企業の立地判断はどう変わるのか──脱炭素時代のエネルギー戦略とオーダーメイド型産業団地

企業の立地判断はどう変わるのか──脱炭素時代のエネルギー戦略とオーダーメイド型産業団地

脱炭素への対応、サプライチェーンの強靭化、エネルギーの安定供給——企業の拠点は、中長期戦略に直結する重要な要素となっている。岩手県金ケ崎町の約45haの面積で進む「岩手中部工業団地南エリア開発事業(岩手県金ケ崎プロジェクト)」は、こうした新しい立地評価軸を前提に設計された産業まちづくり事業でもある。プロジェクトを担当する吉岡紳太郎氏に、エネルギー戦略の重要性や企業の立地判断の変化について話を聞いた。

吉岡 紳太郎
東急不動産株式会社 産業共創事業ユニット インダストリー事業本部開発企画部 産業まちづくりグループ(物流・産業団地) 
2019年、電力会社へ新卒入社。送変電設備用地の取得、自社所有不動産の活用業務等に従事。2024年10月、東急不動産へキャリア入社。以降、産業まちづくり事業に従事。

防災拠点としての産業団地

防災拠点としての産業団地

——このプロジェクトでは「レジリエンス」も重要なキーワードになっています。

企業にとって大きな課題の一つが、災害時でも事業を継続できる体制をどう確保するかという点です。

近年は地震や豪雨などの自然災害が増えていますし、サプライチェーンの寸断が企業活動に大きな影響を与えるケースも増えています。そのため、「GREEN CROSS PARK(GXP)」では、産業団地そのものが地域の防災拠点として機能することも意識しています。

特に重要なのがエネルギーです。災害時に電力が止まってしまえば、工場の生産ラインはもちろん、物流機能やデータシステムも停止してしまいます。

そこで、再生可能エネルギーの電源や蓄電池等を組み合わせることで、平常時だけでなく非常時にも一定のエネルギー供給が可能な仕組みを検討しています。企業のBCP(事業継続計画)の観点から見ても、エネルギーの安定性は非常に重要な要素だと思います。

オンサイトとオフサイトを組み合わせたエネルギー供給

オンサイトとオフサイトを組み合わせたエネルギー供給

——エネルギーという観点では、企業の立地判断は大きく変わってきているのでしょうか。

ここ数年で、企業の立地判断におけるエネルギーの重要性は急速に高まっています。一つの背景としてあるのが、電力不足への懸念です。

日本ではデータセンターの増加や半導体工場の新設などによって、電力需要が今後さらに増加すると言われています。一方で、発電所の老朽化やエネルギー転換の影響もあり、地域によっては電力供給の余力が限られている状況もあります。

つまり、企業にとっては「電気が安いかどうか」と同時に「安定して確保できるかどうか」が、重要な判断軸になってきているのです。これは製造業だけでなく、データセンターなど電力消費の大きい産業でも同じです。今後はエネルギーの確保が、企業の立地戦略そのものに大きく関わってくると思います。

——今回のプロジェクトでは、再生可能エネルギーの活用も特徴の一つです

この産業団地では、自社の再生可能エネルギー事業を活かして、オンサイトとオフサイト※1 の再エネを組み合わせたエネルギー供給を前提とした設計を進めています。

※1 オンサイトとオフサイト:オンサイトとは、電力を使う場所の敷地内や近接地に設置した太陽光発電などによって電力を供給する仕組みのこと。オフサイトとは、遠隔地の再生可能エネルギー電源と連携して電力を供給する仕組みのこと。

この二つを組み合わせることで、再生可能エネルギーを活用しながら、より安定した電力供給を実現します。再エネというと「不安定」というイメージを持たれることもありますが、電源の組み合わせや供給体制を工夫することで、企業が安心して利用できるエネルギーインフラを構築できると考えています。

オーダーメイド型の産業団地とは

オーダーメイド型産業プランを推進

——金ケ崎という立地の強みはどこにあるのでしょうか。

すでに産業が集積している地域だという点です。約312haにおよぶ「岩手中部工業団地」には、大手自動車メーカーや半導体メーカー、自動車部品メーカーなどの企業が立地しています。

こうした企業の存在は、サプライチェーンの観点から見ても非常に魅力的です。例えば部品メーカーや関連企業が近くに立地すれば、物流コストやリードタイムの短縮につながります。

また、企業同士の技術交流や人材交流といった形で、新しい価値が生まれる可能性もあります。そうした企業間の橋渡し役としても機能していきたいですね。

——現在、予定されている団地の区分はどうなっているのですか。

大きく分けると、約45haの総面積の中で、企業用地としては約20haの街区と約5haの街区、そして約1haの街区の3エリアに分かれています。市場調査もこれからなので、明確なことはいえませんが、それぞれの街区を丸ごと使うことも、またはいくつかに分けてご活用いただくこともできます。これを、「オーダーメイド型」と表現することもあるのですが、お使いいただく企業に柔軟に対応できる点も、一つの強みだと思っています。

10年、20年先を見据えた拠点戦略

10年、20年先を見据えた拠点戦略

——企業の立地評価はどのように変わってきているのでしょうか

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