TNFDとは?自然関連財務情報開示タスクフォースの概要やメリット、TCFDとの違いを解説

TNFDとは?自然関連財務情報開示タスクフォースの概要やメリット、TCFDとの違いを解説

TNFDとは、企業の自然資本や生物多様性への依存と影響、リスクを管理・開示するための枠組みを構築する国際的なイニシアチブです。気候変動や資源の枯渇、生態系の破壊といった事案リスクを可視化し、持続可能な企業成長を促進することを目的としています。

今回は、TNFDの概要やメリット、TCFDとの違いについてわかりやすく解説していきます。

TNFDとは?

TNFDとは、「The Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略で、日本語では「自然関連財務情報タスクフォース」と訳します。自然資本や生態系に関する企業のリスク管理と開示枠組みを構築するために設立された国際的組織で、2019年1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で構想が提案され、2023年9月に開示枠組みv1.0(自然関連財務情報開示タスクフォースの提言)が公表されました。

参考:TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)『自然関連財務情報開示タスクフォースの提言 2023年9月』

TNFDに参加する企業の国・地域別ランキング(2025年12月現在)

国や地域参加企業数
日本210社
イギリス92社
台湾34社
フランス29社
オーストラリア27社
コロンビア26社
ブラジル24社
アメリカ22社
インド22社
スペイン16社

参考:The Taskforce on Nature-related Financial Disclosures (TNFD)『List of Adopters』

2025年12月現在、世界的に有名な企業や金融機関733社がTNFDのイニシアテブに参画しています。なお、日本からは世界最多の210社が参加しています。これは2位のイギリス92社、3位の台湾34社を大きく上回る規模であり、TNFDにおいて日本企業は大きな存在感を示しています。

TNFD設立の背景や目的

TNFDの目的は、企業や金融機関の自然資本や生物多様性への考え方や行動の転換を支援し、持続可能な事業の成長を促進することです。

私たちの社会や経済、金融システムは、自然の外側にあるのではなく、自然の中に組み込まれているものです。社会と経済の繁栄とレジリエンス(回復力や適応力、対応力)は、自然資本や生物多様性と大きな関わりがあります。

例えば、森林破壊や水源の汚染が進むと、動植物の生育に大きな影響を与え、食糧不足などの深刻な問題に発展する可能性があります。また、石油や鉱物などの資源を乱開発すると、地球温暖化を加速したり、資源が枯渇したりするリスクが高まります。

自然環境は世界的に悪化しており、生物多様性は人類史上かつてない速さで減少しています。このまま自然や生物多様性に悪影響を与え続けると、世界中で社会活動が停滞し、企業の健全な経営や長期的な成長の妨げになる可能性があります。

こうした危機感が2019年のダボス会議で議論され、2021年にTNFDが設立されました。その後、さまざまな議論を経て、2023年9月に「自然関連財務情報開示タスクフォースの提言v1.0」が公表されるに至っています。

TNFDとTCFDの違い

TCFDとは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されます。

TNFDが自然資本や生物多様性に関するリスクや機会について評価・開示を求める枠組みであるのに対し、TCFDは気候変動に関するリスクや機会について評価・開示を求める枠組みとなります。

TNFDは、TCFDから派生したイニシアチブであるため、基本構造となる4つの柱には共通性があります。

TNFD
自然関連財務情報タスクフォース
TCFD
気候関連財務情報開示タスクフォース
ガバナンスガバナンス
戦略戦略
リスクとインパクトの管理リスク管理
測定指標とターゲット指標と目標

TCFDでは、温室効果ガスの排出量などの各企業が共通で利用できる指標があります。一方、TNFDの自然資本や生物多様性は地域性や事業内容によって異なる事情を考慮する必要があります。そのため、TNFDでは4つの柱と14の開示推奨事項が設定されています。

TNFDの開示提言(4つの柱と14の開示推奨事項)

TNFDでは、企業活動が自然や生物の多様性に与える影響を把握し、持続可能性の高い企業活動を促進するために、開示提言をまとめています。TNFDの開示提言は4つの柱と14の開示推奨事項で構成されています。全体像は以下の通りです。

