工場自動化とは?省人化・ロボット化・DXの進め方とLCA・Scope3対策まで解説

工場自動化とは?省人化・ロボット化・DXの進め方とLCA・Scope3対策まで解説

目次

原材料費やエネルギーコストの高騰、人材確保の困難など、工場運営のコスト削減や省人化に課題を抱えている企業は多いのではないでしょうか。今回は工場自動化による省人化・ロボット化・DXなどはどのように進めたら良いのか、さらに環境対応としてLCA・Scope3対策を工場自動化によってどう実現するかを解説します。

工場自動化の定義

工場自動化の定義

工場自動化とは、人が行っていた作業を機械・ロボット・システムに置き換え、生産工程の効率化や最適化をする取り組みです。

省人化と同じ文脈で語られることがありますが、省人化が必要な人員を減らすのに対して、工場自動化は作業そのものを機械化しプロセス変革をするという違いがあります。順番としては工場自動化を行った結果、省人化が達成できるという流れです。

また、工場自動化=無人化ではありません。工場自動化は一部人手を残した段階的な自動化も含み、人と機械の協働が現在の工場の主流です。

さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)も効率化や最適化と同じニュアンスで語られることがありますが、これは間違いです。DXとは「デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革すること」とされています。つまり、工場全体・経営レベルの変革を意味するため、単なる効率化にとどまらず、ビジネスモデルや組織の変革にまで踏み込む点がDXの本質とされています。

関連コラム:DXとは?なぜDXが必要なのか?デジタル化やIT化との違いもわかりやすく解説

なぜ今、自動化が求められるのか

なぜ今、自動化が求められるのか

工場自動化が求められる背景には人手不足やコスト高騰、脱炭素・ESG対応の必要性があります。それぞれ解説します。

人手不足

製造業では、熟練工の高齢化や若手人材の不足が深刻化しています。そのため国も「人手不足を補うための自動化・ロボット導入」を強く推進しています。

参考:経済産業省『地域の人手不足解消に向けて「全国ロボット・地域連携ネットワーク(略称RINGプロジェクト)」を設立します』

コスト高騰

近年は、人件費の上昇や電力価格の上昇、原材料費の高騰が重なり、製造コストが増大しています。自動化により、作業効率向上やロス削減、24時間稼働等による稼働率向上が可能になります。

脱炭素・ESG対応の必要性

国は、2050年カーボンニュートラル※1 の実現を掲げており、工場等の産業部門の排出削減が求められています。自動化すると、無駄な稼働を削減することでのエネルギー効率向上やIoTによるエネルギー使用を最適化、不良品削減による廃棄ロス削減など、脱炭素につながります。また、ESG投資※2 の観点でも、「環境に配慮した生産体制」が企業評価に直結するようになっています。

※1 2050年カーボンニュートラル:CO2排出量を2050年までに実質ゼロにするという日本政府が掲げた目標

※2 ESG投資:企業の「環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」への取り組みを評価して行う投資手法

関連コラム:ESGとは?意味・評価軸・企業対応の基本を解説

工場自動化でできること

工場自動化でできること

一言に自動化といっても工場業務には幅広い領域があります。領域別にどのような自動化ができるのか、さらに自動化によって何が実現できるのかを解説します。

製造工程の自動化

製造工程を自動化することで、組立作業のロボット化や加工の自動化、24時間稼働ラインの構築、ロボットと人との分業が可能になります。これらによって、リードタイムが短縮し生産効率の向上、品質の均一化、人手不足の補完が実現します。ロボットによる熟練技能の再現も技術継承者が減少している現場にとっては重要です。

搬送・物流の自動化

工場内外の物流を自動化することで、無人搬送、自動倉庫による保管管理、ピッキング作業の自動化、入出庫のデジタル管理が可能になります。これらによって、人手不足の解消、誤出荷や誤搬送などのミス削減、在庫の最適化が実現します。製造より物流がボトルネックになっている工場も多く、自動化において重要度が高い領域です。

検査・品質管理の自動化

品質管理を自動化することで、画像認識やAIによる外観検査、寸法測定の自動化、不良品検知・自動排除、トレーサビリティの確保が可能になります。これらによって、人による検査のばらつき解消、検査精度の向上、品質データの蓄積・活用が実現します。品質データの蓄積はDXの基盤ともされており、重要度が増しています。

管理業務の自動化

管理領域を自動化することで、生産データのリアルタイム収集、設備稼働状況の可視化、エネルギー使用量の管理、原価・在庫・品質データの統合が可能になります。これらによって、これまで勘に頼っていた意思決定をデータ根拠にすることでの高度化、異常の早期検知、生産計画の最適化が実現します。

