GX推進機構とは?役割・支援制度・企業の活用メリットを徹底解説

GX推進機構とは?役割・支援制度・企業の活用メリットを徹底解説

2024年に発足した「GX推進機構」は、民間と政府の架け橋となり、日本のGX政策、GX産業を加速させることが期待されています。GX推進機構は具体的にどのような役割を担うのか、民間企業としてはGX推進機構からどのような支援を受けられるのか解説します。

GX推進機構とは

GX推進機構とは

GX推進機構とはどのような組織なのでしょうか。まずはGX自体の解説を含めて、GX推進機構の定義について解説します。

GX(グリーントランスフォーメーション)の基本概念

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、産業革命以降に構築された「化石燃料中心の経済・社会・産業構造」から、クリーンエネルギー中心の構造へと社会経済システムを変革する取り組みです。

・安定したエネルギー供給

・経済成長の維持・拡大

・温室効果ガス排出削減

日本政府としては上記3つの要素を同時に実現することで、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)達成につなげることを目指しています。

具体的なアクションとしては、再生可能エネルギーの主力電源化、排出量取引制度※1 の導入、化石燃料賦課金制度※2 の活用などが進められています。

※1 排出量取引制度:CO2の排出に上限を設け、余ったり足りない分を企業同士で売買する仕組み

※2 化石燃料賦課金制度:石油・石炭などの化石燃料の使用量に応じて、追加料金(賦課金)を課す制度。

参考:経済産業省『GX(グリーントランスフォーメーション)』

GX推進機構の定義

GX推進機構(正式名称:脱炭素成長型経済構造移行推進機構)は脱炭素投資を後押しする政府系の投資支援機関です。

経済産業省が設立を認可した機構で、「脱炭素成長型の経済構造へ円滑に移行する」ための実行組織としての役割を持っています。筒井義信理事長によると「債務保証や出資といった金融支援業務から開始し、その後カーボンプライシング※3 の実務も担う」と言及されています。GX推進法に基づく認可法人(官民連携組織)として、2024年7月に業務を開始しました。GX推進機構の活動を通じて、150兆円超のGX投資実現を後押しすることが期待されています。

参考:GX推進機構『機構の概要』

GX推進機構は政府と民間の架け橋となり、以下のような実務を担います。

・金融支援(債務保証・出資)

・カーボンプライシング制度の運営

・化石燃料賦課金の徴収

・官民連携のGXプロジェクト創出、支援

※3 カーボンプライシング:CO2排出に価格を設定し、企業や社会の行動を脱炭素側に変える政策

参考:経済産業省『GX推進機構の設立を認可し、理事長を内定しました』

GX推進機構が設立された背景

GX推進機構が設立された背景

日本政府は「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)」の達成を最重要政策に掲げています。2023年にはGX推進法が成立し、産業のGXを進めるための法的な基盤が整いました。

一方、実際にカーボンニュートラルを実現するにあたっては、エネルギー供給インフラ、製造プロセスの転換、脱炭素技術の普及など、極めて大規模な資金投下が必要になります。具体的には、再生可能エネルギー設備の導入、水素やアンモニア等の次世代エネルギー供給、製造業の脱炭素設備投資などです。政府の試算では、これらに対して今後10年間で官民合わせて約150兆円以上の投資規模が不可欠とされています。

政府側の支援策としては、GX経済移行債による先行投資支援や成長志向型カーボンプライシングの導入により、投資の収益性・市場メカニズムの整備を図る方針ですが、巨額資金の調達となるため、単純に民間金融だけで賄うのが困難です。

また、民間金融機関にとっては、不確実性の高い分野であること、数十年スパン・数十億円〜数百億円規模となり短期リターンが望めないこと、市場メカニズムが未成熟であることなどの市場リスクがあります。

このため、国としては、公的資金によるリスク補完をすると同時に民間資金の呼び込みを両立させる仕組みが必要となりました。官民協調でGX投資を加速させる中核機関として、GX推進機構が設立されたという背景です。

参考:経済産業省『GX2040ビジョン~脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂~』

参考:経済産業省 環境経済室『グリーントランスフォーメーションの推進に向けて-成長志向型カーボンプライシングを中心に』

GX推進機構が行う支援とは

GX推進機構が行う支援とは

GX推進機構は具体的にどのような支援を行うのでしょうか。通常の補助金との違いと合わせて解説します。

投資・債務保証・補助の仕組み

GX推進機構では「金融支援」を中心的役割として担います。主に次のような仕組みで行われます。

①債務保証

民間金融機関が融資する際に、GX推進機構が債務保証を付加します。民間だけではリスク評価が難しく、取り切れない部分をカバーします。

②出資

特に革新的技術・新規事業に対しては、機構自身が出資者として直接資金提供することもあります。政府予算を活用したサポートなので、純粋な市場リターンだけでは評価しにくいプロジェクトでも支援が可能です。

