自動運転トラックの普及は、「物の運び方」だけでなく、工場や物流拠点の「場所の価値」も変えていく可能性がある。これまで高速道路へのアクセスが重視されてきた産業拠点は、これからどう変わっていくのか。2026年7月、鳥栖市、北九州市と自動運転トラックの社会実装に向けた全国初の官民連携協定を締結した今、製造AX※1やGX(Green Transformation)まで含む次世代産業拠点が企業の立地判断にどう影響を与えるのか、株式会社T2と東急不動産でプロジェクトを推進する立場のお二人に聞いた。
※1 製造AX(AI Transformation):AIやデータを活用して製造現場や生産プロセスを高度化し、省人化・自動化や生産性向上、新たな価値創出につなげる取り組み。本記事では、生産から物流までの一連の工程をデータで連携させる考え方も含む。
| 岩井 博史 株式会社T2 事業開発本部 ソリューション企画部 部長 |
| 串田 亮太 東急不動産株式会社 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部 事業開発部 産業まちづくりグループ 兼 基幹産業拠点推進室 室長(協議会担当) |
| 株式会社T2とは 2022年設立の物流スタートアップ。「自動運転技術を活用し、日本の物流を共に支える」をビジョンに掲げ、自動運転トラックの開発や幹線輸送の事業化を進めている。2025年からは関東―関西間でレベル2※2 自動運転トラックによる商用運行を開始し、2027年度以降のレベル4※3 自動運転トラックによる幹線輸送の開始を目指している。 |
※2 レベル2:ドライバーが運転主体となり、システムが一定の条件下で加速・減速やハンドル操作などを支援する自動運転レベル。
※3 レベル4:特定の走行環境条件を満たす限定された領域で、自動運転システムがすべての運転操作を担う自動運転レベル。
自動運転トラックを用いた物流ネットワークが、立地の常識を変える

——T2社では、レベル4運行に向けて無人と有人の切替拠点「トランスゲート」※4 の整備も進めています。今回の鳥栖市、北九州市との取り組みによって、こうした自動運転物流のネットワークがさらに広がっていくことが期待されますね。
※4 トランスゲート:T2社が、自動運転トラックの高速道路での無人運転と一般道での有人運転を切り替えるために設ける拠点。ドライバーがトラックに乗り降りする場所として、高速道路インターチェンジ近くへの設置を進めている。
岩井:レベル4の自動運転トラックによる幹線輸送を広げていくためには、高速道路の無人運転と一般道の有人運転を切り替えるために、ドライバーが自動運転トラックに乗り降りするための「切替拠点」が各地に必要になります。当社はこの拠点を「トランスゲート」と名付け、神奈川県・兵庫県の計3か所にすでに設けています。
今回、東急不動産さんと取り組んでいる拠点では、単に無人と有人の切り替えだけではなく、その先の物流工程ともつなげていくことを考えています。
こうした拠点が各地に整備され、それぞれがつながっていけば、自動運転トラックを用いた物流を一つのネットワークとして利用できる地域が広がっていくと思います。
——そうなると、企業が工場や物流施設を選ぶ基準にも変化が生まれるのでしょうか。
串田:これまでとは違う基準で物流施設を選ぶ企業が増えてくるのではないかと考えています。
従来は、高速道路のインターチェンジに近く、道路や電力、用水といったインフラが整っていることが物流施設や工場にとって重要な立地条件でした。
けれど自動運転トラックが当たり前に稼働するようになれば、「どの自動運転トラックによる物流ネットワークにつながっているのか」ということが重要になってきます。
特に荷主企業や物流会社は、ドライバー不足をより切迫した問題として捉えています。原材料や製品を将来にわたって安定して運べるかどうかは、企業活動そのものに関わります。
そう考えると、自動運転トラックを用いた物流への接続性が、企業が拠点を選ぶ新しい判断基準になっていく可能性があります。
従来の工業団地から、産業拠点全体の設計へ

——その点で、「(仮称)サザン鳥栖クロスパーク」のような大規模な産業拠点には、どのような強みがありますか。
→(仮称)サザン鳥栖クロスパークについて
串田:極端に言えば、倉庫を一棟建てるだけであれば、既存の工業団地で古い工場が取り壊された跡地に新しい物流施設を建てることもできます。
一方で、我々が取り組んでいるような大型の面開発では、最初から自動運転トラックへの接続性まで含めた産業拠点全体の設計を目指しています。
自動運転トラックがどこから入って、工場や物流施設とどうつながるのか。どのような動線や施設が必要なのか。さらにその先の荷役や物流工程まで含めて考えることができる。
既存の施設に後から機能を付け加えるのではなく、自動運転が当たり前になる未来を前提として、最初から産業拠点をつくれることには大きな価値があると思っています。
岩井:物流は、トラックを走らせるだけで完結するものではありません。
ドライバーの仕事には、運転以外にも荷役や荷待ちがあります。物を積んだり降ろしたりする作業も非常に負担が大きい。
ですから、自動運転トラックだけではなく、その先の荷役や仕分け、ラストワンマイル※5などをどう自動化し、物流拠点と有機的につないでいくかも重要になってきます。
※5 ラストワンマイル:物流拠点から最終的な配送先までの、物流の最終区間を指す言葉。
東急不動産さんのように産業拠点全体を開発する会社と一緒に取り組むことで、そうした物流の一連の流れまで含めて考えられると思っています。
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