LCA(ライフサイクルアセスメント)の実施

LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスの生まれてから廃棄されるまでの環境負荷を定量的に評価する手法です。原材料の調達、製造、輸送、使用、廃棄・リサイクルといったライフサイクル全体を対象に、CO2排出量や環境負荷を算出します。近年は、カーボンニュートラルやESG投資、サプライチェーン規制の影響で、製品単位での環境情報開示が求められており、環境省もLCAの導入を推進しています。

LCAを実施するには、エネルギー使用量、生産データ、原材料データなどの詳細なデータが必要であるため、工場のデータ蓄積が前提条件になります。

参考:環境省『再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン』

工場自動化のメリット

工場自動化のメリット

工場自動化によるメリットには効率化・最適化に寄与するものに加え、脱炭素経営につながるという側面もあります。それぞれ解説します。

人手不足解消

工場自動化によって、人手に依存しない生産体制、熟練者不足への対応、夜間・休日の稼働が可能になります。これまでは人が足りなければ稼働できませんでしたが、工場自動化により工場の安定稼働が叶います。

生産性向上

工場自動化によって、作業スピードの向上、24時間稼働、作業の標準化が実現できるため、同じ人員でも生産量を大幅に増やせます。

品質の均一化

工場自動化によって、人手作業では必ず発生する品質のばらつきを抑制できます。

安全性向上

危険な作業を人から機械に置き換えることで、労働災害を減らせます。

CO2排出量の可視化・削減が可能

工場自動化によって、CO2排出量の可視化・削減が可能になります。国が推進している脱炭素経営の基盤となります。

工場自動化のデメリット

工場自動化のデメリット

工場自動化のデメリットには費用や運用面、人材に関連する側面が挙げられます。それぞれ解説します。

初期投資が高い

自動化設備は高額になるケースが多く、中小企業にとっては負担が大きいです。国の補助金等を活用し、スモールスタートで段階的に導入をする等の工夫が必要になります。

導入・運用の難易度

導入を決めても、システム設計の難しさや現在の現場との適合、保守・運用の専門人材不足によって運用がうまくいかないというケースもあります。どのようにデジタル人材を確保するかが鍵となります。

現場の抵抗感

工場自動化によって仕事がなくなるのではという恐れを従業員が抱き、導入に強い反発を受けることもあります。また、新しい技術への不慣れや既存の現場ノウハウとの衝突によって導入が進まないリスクもあります。現場巻き込み型の導入や教育・リスキリング、人と機械の役割分担の明確化をすることが重要です。

工場自動化の進め方【5ステップ】

工場自動化の進め方【5ステップ】

工場の自動化には大きく分けて5ステップあります。重要なポイントとしてはいきなり全体導入せずに小規模から始めることです。それぞれのステップを解説します。

1.現状分析(ボトルネックの特定)

まずはボトルネック工程や人手依存が大きい工程、不良が多い工程を洗い出すために、データを洗い出して現状分析します。工数、稼働率、不良率、エネルギー使用量といった指標別にデータを収集し算出します。方法としては、IoTでのデータ取得(後付けセンサーでも可)と現場ヒアリングを併用し、数値ベースで判断することが重要です。

2.自動化対象の選定

現状分析をもとに、どこを自動化するか対象を決めます。効果が出やすい領域から段階導入することでつまずきを抑えられるため、単純作業や反復作業でかつ人手依存が高い工程などを中心に検討しましょう。逆に、作業が不安定でばらつきが大きい工程や、複雑な判断が求められ人の経験依存が大きい工程は、最初は避けた方が良いです。

3.技術選定

工場で導入されることが多い自動化技術として、ロボット、センサー・IoT、AIがあります。

ロボットは人と同じ空間で作業可能で、柔軟なライン構築に組み込める協働ロボットが主流です。

センサー・IoTは自動化に欠かせないデータ収集を担う技術として必須です。稼働状況のリアルタイム取得や異常検知・予知保全を行います。

AIは画像検査に使われるケースが多いです。外観検査の自動化や微細な不良検出を行います。

4.小規模導入(PoC)

いきなり全体導入をするのではなく、PoCを行います。PoC(Proof of Concept:概念実証)とは、小規模で試して効果を検証することです。投資リスクの低減や技術の適合性確認、現場との相性確認を行うことができ、ここで得た知見をもとに横展開をするのが理想です。PoCを行う上では、一工程に絞る、工数削減率などの明確なKPIを定める、短期間で検証することがポイントです。