4つの柱開示推奨事項
ガバナンス
自然関連の依存、インパクト、リスクと機会の組織によるガバナンスの開示。
A.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会に関する取締役会の監督について説明する。
B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会の評価と管理における経営者の役割について説明する。
C.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダー、その他のステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動、および取締役会と経営陣による監督について説明する。
②戦略
自然関連の依存、インパクト、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に与えるインパクトについて、そのような情報が重要。
A.組織が特定した自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を短期、中期、長期ごとに説明する。
B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画に与えたインパクト、および移行計画や分析について説明する。
C.自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明する。
D.組織の直接操業において、および可能な場合は上流と下流のバリューチェーンにおいて、優先地域に関する基準を満たす資産および/または活動がある地域を開示する。
リスクとインパクトの管理
組織が自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けし、監視するために使用している。
A(i)直接操業における自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセスを説明する。
A(ii)上流と下流のバリューチェーンにおける自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセスを説明する。 
B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を管理するための組織のプロセスを説明する。
C.自然関連リスクの特定、評価、管理のプロセスが、組織全体のリスク管理にどのように組み込まれているかについて説明する。
測定指標とターゲット
マテリアルな自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標とターゲットを開示する。
A.組織が戦略およびリスク管理プロセスに沿って、マテリアルな自然関連リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標を開示する。
B.自然に対する依存とインパクトを評価し、管理するために組織が使用している測定指標を開示する。

参考:TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)『自然関連財務情報開示タスクフォースの提言 2023年9月』

①ガバナンス(自然関連の依存、インパクト、リスクと機会の組織によるガバナンスの開示。)

投資家や金融機関は、自然関連の課題に対する企業の向き合い方に関心を持っています。特に組織のガバナンス機関である経営陣や取締役会が、適切なレベルのスキルや能力を持っていることを開示することが大切です。

A.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会に関する取締役会の監督について説明する。

取締役会は、組織の直接操業だけでなく、上流と下流のバリューチェーン全体にわたる自然関連の依存、インパクト、リスクと機会について報告を受けるプロセスと頻度を開示することが求められます。また、年次予算や事業計画の見直し、組織の業績目標の設定、資本の支出や買収、売却の際などの際にも、自然関連の依存、インパクト、リスクと機会をどのように考慮しているかや、こうした課題に対する目標やその進捗をどのように監視しているかを開示することが望ましいとされています。

また、開示内容を裏付けるために、自然関連課題に関して権限を有する取締役会メンバーの人数や外部の専門アドバイザーなどの利用の有無、取締役会で自然課題が討議された頻度なども開示内容に含めることを推奨しています。

B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会の評価と管理における経営者の役割について説明する。

組織が自然関連の責任を経営レベルの職位や委員会に割り当てているか、どのように割り当て、どう報告しているかを説明することが望ましいです。また、関連する組織構造や提供された情報を監視するための統制と手順も開示内容に含むべきとされています。

なお、この開示を裏付けるための自然の方針やコミットメント、ターゲットに対する最高レベルの責任と説明責任、優先地域におけるパフォーマンスおよび進捗の経営陣に対する報告頻度も指標として報告することが望ましいです。

C.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会に対する組織の評価と対応において、先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダー、その他のステークホルダーに関する組織の人権方針とエンゲージメント活動、および取締役会と経営陣による監督について説明する。

組織は自然関連の依存、インパクト、リスクと機会の評価と管理に関連する人権方針とエンゲージメント活動についての説明を開示すべきとされています。説明する際は、国連に定められた人権に対する国際基準や、先住民族に関する宣言、環境に関する国連総会決議76/300へのコミットメントを含め、国際的に認められた人権を導入するべきです。また、人権デューディリジェンスの組み込みやOECD(経済協力開発機構)の「多国籍企業のための責任ある企業行動に関する指針(多国籍企業行動指針)」に基づく組織の関与についても説明することが求められています。

説明の対象は、先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーが優先で、関連するすべてのステークホルダーも含まれます。説明を開示する際には、先住民族の権利に関する国連宣言、国連ビジネスと人権に関する指導原則、影響を受けるステークホルダーに適用される国際的に認められた人権を参照して、それらを導入しなければなりません。組織の自然関連の直接的な提言活動とロビー活動、事業活動が引き起こした人権への有害なインパクト、苦情処理メカニズム、先住民族を中心としたステークホルダーの同意方法や同意内容なども対象です。この内容を上級管理職や取締役に周知し、その周知方法も開示の対象となります。

また、この開示を裏付けるために、マテリアルな自然関連課題を有すると特定された地域・要注意地域において、自然関連課題について先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーと積極的にエンゲージメントしている地域の割合も指標の報告に含むことが望ましいです。

