再生可能エネルギーを活用しながら電力の需給バランスを自動で管理調整できる「スマートグリッド」が注目されています。普及しつつある再生可能エネルギーですが、既存の電力にはない課題があり、それらの課題を解消しつつ有効活用するためにはIT技術、AI技術等を活用したスマートグリッドが欠かせません。今回は、スマートグリッドとは何か、従来の電力網との違い、仕組み、導入のメリット等について解説します。
スマートグリッドとは

スマートグリッドとは、ICT(情報通信技術)※1 を活用して電力の需給状況をリアルタイムに把握し、発電・送電・配電・消費を最適制御する次世代の電力ネットワークです。
※1 ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術):コンピューターやインターネットなどを活用して、情報の収集・加工・保存・共有・伝達を行う技術の総称
従来の電力システムでは、発電所で作られた電気が送電網を通じて家庭や企業へ供給される仕組みが一般的でした。しかし、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの普及により、電力消費者が消費するだけではなく発電設備を使って自前で発電するケースが増加しています。こうした環境変化に対応するために登場したのがスマートグリッドです。
スマートグリッドの大きな特徴の一つは、電力の使用状況をスマートメーターの活用によりリアルタイムで「見える化」することです。従来は、月に1回の検針によって電力使用量を確認するのが一般的でした。しかしスマートメーターでは、30分ごとに消費電力量を計測し、オンライン上で送配電事業者へ自動送信できます。
二つ目の特徴は、収集したデータを活用し、自動で最適な制御を行うことです。蓄電池への充放電制御やEV充電の最適化、電力需要ピーク時の負荷分散、再生可能エネルギーの出力変動への対応などを自動的に実施できます。
スマートグリッドと従来の電力網との違い

スマートグリッドと従来の電力網にはどのような違いがあるのでしょうか。重要なキーワードとしては双方向、リアルタイムが挙げられます。具体的に解説します。
双方向の電力供給
従来の電力網は、大規模発電所から需要家へ向けて電気を送る「一方向型」の構造でした。発電所→送電線→変電所→家庭・工場という流れです。電力会社が需要を予測し、それに合わせて発電量を調整することで需給バランスを維持していました。
しかし近年は、太陽光発電や風力発電、家庭用蓄電池、EV※2 などの分散型エネルギーが普及しています。太陽光発電を設置した住宅では、昼間に蓄電して余った電力を電力系統へ逆送するという双方向型の電力供給を行っていることもよくあります。つまり消費者が発電者にもなり得るため、従来の一方向型電力網では運用が難しくなっています。
※2 EV(Electric Vehicle:電気自動車):ガソリンや軽油ではなく、電気をエネルギー源としてモーターで走行する自動車
双方向の情報管理
スマートグリッドでは電力だけでなく、情報も双方向でやり取りされます。家庭や企業のスマートメーターから電力使用データが送信され、その情報をもとに電力会社が需給調整を行います。また、太陽光発電設備や蓄電池、EVからも発電量や蓄電状況などのデータが収集されるため、地域全体の電力需給をより高精度に管理できるようになります。
リアルタイム制御
スマートグリッド最大の特徴は、リアルタイム制御にあります。従来の電力網では、電力会社の需要予測に基づき発電設備を運転していました。しかし太陽光発電や風力発電は天候によって出力が大きく変動するため、従来の方法だけでは安定供給が難しくなります。そこでスマートグリッドでは、電力需要の監視、発電量の監視、蓄電池制御、EV充電制御、デマンドレスポンス※3 を即時実施しています。例えば猛暑日に電力需要が急増した場合、蓄電池から放電したり、一部設備の消費電力を抑制したりすることで、電力不足を未然に防ぐといったイメージです。
※3 デマンドレスポンス:電力会社からの要請や電力価格の変動に応じて、利用者が電力使用量を調整する仕組み
なぜスマートグリッドが必要なのか

