RE100とは、企業の事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目標とする国際イニシアチブです。2014年に発足して以来、国内外の有名企業の多くがRE100が目指す目標にコミットし、温室効果ガスの排出削減と持続可能な事業への転換に取り組んでいます。
RE100は、日本の大手企業にも拡がりつつある取り組みとなっています。脱炭素経営のトレンドに乗り遅れないためには、RE100について理解を深めておくことが大切です。
今回は、RE100の概要やメリット、要件、日本企業の参加状況をわかりやすく解説します。
RE100とは?

RE100とは、「100% Renewable Electricity」の略で、企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブです。2014年に英クライメート・グループ(The Climate Group)※1 がCDP※2 とのパートナーシップのもとで発足しました。また、We Mean Business(WMB)※3 の取り組みの1つとしても実施されています。
RE100には、AppleやGoogle、Microsoft、Starbucksなどの世界でも名だたる有名企業が参加し、カーボンニュートラルの実現や再エネ活用においても世界をリードしています。日本では一般社団法人日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が、RE100の窓口業務を行っています。
※1 The Climate Group:気候変動問題に取り組む非営利団体(NGO)。
※2 CDP:投資家向けに企業の環境情報の提供を行うことを目的とした国際的なNGO。気候変動等に関わる事業リスクについて、企業がどのように対応しているか、質問書形式で調査し、評価したうえで公表するもの。
※3 We Mean Business:企業や投資家の温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、NGO等が構成機関となって運営しているプラットフォーム。
RE100の取り組みが求められる理由

出典:経済産業省関東経済産業局『企業の脱炭素経営と環境省の取組』
RE100の取り組みが求められる理由は、SDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりや、ESG投資(Environment=環境、Social=社会、Governance=企業統治という非財務情報を評価した投資手法)の拡大によって、気候変動対策が企業にとって経営上の重要課題となっているからです。
従来、企業の気候変動対策は、あくまでCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)活動の一環として行われ、コスト増を伴う負担となるケースが多いものでした。しかし、消費者や投資家、取引先のステークホルダーの多くが気候変動対策を重視するようになり、持続可能性の高い事業を行う企業を評価する傾向が強くなりました。
一方で、化石燃料を多く消費する製品や地球温暖化に配慮していないサービスは、持続可能性が低い事業として、ステークホルダーから敬遠されるリスクが高まっています。
企業が取り組む気候変動対策は、地球温暖化を防ぐだけでなく、経営上のリスクを低減するとともに、ステークホルダーからの評価を高め、中長期的な企業の成長を加速させる可能性を秘めています。そのため、経営上の重要課題として気候変動対策を掲げる企業は増えており、RE100に参加する世界的な有名企業は446社(2025年12月現在)まで拡大しています。
RE100に参加する日本企業

2025年12月現在、RE100に参加する日本企業は以下の94社となっています。2018年には、公的機関として初めて日本の環境省がアンバサダーとし参画し、自らも2030年までに再エネ100%(環境省RE100)を目指しています。こうした流れもあり、日本でも多くの主要企業がRE100に参加しています。
(参加順 2025年12月現在 94社)
| 株式会社リコー 積水ハウス株式会社 アスクル株式会社 大和ハウス工業株式会社 ワタミ株式会社 イオン株式会社 城南信用金庫株式会社 丸井グループ 富士通株式会社 株式会社エンビプロ・ホールディングス ソニー株式会社 芙蓉総合リース株式会社 生活協同組合コープさっぽろ 戸田建設株式会社 コニカミノルタ株式会社 大東建託株式会社 株式会社野村総合研究所 東急不動産株式会社 富士フイルムホールディングス 株式会社アセットマネジメント One株式会社 第一生命保険株式会社 パナソニック株式会社 旭化成ホームズ株式会社 株式会社髙島屋 株式会社フジクラ 東急株式会社 ヒューリック株式会社株式会社 LIXIL楽天株式会社 株式会社安藤・間 三菱地所株式会社 三井不動産株式会社 住友林業株式会社 小野薬品工業株式会社 BIPROGY株式会社 株式会社リコー 積水ハウス株式会社 アスクル株式会社 大和ハウス工業株式会社 ワタミ株式会社 イオン株式会社 城南信用金庫株式会社 丸井グループ 富士通株式会社 株式会社エンビプロ・ホールディングス ソニー株式会社 芙蓉総合リース株式会社 生活協同組合コープさっぽろ 戸田建設株式会社 コニカミノルタ株式会社 大東建託株式会社 株式会社野村総合研究所 東急不動産株式会社 富士フイルムホールディングス 株式会社アセットマネジメント One株式会社 第一生命保険株式会社 パナソニック株式会社 旭化成ホームズ株式会社 株式会社髙島屋 株式会社フジクラ 東急株式会社 ヒューリック株式会社株式会社 LIXIL楽天株式会社 株式会社安藤・間 | 三菱地所株式会社 三井不動産株式会社 住友林業株式会社 小野薬品工業株式会社 BIPROGY株式会社 株式会社アドバンテスト 味の素株式会社 積水化学工業株式会社 株式会社アシックス J.フロント リテイリング株式会社 アサヒグループホールディングス株式会社 キリンホールディングス株式会社 ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 株式会社ノーリツ 株式会社村田製作所 いちご株式会社 株式会社熊谷組 株式会社ニコン 日清食品ホールディングス株式会社 株式会社 島津製作所 東急建設株式会社 セイコーエプソン株式会社 TOTO株式会社 花王株式会社 日本電気株式会社 第一三共株式会社 セコム株式会社 東京建物株式会社 エーザイ株式会社 明治ホールディングス株式会社 西松建設株式会社 カシオ計算機株式会社 野村不動産ホールディングス株式会社 株式会社 資生堂 株式会社オカムラ 株式会社T&Dホールディングス ローム株式会社 大塚ホールディングス株式会社 インフロニア・ホールディングス株式会社 ジャパンリアルエステイト投資法人 LINEヤフー株式会社 森ビル株式会社 浜松ホトニクス株式会社 日本碍子株式会社 TDK株式会社 住友ゴム工業株式会社 HOYA株式会社 アルプスアルパイン株式会社 プライム ライフ テクノロジーズ株式会社 KDDI株式会社 株式会社アマダ ダイビル株式会社 ユニ・チャーム株式会社 ソフトバンク株式会社 株式会社電通グループ 日本生命保険相互会社 日東電工株式会社 サッポロホールディングス株式会社 シチズン時計株式会社 シャープ株式会社 株式会社 KOKUSAI ELECTRIC 株式会社AESCジャパン DMG森精機株式会社 |
参考:Climate Group『RE100 Members』
参考:一般社団法人日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)
RE100に取り組むメリット

