物流人材の不足、サプライチェーンの再構築、そして世界的な脱炭素への潮流。こうした変化を「ピンチ」としてではなく、産業構造を進化させる機会として捉え、東急不動産が推進しているのが産業拠点ブランド「GREEN CROSS PARK(GXP)」だ。再生可能エネルギー100%を前提としたエネルギー設計というGXを見据えた取り組みに加え、自動運転や自動化といったDXの要素を、単なる付加価値ではなく事業基盤としてどう組み込むか。その構想について、業務連携を担当する中島大誠氏に聞いた。
| 中島 大誠 東急不動産株式会社 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部 事業開発部 新規開発グループ 2023年、東急不動産入社後から現在までインダストリー事業に従事。物流用地取得業務と、基幹産業拠点の付加価値創出業務を担当。 |
物流の構造変化が産業拠点の役割を再定義する

——産業拠点においてDXを重視されている背景には、どのような課題認識があるのでしょうか。
最も大きいのは物流の構造変化です。特に象徴的なのが、いわゆる「2024年問題」※1 です。トラックドライバーの労働時間規制の強化、ドライバー不足によって、これまでのような長時間労働を前提にした輸送の仕組みは維持しにくくなる懸念が高まりました。これは単なるコストの問題ではなく、根本的に物流が成り立たなくなる可能性を含んだ変化として捉えられました。
※1 2024年問題:働き方改革関連法により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間(月80時間相当)に制限され、物流業界に人手不足や配送遅延、運賃上昇などが生じる諸問題の総称のこと。
当初は、長距離輸送が難しくなるのであれば、中継機能を持つ拠点を増やせばよいのではないか、という発想もありました。実際、物流ネットワークの再編という観点から見れば、関東、関西、九州の間に中継拠点を置くという考え方には合理性があります。
ただ、検討を進めるなかで見えてきたのは、そもそも人手依存の構造が続く限り、拠点を増やしても、いずれ輸送を支えきれなくなるということでした。そうであるならば、見直すべきは拠点の数や配置だけではなく、物流の仕組みそのものなのだと考えるようになりました。
——どういった点を見直す議論になったのでしょうか。
従来の産業団地や物流施設は、いわば「箱」としての価値が中心でした。立地が良く、十分な床面積があり、必要な設備が整っていれば、それで一定の役割を果たしていました。しかし、物流と産業の前提条件が変わり始めた現在は、その箱の中をどう動かすのか、箱と箱の間をどうつなぐのかまで含めて考えなければなりません。そういう意味で、産業拠点は単なる不動産ではなく、産業の効率性を支えるインフラとして再定義されつつあると捉えています。
技術の「点」をサプライチェーンの「線」にする

——GXPでは、自動運転トラックのT2社(株式会社T2)や、完全自動運転を目指すチューリング社(チューリング株式会社)との連携も進められています。こうした技術企業との協業には、どのような意図があるのでしょうか。
物流の工程については私も知見が浅いですが、幹線輸送で運んできた荷物をコンテナから出し、出荷日時・方面別に仕分けをし、小型車両に積み替えてラストワンマイル配送を行う…など様々な工程から成り立っています。そして、それぞれの工程を効率化すべく、日々様々な自動化ソリューションが生まれていると考えております。
※2 ラストワンマイル:物流の最終拠点から消費者(エンドユーザー)の自宅や店舗へ荷物を届ける「最後の配送区間」のこと。
ただ、それらが個別の「点」として存在しているだけでは、企業が抱える課題は解決しません。例えば、高速道路上では自動運転トラックが走れるようになっても、そのトラックを受け入れる物流施設側の動線や荷役の仕組みが変わっていなければ、全体としての効率化は限定的です。
逆に、施設の中だけ高度に自動化されても、外部輸送が従来通りであれば、サプライチェーン全体としては非効率が残る。だからこそ重要なのは、それぞれの技術を単独で見るのではなく、拠点を介してどうつなぎ、全体最適の中で機能させるかという視点です。
少し先の未来には、全てが自動化された世界が待っているのかもしれません。ただ現実には、今の日本には、それぞれの工程ごとに異なるプレイヤーが存在し、技術の成熟度も異なります。そのなかで、幹線輸送に強い企業、ラストワンマイルに可能性を持つ企業、倉庫内自動化に知見を持つ企業が、それぞれの強みを発揮しながらつながっていく。その部分最適を組み合わせていくことこそが、今の段階で最も有効なアプローチではないかと考えています。
デベロッパーの役割は「共創の舞台」を整えること

——そうしたなかで、東急不動産のような総合デベロッパーが先端技術に関わる意義をどのように考えていますか。
例えば、自動運転についていえば、施設の出入口の設計、動線、標識、通信環境、エネルギー供給のあり方まで含めて、従来とは異なる設計思想が必要になります。技術が社会に広がってから後追いで対応するのではなく、技術の開発段階から、どのような環境があれば実装しやすいのかを一緒に考え、拠点の設計に反映していくことが求められます。
また、実際に使うのは、3PL※3 や荷主企業、さらにはその先の顧客です。開発する側、使う側、そして受け皿を整える側が、同じテーブルで議論することが大切です。GXPで重視している「共創」という言葉には、その意味が含まれています。先端技術を単なる実証や話題性で終わらせず、現実の事業運営に合うかたちに育てていく、その先で社会をより豊かにより良くすることが、これからのデベロッパーの役割だと考えています。
※3 3PL(third party logistics):荷主企業に代わって物流業務を一括して受託し、物流戦略の企画やシステム構築、運営管理などを行う第三者の物流サービス事業者。
産業拠点は「コスト」から「経営資源」へ

——企業の拠点戦略にも変化は見られますか。
土地価格や交通アクセス、必要な面積の確保といった条件に加えて、どのようなエネルギーが使えるのか、将来的にどのような技術を実装できるのか、といった観点も重要性が増していると感じています。
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