②戦略(自然関連の依存、インパクト、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に与えるインパクトについて、そのような情報が重要。)

組織が自然関連課題を管理するために用いるアプローチや、自然関連課題が組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に短期・中期・長期にわたってどのような影響を及ぼす可能性があるかについて、投資家やその他のステークホルダーは理解したいと考えています。このような情報を開示することで、組織の将来のパフォーマンスに対する期待が形成されます。

A.組織が特定した自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を短期、中期、長期ごとに説明する。

組織は、直接操業と上流・下流のバリューチェーンにおいて特定したマテリアルな自然関連の依存とインパクトについて説明が求められます。インパクトを与える地域を特定し、どのような経路でどのくらいのインパクトなのかを開示する必要があります。その際、組織が依存する環境資産と生態系サービスについても説明に含めることが大切です。

また、短期・中期・長期に組織が特定した各自然関連のリスクと機会についても開示することが求められます。

B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会が、組織のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務計画に与えたインパクト、および移行計画や分析について説明する。

組織は、戦略Aで特定された自然関連の依存、インパクト、リスクと機会が、自社のビジネスモデル、バリューチェーン、戦略、財務状況にどのような影響を与えるのかを説明する必要があります。

その際は、短期・中期・長期にわたる影響を分析する必要があります。また、影響に対処する際のコミットメントや達成方法などの移行計画についても開示が求められます。

C.自然関連のリスクと機会に対する組織の戦略のレジリエンスについて、さまざまなシナリオを考慮して説明する。

組織は、戦略Aで特定された自然関連のリスクと機会を考慮し、自然関連の変化、進展、不確実性に対する戦略、ビジネスモデル、バリューチェーンのレジリエンスに関する情報を開示することが求められます。

自然の損失や政策変更、訴訟、消費者の期待変化などのさまざまなリスクが考えられますが、戦略をどのように変更し、どの地域でどのような対応が行えるのかなど、組織が有する対応能力や、短期・中期・長期的な財務パフォーマンスへの影響なども説明に含めることが望ましいです。

D.組織の直接操業において、および可能な場合は上流と下流のバリューチェーンにおいて、優先地域に関する基準を満たす資産および/または活動がある地域を開示する。

優先地域とは、直接操業や上流・下流のバリューチェーンにおいて、組織がマテリアルな自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定した地域、または直接操業や上流・下流の資産・活動が生物多様性や生態系の十全性、先住民族などのステークホルダー、物理的水リスクにとって重要な地域です。

優先地域では、直接操業や上流・下流のバリューチェーンの資産・活動がどの地域に影響を与えるのか、特定した地域のリストや特定方法なども含め開示することが求められます。

③リスクとインパクトの管理(組織が自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けし、監視するために使用している)

投資家やその他のステークホルダーは、組織の自然関連の依存、インパクト、リスクと機会がどのように特定され、評価され、優先順位付けされ、監視されているか、また、それらのプロセスが既存のリスク管理プロセスに統合されているかどうかについて理解したいと思っています。このような情報は、自然関連の財務情報開示の利用者が、組織の全体的なリスク・プロセスやリスクとインパクトの管理活動を診断するために役立ちます。

A(i)直接操業における自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセスを説明する。

組織は直接操業における自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするプロセスについて説明することが求められます。これらの情報を開示する際は、データの質と分析への影響についての評価や、データの品質改善計画の説明、使用方法や情報源についても説明が必要です。

A(ii)上流と下流のバリューチェーンにおける自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするための組織のプロセスを説明する。

組織は上流と下流のバリューチェーンにおける自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定し、評価し、優先順位付けするプロセスについても説明することが求められます。スコープの定義やバリューチェーンに対する評価方法、データの質、改善の戦略、評価プロセスなども開示に含めることが望ましいです。

B.自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を管理するための組織のプロセスを説明する。

組織は自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を管理するためのプロセスについても説明が求められます。その際には、組織が使用するインプットとパラメータ(例えば、データソースやプロセスの対象となる業務のスコープに関する情報)や、リスクプロファイルを評価するために組織が使用するリスク管理ツール、組織が自然関連リスクをどのように決定するかについても開示が必要です。

C.自然関連リスクの特定、評価、管理のプロセスが、組織全体のリスク管理にどのように組み込まれているかについて説明する。

組織は自然関連リスクの特定、評価、優先順位付け、モニタリングのプロセスが、組織全体のリスク管理プロセスに組み込まれているかどうか、どのように組み込まれているかについて説明が求められます。