参考:GX推進機構『金融支援の概要』

通常の補助金との違い

GX関連の補助金にはGXサプライチェーン構築支援事業※4 等、様々なものがありますが、GX推進機構の支援はそれらとは性質が異なります。

まず、一般的な補助金は資金を返済不要で交付するものですが、GX推進機構の支援の場合は債務保証や出資、融資支援など、金融的な支援となります。

また、補助金はプロジェクトのコストを補助する役割が強いですが、GX推進機構の支援は民間では取りにくい金融リスクの補完する役割です。

さらに、補助金は交付を受けること実証や導入段階の事業における費用削減効果を狙うことが多いです。GX推進機構の支援は実装・実証・本格投資に至る段階のリスクまで含めて対応し、民間金融を巻き込んで資金総額を増やすことを狙っています。

つまり、補助金はコスト補完、機構は金融リスク補完という違いがあると捉えましょう。

※4 GXサプライチェーン構築支援事業:脱炭素・GX分野の国内製造サプライチェーン強化を目的とした大規模補助事業。経済産業省が実施。

支援対象と想定される分野・業種

支援対象と想定される分野・業種

GX推進機構が今後支援するであろうと想定される分野や業種について解説します。国が後押しすると表明している分野についてはGX推進機構の支援を活用できる可能性は高いでしょう。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、GXの中心的な支援対象です。政府が策定した「分野別投資戦略」では、次世代型太陽電池(ペロブスカイト※5 等)、浮体式洋上風力※6 などが重点分野として位置づけられています。再エネ分野への支援は、電源の脱炭素化と電力供給の安定性を両立させる重要な取り組みです。

※5 ペロブスカイト:軽量で曲げることができ安価な次世代の太陽電池材料

※6 浮体式洋上風力:海に浮かべて設置する次世代の風力発電

水素・アンモニア

水素・アンモニアは、脱炭素燃料として国内外で政策的に重点化されています。水素ステーション、貯蔵・輸送設備などの構築支援や、アンモニア燃料を利用し発電や産業プロセスでの脱炭素燃料化を目指す技術開発が進められています。これらは温室効果ガスを大幅に削減するポテンシャルを持つため、政策面でも優先的に投資が進められています。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁『「エネルギー基本計画」をもっと読み解く②:技術開発から社会実装へ!水素社会実現をめざして前進』

蓄電池・EV

蓄電池やEVなどの技術・産業は、政府の「分野別投資戦略」でも「蓄電池」や「自動車(モビリティ)」が重点分野として明記されており、電力システムや運輸の脱炭素化に不可欠です。再生エネルギーの需要・供給のバランスを取るためには大規模蓄電池システムが欠かせませんし、EV等の電動モビリティは化石燃料依存からの脱却と電動化によるCO2削減に密接につながっています。この分野は産業競争力強化にも直結するため、産業・政策双方の観点から支援が進められています。

CCUS

CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2回収・利用・貯留を意味します。CO2回収技術によって工場や発電所等の排出源からCO2を捕捉でき、利用・貯留ができれば回収したCO2の化学原料利用や地中貯留技術などの実用化につながります。「分野別投資戦略」にも「CCS(CCUSの貯留部分)」が含まれています。

省エネ・GX製造業

製造業等における省エネルギーや製造プロセスのGXシフトも、支援対象となりうる重要分野です。例えば鉄鋼、化学、セメントなどのエネルギー集約型産業における、省エネプロセスへの転換や低炭素・脱炭素設備の導入などの取り組みへの支援が想定されます。

GXスタートアップ

政府はGX実現に向けた新技術・ビジネスモデル創出を重視しているため、エネルギー効率化技術や環境負荷低減プロダクト、バイオマス関連技術などのGXスタートアップへの支援も想定されます。

参考:経済産業省『GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」を改定しました』

GX推進機構の支援の活用例

GX推進機構の支援の活用例

GX推進機構の支援は具体的にどのような事業フェーズで使えるのでしょうか。想定される活用例を紹介します。

設備投資資金の確保

大規模省エネ設備や再生可能エネルギー導入設備、CCUS設備の導入など、初期投資規模が大きく、長期リスク評価が必要な設備投資は、民間金融だけで資金確保が難しいことがあります。そうした際に、GX推進機構の債務保証や出資等の支援を組み合わせることで資金調達が可能になるケースがあります。

