自動運転トラックが高速道路を走り、ドローンが地域に荷物を届ける。かつてSFだった風景が、いま現実味を帯びて動き出している。ただし、物流のすべてが一遍に自動化されるわけではない。技術ごとに得意な領域は違い、担うべき役割も異なる。東急不動産が推進する「GREEN CROSS PARK(GXP)」では、こうした先端技術を実際の産業拠点でどう使い分け、どう組み合わせれば企業にとって実用的な価値になるのかを具体的に探っている。業務連携を担当する中島大誠氏に次世代物流の実装イメージを聞いた。
| 中島 大誠 東急不動産株式会社 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部 事業開発部 新規開発グループ 2023年、東急不動産入社後から現在までインダストリー事業に従事。物流用地取得業務と、基幹産業拠点の付加価値創出業務を担当。 |
幹線輸送の主役となるT2社の自動運転トラック

——T2社(株式会社T2)との連携で進めている自動運転トラックについて教えてください。
いま私たちが特に注力しているのは、自動運転レベル4※1 のトラックによる幹線輸送の自動化です。長距離ドライバー不足は非常に深刻で、物流の大動脈である主要ルートを将来どう支えるのかは、個社の課題というより、日本全体の産業基盤に関わるテーマだと考えています。
※1 自動運転レベル4: 特定のエリアや条件に限り、すべての運転操作をシステムが担い、人が操作しなくても走行できる自動運転の段階。日本では2023年4月から「特定自動運行」の制度が始まり、公道での無人走行が可能となった。
その点で、高速道路は自動運転との相性が非常に良い環境です。歩行者がいない、信号が少ない、一般道に比べて状況が整理されている。もちろん技術的なハードルはありますが、幹線と支線で比較した時にまず自動化が進みやすいのは、幹線輸送の領域だと見ています。物流拠点から物流拠点へとトラックが自動で走れるようになれば、輸送効率は大きく変わりますし、人手不足に対する有力な打ち手にもなり得ます。
T2さんとは、単に「一緒にやりましょう」というレベルではなく、かなり具体的な議論をしています。次にどのあたりに切り替え拠点が必要なのか、インターチェンジから一般道に降りた後、どのような道路条件なら自動運転しやすいのか、どんな立地であれば無理なくネットワークを延ばせるのか。そんなところまで踏み込んで話をしています。
現在想定されているオペレーションでは、有人区間と無人区間を切り替える拠点が必要です。ただ、将来的に高速道路から直接施設へアクセスできるような設計が可能になれば、その切り替えオペレーションはさらに効率化できるかもしれません。GXPは、単なる物流施設ではなく、自動運転ネットワークの結節点になり得るポテンシャルを持っていると考えています。
チューリング社が担うのは「一般車両の自動運転」という別の領域

——一方で、チューリング社(チューリング株式会社)との連携はT2社とは性格が違うのでしょうか。
かなり異なります。T2さんが取り組んでいるのは、幹線輸送を担う大型トラックの自動運転です。それに対してチューリングさんが目指しているのは、自動運転レベル5※2 の完全自動運転です。乗用車など一般車両が対象で、想定する道路環境も違います。高速道路中心の大型トラックと、一般道を含む日常的な車両では、技術の難しさもアプローチも変わってきます。
※2 自動運転レベル5:あらゆる道路・天候条件下でシステムが全ての運転操作を行う「完全自動運転」の最高段階のこと。日本では、2026年現在では未実用化の技術。
ただ、だからこそ両方に意味があります。幹線輸送が自動化されても、その先にはまだ課題が残ります。物流施設からその先の短距離輸送、拠点内の移動、さらには地域のラストワンマイル※3 など、幹線トラックだけではカバーできない領域があるからです。チューリングさんのような一般車両の自動運転技術が実用化されれば、将来的には軽トラックや小型車両への応用も視野に入ってきます。もしくは、産業団地のなかで工場から倉庫へ荷物を運ぶ、あるいは敷地内で人や物を移動させるといった用途にまで可能性が広がっていきます。
※3 ラストワンマイル:物流の最終拠点から消費者(エンドユーザー)の自宅や店舗へ荷物を届ける「最後の配送区間」のこと。
つまり、T2さんが担うのは「幹線輸送の自動化」であり、チューリングさんが見据えているのは「一般車両の自動運転」です。どちらも自動運転ではありますが、カバーするレイヤーが違う。ここを混同せず、それぞれの技術の役割を整理したうえで、どう組み合わせれば全体最適につながるかを考えることが大切だと思っています。
ドローンは「それらでカバーできない領域」を補う技術

——今年1月には、埼玉県蓮田市で物流ドローンの配送実証実験を行われていましたが、ドローンはどういった位置付けになりますか。
ドローンもまた、T2さんやチューリングさんとは違う役割を持つ技術だと考えています。ドローンが真価を発揮するのは、トラックを走らせるにはコストが合わない場所や、道路条件の制約が大きい場所です。典型的には、中山間地域や人口密度の低い地域です。そうした場所では、トラック一台を走らせるだけで採算が合わなくなることがあります。そこに対して、空から荷物を届けるという選択肢には一定の合理性があります。
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