企業がRE100に取り組む主なメリットは以下の4つです。
- 化石燃料によるリスクを回避し、気候変動を防ぐ
- 安価で安定した再エネ供給を受けられるようになる
- 投資家からのESG投資の呼び込みに役立つ
- 世界的な対外アピールになる
それぞれを解説します。
化石燃料によるリスクを回避し、気候変動を防ぐ
1つ目のRE100のメリットは、化石燃料によるリスクを回避し、気候変動を防ぐことです。
化石燃料由来のエネルギーで発電された電力は、温室効果ガスの排出を増やしてしまうため、地球温暖化を加速させる原因の1つとなっています。そのため、化石燃料による発電は、リスクであるという認識が世界的に高まっています。実際、気候変動によって原料供給に問題が生じたり、新設石炭発電所の簿価が1年で半減したりする事例が生じています。
また、石炭や石油、天然ガスなどのエネルギーの多くは、埋蔵量が豊かな一部の限られた国や地域でしか産出できません。そのため、化石由来のエネルギーに頼ることは、地政学リスクによる供給不安も高まります。また、エネルギー需要の世界的な高まりから、エネルギー価格の上昇リスクにも晒されることになります。
化石燃料によるリスクを回避し、気候変動を防ぐためには、再生可能エネルギーの活用が有効な対策の1つとなるため、RE100に取り組む企業の増加につながっています。
安価で安定した再エネ供給を受けられるようになる

2つ目のRE100のメリットは、安価で安定した再エネ供給を受けられるようになることです。
RE100に取り組む企業は、世界的に有名で影響力も非常に大きいです。そのため、再生可能エネルギーの需要に与えるインパクトも非常に大きいものとなります。世界的な企業が再エネ調達の必要性を発信することで再エネの市場規模が拡大し、再エネ活用の投資やイノベーションが加速することで、エネルギー調達選択肢の増加や、再エネ価格の低下に繋がります。
需要家である企業の影響力が大きいほど、発電事業者などの供給企業や各国政府の政策立案者に再エネ需要の大きさが市場ニーズとして伝わりやすくなります。その結果、供給企業の新規参入やイノベーションが促進され、再エネ価格の低下と安定化につながります。また、再エネ活用に関する政府の規制緩和なども促進されます。
再エネ価格の低下と安定化は、需要の拡大をもたらし、その結果としてさらなる価格の低下と安定化を促すという好循環が生み出されます。
投資家からのESG投資の呼び込みに役立つ
3つ目のRE100のメリットは、投資家からのESG投資の呼び込みに役立つことです。
再エネを取り入れた事業運営は対外的に評価されやすく、再エネの導入比率はCDPの加点対象にもなっています。ESG投資への関心の高まりから、CDPに署名する機関投資家の数も年々増加しています。そのため、RE100に取り組むことでCDPの点数を高めることは、多くの機関投資家への良いアピールとなります。気候変動対策を積極的に行う企業は、持続可能性の高い事業を行っていると評価されるからです。
2018年度からは、CDPの気候変動質問書に再エネ導入比率に関する項目が追加されました。また、2022年度からは、実施中の再エネ調達手法によって得られる得点が異なる設問も登場しています。こうした流れからも、RE100に取り組む企業は、気候変動対策に関心を持つ機関投資家からの投資促進が期待できます。
世界的な対外アピールになる