④測定指標とターゲット(マテリアルな自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標とターゲットを開示する。)

投資家やその他のステークホルダーは、組織が設定したターゲットに対する進捗状況や、組織が自然関連の依存、インパクト、リスクと機会をどのように測定・監視しているかなど、自然関連課題に関する組織のパフォーマンスを理解したいと思っています。

マテリアルな自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を特定、診断、評価、管理するために組織が使用している測定指標とターゲットの開示は、投資家やその他のステークホルダーが、組織の現状と見込みのリスク調整後リターン、現在および将来の財務的義務を果たす能力、自然関連課題に対する一般的なエクスポージャー、およびそれらの課題の管理または適応の進捗状況を評価するために役立ちます。

A.組織が戦略およびリスク管理プロセスに沿って、マテリアルな自然関連リスクと機会を評価し、管理するために使用している測定指標を開示する。

組織は戦略Aに記載されているマテリアルな自然関連のリスクと機会を測定・管理するために使用している指標と測定指標を開示することが求められます。そして、自然関連のリスクと機会に最も関連し、最も正確に表す測定指標を使う必要があります。これには、すべてのグローバル中核リスクと機会の測定指標、セクター中核リスクと機会の測定指標、TNFDの追加開示指標と測定指標などを含む必要もあります。

トレンド分析を可能にするために、指標と測定指標は前年度比較を含め、過去の期間についても開示する必要があります。

B.自然に対する依存とインパクトを評価し、管理するために組織が使用している測定指標を開示する。

組織は戦略Aに記載されているマテリアルな自然関連の依存とインパクトを測定・管理するために使用している指標と測定指標を開示することが求められます。そして、自然関連の依存とインパクトに最も関連し、最も正確に表す測定指標を使う必要があります。これには、すべてのグローバル中核リスクと機会の測定指標、セクター中核リスクと機会の測定指標、TNFD の追加開示指標と測定指標などを含む必要もあります。

また、戦略Aに記載されているそれぞれの依存とインパクト地域について、戦略Dを参照しつつ開示の対象とすることの検討が推奨されます。さらにネット(相殺後)ベースではなく、プラスとマイナスのインパクト要因を区別することや、測定指標の集計方法、ツール、データプラットフォームについても説明として開示すべきとされています。

C.組織が自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を管理するために使用しているターゲットと目標、それらと照合した組織のパフォーマンスを記載する。

組織は自然関連の依存、インパクト、リスクと機会を管理するために設定したターゲットや目標を説明し、それらのターゲットや目標に対するパフォーマンスについて開示することが求められます。戦略やリスク管理の目的、パフォーマンスの測定指標、達成までの期間、ターゲットが昆明・モントリオール生物多様性枠組のターゲットと目標と一致・支援しているかどうかなどの情報も含む必要があります。

対象とするターゲットは、インパクト要因の変更に関するターゲットや、生態系サービスの流れを改善・維持するためのターゲット、自然の損失を食い止め、回復させ、自然の状態を改善・維持するためのターゲットなどとなります。

また、短期・中期・長期のリスクと機会に対処するターゲットの割合や、期限付きで定量化可能なターゲットの割合、ターゲットの対象となる地理的拠点や優先地域の割合などの報告も検討すべき項目です。

LEAPとは?TNFDの統合的なアプローチ手法

LEAPは、TNFDが推奨する自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ手法です。LEAPアプローチの実施は必須ではありませんが、TNFD情報の開示に向けた準備において有効な手段となります。

LEAPアプローチでは、Scoping(スコーピング)を経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏みます。

Scoping(スコーピング)組織の潜在的な自然関連の依存、インパクト、リスクおよび機会に関する仮説を創出し、LEAP評価のパラメータを定義し、経営層と評価チームが目標とスケジュールについて一致していることを確認するため、内部および外部のデータと参考情報源を素早くハイレベルで事前調査すること。
・作業の仮説を立てる
 組織における重要な自然関連の依存、インパクト、リスク、機会がありそうな活動は何か?
・目標とリソースの調整
 組織内の現在のキャパシティ、スキル、データのレベル、および組織の目標を考慮した上で、アセスメントを実施するために必要なリソース(財務、人材、データ)と時間配分を検討し、合意する。
Locate
(発見する)
Locateフェーズでは、3つのフィルター(セクター、バリューチェーン、地理的位置)を用いて自然に関連する潜在的な問題を絞り込み、優先順位をつける。
自然関連の依存関係やインパクト、リスク、機会は場所特有のものであるため、これらを特定、評価、管理する上で立地が非常に重要です。
Locateフェーズでは、以下の成果が期待されています。
・セクター、バリューチェーン(上流及び下流)、地域別にフィルタリングされた、中程度及び高程度の自然に関連する依存及び影響の理解
・事業活動を行う生態学的に影響を受けやすい場所のリストや地図、LEAP評価を行う場所
・自然との接点について評価されたビジネスモデル、バリューチェーン、資本ポートフォリオの割合の理解
Evaluate(診断する)Evaluateフェーズでは、組織にとって潜在的に重要な自然への依存関係とインパクトを把握します。これには上流・下流のバリューチェーンも含まれますが、まずは少数の重要性の高い課題(例:パーム油産地)から着手し、その後開示範囲を広げることも推奨しています。
依存関係やインパクトの分析は、リスクと機会を理解するための重要な第一歩となります。Evaluateフェーズでは、以下の成果が期待されています。
・関連する環境資産と生態系サービスのリスト
・組織の自然への依存関係とインパクトのリスト
・潜在的に重要な依存関係と自然へのインパクトの分析、および重要な依存関係とインパクトのリスト
Assess
(評価する)
Assessフェーズでは、LocateおよびEvaluateフェーズで特定された自然への依存関係とインパクトに起因する、自然関連のリスクと機会の特定、測定、優先順位付けを行います。
Assessフェーズでは、以下の成果が期待されています。
・関連する自然関連のリスクと機会のロングリスト(既存のリスクマトリックスにプロット可能)
・重要な自然関連リスクと機会のショートリストおよび優先順位の高い場所のリスト
・自然関連のリスクと機会を、既存のリスクと統合させるためのプロセス概要
Prepare
(準備する)
Prepareフェーズでは、Locate、Evaluate、Assessの評価を用いて、特定された課題に組織がどのように対応すべきか、TNFDの開示提言に沿って何を開示するかについて、社内の利害関係者との議論に反映させる必要があります。
Prepareフェーズでは、以下の成果が期待されています。
・効果的な目標とターゲットの設定を含め、LEAPアプローチで特定された自然関連の課題に組織がどのように対応するかについての合意
・自然関連の評価に照らしたガバナンスおよびリスク管理プロセスについての組織内の議論
・自然関連の評価と照合した組織による自然関連の目標およびターゲットの設定
・TNFDに沿った開示の作成と公表
矢印
TNFD情報の開示へ

LEAPアプローチに関する詳しい内容については、下記の資料をご参照ください。

参考:環境省『LEAP/TNFDの解説』

TNFDに参画するメリット

TNFDに参画する主なメリットは以下の3つです。

  • 自然資本や生物多様性の保護につながる
  • 事業の持続可能性を高められる
  • 顧客や取引先、投資家の評価が高まる

TNFDに参画することで、自然資本や生物多様性の保護につながります。自社の事業が自然界に与える影響や依存を評価・開示することで、自然資本や生物多様性にとってネガティブな影響を減らし、ポジティブな影響を増やすことができるからです。

また、資源を枯渇させたり、生物の多様性を破壊したりする企業活動が減ることは、事業の持続性を高めることにもつながります。SDGsやESG投資への関心の高まりから、TNFDに参画する企業には、顧客や取引先、投資家からの評価が高まる可能性もあります。

2025年12月時点で、日本は世界で最も多くの企業がTNFDに参画しています。

まとめ TNFDについて

今回は、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)について解説しました。

TNFDとは、企業の自然資本や生物多様性への依存と影響、リスクを管理・開示するための枠組みを取り決める国際的なイニシアチブです。気候変動や資源の枯渇、生態系の破壊などに繋がる企業活動を抑制し、持続可能な企業成長を促進することを目的としています。

国際基準であるTNFDに参画することで、企業価値の向上や先進的な企業イメージの創出につながるというメリットもあります。自然環境を保護しつつ、事業の持続可能性を高めたい企業の方は、TNFDへの参画を検討してみましょう。

GREEN CROSS PARKのGX

GREEN CROSS PARK

東急不動産の「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、企業活動と環境配慮を両立させる産業まちづくり事業です。再生可能エネルギーの活用やカーボンマネジメントにより、脱炭素社会への移行をエリア全体で実践し、未来志向の産業団地として進化を続けています。

GREEN CROSS PARKのGX>>

ログアウト

ログイン