5.本格展開・運用改善

PoCの内容をもとに全体に本格展開を行います。導入後はデータを活用した継続的な改善が必要です。生産データ分析、不良原因の特定、エネルギー最適化などが挙げられます。全体導入しLCAへの対応ができるようになれば、脱炭素へもつながっていきます。

なぜ工場自動化が脱炭素に繋がるのか

なぜ工場自動化が脱炭素に繋がるのか

工場自動化による効率化や最適化は脱炭素にもつながります。制御システムによる自動運転やデータに基づく最適化は、CO2削減に直接的に寄与します。工場自動化が脱炭素に繋がる理由を解説します。

エネルギー使用の最適化

国は「省エネルギーの徹底とエネルギー効率の向上」をGX実現の重要施策としています。工場を自動化するに際して、IoTセンサーや制御システムを導入することで、エネルギーの「見える化」と「制御」が可能になり、省エネルギーや効率がアップしエネルギー使用の最適化につながります。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁『更なる省エネ・非化石転換・DRの促進に向けた政策について』

廃棄ロス削減

国はサーキュラーエコノミーも重視しています。サーキュラーエコノミーとは、資源を効率的に循環させ、持続可能な社会をつくるとともに経済的な成長もめざす「経済システム」のことです。サーキュラーエコノミーの視点から、廃棄物削減、原材料使用量削減、製造時の環境負荷低減などの、作りすぎ・無駄をなくすことで脱炭素に貢献できます。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁『成長志向の資源循環経済システム「サーキュラーエコノミー」(前編)どんな課題を解決するの?』

データ取得による改善

CO2排出量やエネルギー消費量等のデータ取得により、データに基づくエネルギー管理が可能になり、結果として脱炭素につながります。

カーボンマネジメントが可能になる

カーボンマネジメントとは、企業がCO2排出量を管理・削減・報告する仕組みです。見える化→削減→開示という流れですが、そもそも見える化するにあたってはデータ収集と分析が不可欠です。さらに、削減に当たっては、設備効率の改善や再エネ導入、生産プロセスの最適化が求められます。こうした取り組みを高度化する手段として、自動化の導入が重要になります。自動化とカーボンマネジメントは密接に関係しているのです。

建屋・設備・建材のライフサイクルアセスメント(LCA)とは

建屋・設備・建材のライフサイクルアセスメント(LCA)とは

工場を建設するに当たっては建材・設備・建築の三要素が必要ですが、この三要素は排出量が大きいため、ここに関するLCAは企業の排出量管理において非常に重要です。どのような捉え方が必要か解説します。

LCAの基本(原材料〜廃棄までの評価)

LCA(ライフサイクルアセスメント)では、製品や建築物などの環境負荷をライフサイクル全体で評価します。

具体的には

1.原材料の採取(資源採掘)
2.製造・加工
3.輸送・施工
4.使用・運用
5.廃棄・リサイクル

これら全ての工程が対象となります。

例えば、建材のライフサイクルを見た場合、建材製造時のCO2だけでなく、輸送・施工・廃棄時にも排出があります。一部だけでは正しい環境負荷が把握できないため、LCAが必要なのです。

建屋・設備・建材におけるLCAの対象範囲

建屋・設備・建材それぞれに関して、どのような要素がLCAの対象になるのか解説します。

・建屋

工場設備においては、工場の建物そのものが大きな排出源となります。建設時における資材製造・施工、運用時の空調・照明・電力、最後に解体時の廃棄・リサイクルがLCAの対象となります。

・設備機器(機械・ライン)

設備機器では、機械の製造時、使用時、更新・廃棄時がLCAの対象となります。エネルギー消費の大部分が使用時であるのが設備機器の特徴です。また、高効率設備への更新で大きく削減可能なので、適切な更新計画を立てる必要があります。

・建材(鉄・コンクリート等)

建材は製造段階のCO2排出が非常に大きい分野です。代表的なものとして鉄鋼(高炉・電炉)、セメント(コンクリート)、アルミニウムなどがあり、特に脱炭素化が難しい「ハードトゥアベイト分野」とされています。そもそもどの建材を選ぶかが脱炭素化の鍵となります。

工場自動化によって実現できる高精度なLCAとは

工場自動化によって実現できる高精度なLCAとは

工場自動化によって精度の高いLCAが実現します。具体的にどのような効果があるのか解説します。

設備に関する環境負荷評価

精密制御や最適運転等の自動化により、LCAでいうところの「使用段階」の排出削減効果を最大化します。

また、使用段階の排出量削減に大きな影響があるのが設備更新です。設備更新の際に考えるべきは、古い設備と新設備を比較してエネルギー効率がどうかという点です。高効率設備への更新を行えば、新設備の製造によってCO2は一時的に増えますが、使用時の省エネ効果は高くなります。つまり、多くの場合に高効率設備は中長期でCO2削減効果が上回りますが、稼働時間が短かったりそもそも古い設備と比較して効果が小さい場合はCO2削減効果が下回る場合があるので注意が必要です。