4つ目のRE100のメリットは、世界的な対外アピールになることです。
RE100に参加する企業は、世界的に主要な影響力の大きい企業です。そのため、RE100に参加することで再エネ100%調達をコミットすることは、世界的な対外アピールとなります。2025年11月現在、RE100には世界では446社、日本では94社が参加しており、先進的な気候変動対策を行う企業との情報交換や、新たな供給側企業との出会いも期待できます。
実際、RE100での繋がりがきっかけで、企業間の協働による新たな再エネ調達につながった事例もあります。
2017年1月、オランダの化学メーカーであるAkzo NobelとDSM、オランダの医療機器メーカーであるPhilips、アメリカのビッグテック企業であるGoogleの4社は、独自のグリーンエネルギー購入コンソーシアムを共同で設立し、オランダの風力発電所から電力供給を行うことを発表しました。140,000世帯分に匹敵する140MW超の電力供給に関する長期契約を、2つの風力発電プロジェクトと締結しました。
RE100の達成状況

2023年には79社で再エネ100%が達成されました。なお、日本企業では城南信用金庫と第一生命保険が再エネ100%を達成しています。
城南信用金庫は、国内の金融機関として初めて「RE100」に加盟し、選考して再エネ100%を達成した企業です。電力会社から供給される全電力の約98%を占める本支店等の所有物件の電力を、全て再生可能エネルギー(バイオマス発電)に切換えるとともに、残り約2%の賃貸物件等の電力についても、国が運営する「J-クレジット」を購入することでCO2をオフセットし、再エネ100%を達成しました。
参考:城南信用金庫『国内金融機関では日本初となる「RE100」に加盟― 参加する国内企業では初となるRE100達成 ―』
「J-クレジット」によるCO2のオフセットついて以下のコラムで詳しく解説しています。
カーボンオフセットとは?メリットや手順、注意点、カーボンニュートラルとの違いも解説
また、第一生命保険では、LEDの導入や省エネ効果の高い機器への切り替えなどの省エネ対策の他、オフサイトコーポレートPPA ※4 や自家消費型太陽光発電設備、電気需給契約の見直し、非化石証明書 ※5 などの活用を進め、再エネ100%を達成しています。
※4 オフサイトコーポレートPPA:太陽光などの再生可能エネルギーを使って自社の敷地外で発電された電力を、発電事業者から購入する方法。
※5 非化石証明書:非化石燃料を使って発電された電力の価値を分離し、証明書として売買できるようにしたもの。
参考:第一生命保険『消費電力量の100%再生可能エネルギー化を達成~1年前倒しで目標を達成し、脱炭素社会の実現に貢献~』
RE100の基準・要件

RE100には参加要件があります。主な基準や要件は以下の通りです。参加可否の判断は、英クライメート・グループにて行われます。詳しくは、日本のRE100窓口である一般社団法人日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)のホームページでご確認ください。
- 消費電力量が年間100GWh以上であること
※現在、日本企業は50GWh以上に緩和されています。消費電力量が年間50GWh以下の場合、「再エネ100宣言 RE Action」への参加が推奨されます。 - 自社事業で使用する電力(GHGプロトコルのスコープ2及び1の電力消費)の100%再生エネ化に向け、期限を切った目標を設定し、公表すること
- グループ全体での参加及び再エネ化にコミットすること
※親会社から見て、支配率50%以上の子会社全てがRE100の参加対象となります。
上記についての詳細は、「RE100 Joining Criteria(原典)」もご参照ください。
参考:一般社団法人日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)
まとめ RE100について

今回は、RE100の概要やメリット、要件、日本企業の参加状況を解説しました。
RE100は、企業の事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目標とする国際イニシアチブです。2025年12月現在、世界的に影響力のある有名企業446社が参加し、そのうち日本企業は94社を占めます。
現在、日本企業に関しては参加要件が年間100GWhから50GWhに緩和されていますので、再エネ100%達成を目指したい企業の方は、RE100への参加を検討してみてはいかがでしょうか?
GREEN CROSS PARKのGX

東急不動産の「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、企業活動と環境配慮を両立させる産業まちづくり事業です。再生可能エネルギーの活用やカーボンマネジメントにより、脱炭素社会への移行をエリア全体で実践し、未来志向の産業団地として進化を続けています。