況を認識し、判断しながら走行します。そのため、センサーとの干渉を考慮したり、施設内を走るほかの車両や人の動線との位置関係に配慮したりする必要があります。
人が運転していれば、「このくらいの間隔なら通れる」とその場で判断できる場合もありますが、自動運転ではそうした判断も含めてシステムで安全に対応できなければなりません。今後は、現在開発を進めている「単車」と呼ばれる10tトラックだけでなく、トラクターやトレーラーなどへの展開も視野に入れています。そうした車両サイズや施設内の動線も踏まえ、従来の物流施設よりも少し余裕を持たせるなど、安全マージンを意識した計画が必要になってくると思います。
——自動運転専用の、新しいタイプの物流施設が必要になるのでしょうか。
中島:そこは非常に重要なところだと思っています。
自動運転に対応するために、これまでの物流施設とはまったく違う特殊な建物をつくらなければならないとなると、全国にはなかなか普及していきません。
ですから、既存の物流施設でもなるべく受け入れられるように、技術側にも進化していただきつつ、不動産側も、自動運転トラックを受け入れやすい施設にするために何ができるかを考える。その両方が必要だと思っています。
例えば将来的には、施設側にセンサーを設けて自動運転トラックに補助的な情報を送るような仕組みも考えられるかもしれません。まだこれから議論していく段階ですが、T2さんから必要な条件を伺いながら、施設側でできることを一緒に考えていきたいと思っています。
自動運転トラックが使いやすい施設をつくることができれば、それ自体が物流施設としての競争力にもつながると考えています。
「トランスゲート」と倉庫を一体で考える

——T2社は、無人運転と有人運転を切り替えるトランスゲートの設置と運用を進めていますが、東急不動産の物流施設との関係はどのように考えているのでしょうか。
吉川:現時点では、レベル4自動運転を早期に実現するためにも、トランスゲートは高速道路のインターチェンジに直結、あるいはできるだけ近接した場所に設けることが重要だと考えています。
高速道路上では無人で走行し、一般道では有人運転に切り替える。そうすると、どこから無人運転を開始し、どこで停止するのか、施設内ではどのようなルートを通るのか、といった一連の動きを明確にしていく必要があります。
許認可を取得する際にも、その動線全体について安全性を検証し、妥当性を示していかなければなりません。技術的な安全性だけでなく、実際に運行する地域から信頼を得ていくことも重要だと思っています。
中島:東急不動産として可能性を感じているのは、そのトランスゲートの機能を物流施設の敷地内に組み込むことです。
現在T2さんが関東、関西に設けているトランスゲートは、ドライバーが乗り降りでき、トラックを切り替えられるスペースを中心に構成しています。一方で、我々の物流施設には、荷物を保管、荷役する機能があります。
例えば、物流施設に入居している企業がT2さんの自動運転トラックを用いた幹線輸送サービスを使う場合、別の場所に荷物を運んでから自動運転トラックに積み替える必要がなく、その施設で積み込んで、そのまま出発できる。
これは荷主企業にとって大きなメリットになる可能性があります。
我々としても、単にトランスゲート用の土地だけを用意するのであれば単純な「土地貸し」になるので、ビジネスとして事業を成立させるのはハードルが高いと考えています。
しかし、その場所に倉庫があり、そこを利用する企業にT2さんの輸送サービスも提供できるのであれば、我々にとっては物流施設のリーシング(テナント誘致)や物件価値の向上につながり、T2さんにとっても顧客との接点が生まれる。
倉庫とトランスゲートを一体で考えることで、双方にとって事業上の相乗効果が生まれるのではないかと思っています。
荷主にとって最大の価値は「輸送を止めないこと」

——自動運転トラックを利用できる物流拠点が整ったとき、荷主企業や物流事業者にとって、最も大きな価値は何でしょうか。
河野:何より大きいのは、輸送能力を安定的に供給できることだと思っています。
国の試算では、対策を講じなければ2030年度には輸送能力が約34%不足する可能性があるとされていました(※)。実際に当社のレベル2自動運転トラックによる商用運行に参画いただいているユーザー企業の皆さんとお話ししていても、ドライバー不足によって、これまで通り輸送能力を確保できるのかという危機感は非常に強いと感じています。
(※)その後、官民の取り組みにより当初想定された約34%の輸送力不足のうち約14%は概ね克服できたとされる一方、今後も輸送力不足への対応が必要とされている。
参考:国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」
参考:国土交通省「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」
そうした中で、自動運転トラックを活用することによって、輸送能力を下支えし、ドライバー不足が深刻化しても物流を継続できるようにする。そこが、自動運転トラックを用いた物流の一番大きな価値だと考えています。
自動運転というと、効率化やコスト削減に目が向きやすいと思いますが、まず重要なのは「必要な荷物を運び続けられる」ということです。物流が止まれば、製造業も小売業も事業を続けられません。輸送能力を安定させること自体が、企業活動を支える大きな価値になります。
——さらに将来、各地の物流施設と自動運転ネットワークがつながっていくと、提供できるサービスも変わっていきそうですね。
中島:これはまだ理想に近い話ですが、我々の拠点開発が進んで、関東、関西、中部、九州といった各地域に、T2さんのトランスゲートと組み合わされた物流施設が整っていったときには、さらに新しい価値をつくれるのではないかと考えています。
例えば、関東と九州の両方に荷物を持っている企業が、それぞれの物流施設をセットで利用し、拠点間の輸送もT2さんの自動運転トラックでつなぐ。そうなれば、複数の物流拠点や輸送を一元的に管理するようなサービスも考えられます。
物流施設を提供するだけではなく、拠点と輸送を組み合わせて、自動運転トラックによる幹線輸送サービスまで含めた一つのパッケージとして提供できるようになれば理想ですね。
自動運転とGXが生む新たな物流価値

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