データ取得によるLCA精度向上

LCAを実施する上で重要なのが「データ精度」です。従来は平均値・係数ベースの推計だったため、実態とズレる可能性が高くなっていました。データ集計をIoT導入により自動化すれば、リアルタイムでの実測データ取得、工程別・設備別の細分化、製品単位の排出量算出が可能になり、正確なLCAができるようになります。

建材・設備選定の最適化

建材・設備は、導入時点で環境負荷の大部分が決まります。建材であれば低炭素コンクリートやグリーンスチール、設備であれば高効率モーターやインバータ制御機器など、環境負荷が低いものをそもそも選ぶようにするのがCO2削減に効果的です。さらに、AI等と連携した自動化を行えば、材料使用量の最適化や加工精度向上、設備選定のデータ化が可能になります。

工場自動化によるScope3対策

工場自動化によるScope3対策

Scope1・2・3に分類される温室効果ガス排出量(主にCO2)の削減も、近年企業に求められる重要な取り組みとなっています。Scope1・2・3の違い、工場自動化によってScope3の排出量をどうやって削減できるのかを解説します。

Scope1・2・3の違い

環境省は、温室効果ガス(GHG)排出量を以下の3つに分類しています。

Scope1(直接排出)

・自社での燃料使用
・工場のボイラー・燃焼設備

自社が直接出すCO2などと捉えましょう。

Scope2(間接排出:電力)

・購入電力の使用

電力会社経由の排出と捉えましょう。

Scope3(その他間接排出)

・原材料調達
・輸送
・製品使用
・廃棄

上記が主な対象です。Scope3は、自社の事業活動に関連するサプライチェーン全体(原材料調達・輸送・製品使用・廃棄など)で発生する温室効果ガス(GHG)排出と捉えましょう。LCAとScope3で扱う項目はほぼ同じです。ただし、LCAが製品単位の環境負荷を測定するのに対し、Scope3は企業単位の排出量で捉えます。

製造業におけるScope3の重要性

製造業では、Scope3の比率が非常に大きいです。原材料の製造で大量排出しますし、製品使用時のエネルギー消費や輸送・物流の排出など膨大な範囲に及びます。企業によってはScope3が排出量全体の70〜90%を占めるケースもあるようです。そのため、Scope3の排出量削減に注力することが、企業全体の排出量削減に直結します。

関連コラム:Scope3(スコープ3)とは?サプライチェーンのGHG排出量の算定方法や15のカテゴリ、注意点を解説

自動化がScope3削減に寄与する領域

原材料調達においては、材料ロスや過剰発注、歩留まりの低さといった課題がありますが、自動化により精密加工やデータに基づく発注が可能となり、材料使用量や廃棄の削減につながります。

輸送・物流の領域では、無駄な輸送や積載率の低さ、在庫過多といった課題がありますが、自動化によって需要と連動した生産や在庫最適化が進み、輸送効率の向上が期待されます。

また、製品使用段階ではエネルギー消費が大きな排出要因となりますが、制御技術の高度化や運転最適化によりエネルギー効率の改善が可能となります。

これらの取り組みは、サプライチェーン全体の最適化を通じて、GHG排出量の削減に寄与します。

工場自動化は脱炭素と紐付けるべし

工場自動化は脱炭素と紐付けるべし

工場自動化は生産工程の効率化や最適化という目的で始めるケースが多いかもしれませんが、国が推進する脱炭素政策を意識することで経営・環境戦略へ昇華します。特に、LCAやScope3のGHG排出量削減と連動させることで、ESGの側面での投資価値が最大化するため、環境に配慮した高い視座を持って工場自動化に取り組むことが重要です。

GREEN CROSS PARKのDX

GREEN CROSS PARKのGX

東急不動産が展開する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、企業活動と環境配慮を両立しながら、DXを前提とした次世代型の産業まちづくりプロジェクトです。再生可能エネルギーの活用やエネルギーマネジメント、データ基盤の整備に加え、高速通信インフラの先行整備も視野に入れることで、データ活用を軸とした持続可能かつ高効率な生産環境の実現を目指しています。

これらの取り組みは、工場自動化やスマートファクトリー化とも親和性が高く、エネルギー使用の最適化やCO2排出量の可視化、設備稼働データの一元管理など、DXによる高度な運用を支える基盤となります。こうしたデジタル基盤の整備を通じて、次世代の産業環境の構築に向けたプロジェクトが進められています

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