実証実験フェーズ

政府全体のGX投資方針では、「新技術・新モデルの実装までを視野に入れた投資促進戦略」が示されています。これは、単純な導入支援だけでなく、実証段階から実装段階への移行を促すことを目的としています。GX推進機構の支援基準にも「GXに資する技術の社会実装あるいは事業の推進に寄与すること」が条件と明示されています。実証段階であっても長期的な社会実装が見込める案件であれば、支援を活用できる可能性があります。

参考:経済産業省『GX推進機構の金融支援業務に関する支援基準を定めました』

スタートアップの資金調達

GX推進機構を利用することで、スタートアップが民間ベンチャーキャピタルや銀行のみでは取り切れないリスク部分で資金面での支援を得ることができます。特に、政府方針と整合し、技術の社会実装可能性が高いプロジェクトについては、機構による債務保証や出資が検討される可能性があります。

また、2025年にはGX推進機構、JETRO※7 、InnoEnergy※8 との3者間で協力覚書(MOC)も締結されており、今後の国内外のスタートアップ連携や投資機会の創出に期待できます。

※7 JETRO:日本貿易振興機構。日本企業の海外進出をサポートする公的機関

※8 InnoEnergy:クリーンエネルギー・脱炭素技術のイノベーションと事業化を加速する欧州発の支援・投資機構

地域GXプロジェクト参画

地域再エネインフラ整備や地域内エネルギーマネジメントシステム、地方産業のGX転換プロジェクトなどは、プロジェクトが大きくスパンが長いため民間の金融では扱いにくい場合がありますが、GX推進機構の支援基準に合致すれば債務保証や出資が得られる可能性があります。

GX推進機構の支援を利用するための条件

GX推進機構の支援を利用するための条件

GX推進機構の支援を利用するにあたって、経済産業省によって支援基準が定められています。下記の条件に合致する事業であればGX推進機構の支援を利用できると考えてよいでしょう。支援の利用にあたっては問い合わせ→書類提出→審査→契約締結の流れです。最新の情報は、GX推進機構の公式サイトで確認しましょう。

参考:GX推進機構『支援プログラム』

政府の方針との整合性がある

特に脱炭素成長型経済構造移行推進戦略やクライメート・トランジション・ボンド・フレームワーク※9 等の、GX推進戦略や関連政策と一致していることが求められます。

※9 クライメート・トランジション・ボンド・フレームワーク:政府や企業が、脱炭素に移行するための債券発行を実施する際の枠組みを定めたガイドライン

GXに資する技術・事業

政府はGXに資する投資の成否が企業や国の競争力の成否を左右すると認識しています。GX技術の社会実装または事業推進に寄与することが求められます。

民間では取り切れないリスクの存在

単独で民間資金調達できない事業であることも条件とされています。GXは技術や需要、事業環境の不透明性が高く、民間金融機関等だけではリスクを取り切れないケースも存在するため、GX推進機構の支援が必要という考え方です。

持続可能性・総合判断

社会実装性や事業性・雇用等の観点から、事業の持続可能性や総合的な判断をし、支援の可否が決まります。GXに関する施策への貢献や民間金融の呼び水効果、新たな金融手法の進展、人的資本の蓄積及び良質な雇用をもたらす効果などの視点で評価されます。

適切な経営・推進体制

経営基盤が信頼できる体制になっているかも重要な条件です。

GX推進機構はGX投資時代に必須のパートナー

GX推進機構はGX投資時代に必須のパートナー

GX推進機構は国内の脱炭素投資を加速する目的で設立されました。具体的に支援事例や支援を利用するにあたっての枠組みがわかるのはこれからですが、今のうちから情報収集をしておくことで、開始した際にスムーズな活用が可能になります。今後さらに予算や制度の拡充が見込まれるため、GXを推進する志のある企業は随時進展をチェックしておきましょう。

GREEN CROSS PARKのGX

GREEN CROSS PARKのGX

東急不動産が展開する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、企業の事業活動と環境配慮の両立を実現することを目指した次世代型の産業まちづくりプロジェクトです。再生可能エネルギーの導入や高度なカーボンマネジメントを通じて、エリア全体で脱炭素化を推進します。持続可能な産業基盤の構築を図りながら、未来志向の産業団地として進化を続けています。

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