スマートグリッドは再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の高度化を支える重要な仕組みとして注目されています。国のエネルギー政策でも、再エネの主力電源化や需要側の調整力活用が重視されており、スマートグリッドに関連する技術や制度の重要性が高まっています。また、電力需要の多様化もスマートグリッドが求められる背景にあります。なぜスマートグリッドが必要なのか詳しく解説します。
再生可能エネルギーの普及
日本では2050年カーボンニュートラル※4 の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大が進められています。資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーは脱炭素電源の主力として位置付けられており、2040年度の電源構成では発電量全体の4〜5割を再エネで賄うことが目標とされています。
※4 2050年カーボンニュートラル:2020年に日本政府が宣言した、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロを目指す取り組み
参考:経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー基本計画の概要 令和7年2月』
特に太陽光発電と風力発電は導入拡大が進んでいます。太陽光発電は住宅や工場、商業施設など幅広い場所に設置でき、風力発電は洋上風力を中心に大規模開発ができます。
しかし、これらの再生可能エネルギーには共通の弱点があります。従来の火力発電や原子力発電は発電量を比較的安定して調整できますが、太陽光発電や風力発電は自然条件によって出力が変動します。例えば、太陽光発電であれば曇天や雨天になると発電量が低下しますし、もちろん夜間は発電できません。風力発電は風が弱い日は発電量が減少します。電力は需要と供給を常に一致させる必要がありますが、発電量の変動が大きい再生可能エネルギーは電力系統の運用が難しくなります。
そこで必要になるのがスマートグリッドです。前述したように、スマートグリッドでは、電力需要の監視、発電量の監視、蓄電池制御、EV充電制御、デマンドレスポンスをリアルタイムで実施することができます。そのため、太陽光発電が余っている昼間に蓄電池へ充電したり発電量が不足する夕方に蓄電池から放電する、電力需要の高い時間帯に需要抑制を行うといった制御が可能になります。再生可能エネルギーの普及を支えるインフラとして、スマートグリッドは不可欠な存在なのです。
電力需要の多様化
電力需要が多様化し、消費電力が増えていることもスマートグリッドの普及を後押ししています。特に大きな要素は3つあります。
まず一つ目はEVの台頭です。近年、脱炭素化を背景としてEVの普及が進んでいます。しかし普及が進むと、充電需要が電力系統へ大きな影響を与える可能性があります。例えば、多数のEVが帰宅後の同じ時間帯に一斉充電を行うと、地域の電力需要が急増する等です。そのため、充電時間の最適化や電力料金による需要誘導、EV蓄電池の活用(V2G)などが必要となり、そのためにスマートグリッドが求められます。
二つ目はデータセンター※5 の電力需要増加です。近年は生成AIやクラウドサービスの普及により、データセンターの消費電力が急増しています。データセンターは24時間365日稼働するため、安定した電力供給や非常時のバックアップ電源、電力コストの最適化が欠かせません。スマートグリッドによる需給管理は、データセンターの電力利用効率向上にも貢献します。
※5 データセンター:企業や組織のサーバーやネットワーク機器を設置し、データの保存・処理・管理を行うための専用施設
三つ目が、製造業における脱炭素化に向けた設備の電化です。これまで化石燃料を利用していた設備が、電気ボイラーやヒートポンプ、電気炉などへ置き換わることで、工場全体の電力需要は増加傾向にあります。工場では大量の電力を使用するため、電力需給の監視やピーク制御を行うスマートグリッドが重要になります。
脱炭素社会の実現
2050年カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーの拡大、エネルギー利用の効率化、電化の推進が不可欠です。スマートグリッドは再エネの主力電源化と電力システム改革を支える技術です。
スマートグリッドの仕組み

スマートグリッドはどのような仕組みの電力網なのでしょうか。4つの代表的な要素について解説します。
スマートメーターで遠隔検針
スマートメーターは、従来の電力量計に通信機能を搭載した次世代型メーターです。従来のアナログメーターでは、電力会社の検針員が毎月現地を訪問して使用量を確認していましたが、スマートメーターでは30分ごとなどの細かな単位で電力使用量を計測し、自動的にデータを送信するため遠隔検針が可能です。検針員による現地訪問が不要となるため、検針業務の効率化、人件費削減、検針ミスの防止につながります。また、契約変更や電気の開閉作業も遠隔で実施でき、電力事業者と利用者双方の利便性向上に貢献します。
通信ネットワーク上での電力データ収集
スマートグリッドでは、電気だけでなく情報も収集します。電力使用量や発電量、蓄電池残量、電圧情報、系統負荷情報等のデータがリアルタイムで集約されることで、電力系統全体の状況を把握できるようになります。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)でエネルギー利用を最適化
収集した電力データはEMS(Energy Management System)※6 で分析し、エネルギー利用を最適化します。EMSの重要な機能として、電力需要予測、自動制御、需給調整の3つがあります。
※6 EMS(Energy Management System):電力やガスなどのエネルギー使用状況を見える化し、最適に管理・制御するシステム
電力需要予測は過去の電力使用実績や気象情報などを分析し、将来の電力需要を予測する機能です。例えば、気温上昇による冷房需要増加、平日・休日による需要変化、生産計画に応じた工場負荷などを予測できます。これにより、必要な電力を事前に確保しつつ、無駄な発電を抑制できます。
自動制御は収集したデータをもとに設備を自動制御する機能です。例えば、空調設備の出力調整、照明の自動制御、蓄電池の充放電制御、EV充電の時間調整などが挙げられます。ユーザー側で何もしなくても設備が調整されるのがポイントです。
需給調整は、電力需要と供給のバランスを維持する機能です。例えば、電力需要が増加した場合は蓄電池から放電し、電力需要が少ない場合は蓄電池へ充電するといった制御を自動で行います。さらに、需要家側の電力使用を調整するデマンドレスポンスとも連携し、電力系統全体の安定化に貢献します。
蓄電池との連携
需給によって電力を調整するのに欠かせないのが、余剰電力を貯蔵し、必要なタイミングで利用できる蓄電池です。蓄電池があれば、電力需要が集中する時間帯を避けて電力利用を分散させるピークシフトが可能になります。また、蓄電池は災害時の非常用電源としても活用可能です。日本では地震や台風などによる停電リスクがあるため、家庭用蓄電池や事業用蓄電池、EVのバッテリーの活用はレジリエンス強化※7 に役立ちます。
※7 レジリエンス強化:災害や事故、システム障害などの予期せぬ事態が発生しても、被害を最小限に抑え、迅速に復旧できる能力(レジリエンス)を高めること
スマートグリッドを構成する主な技術

スマートグリッドはAI、IoTセンサーなどの先端技術に支えられています。主な技術を4点紹介します。
AIによる需給予測
電力は大量に貯蔵することが難しく、「必要な時に必要な量を供給する」ことが求められます。そのため電力会社やエネルギー事業者は、将来の電力需要を高精度で予測する必要があります。
従来は過去の使用実績や気象データをもとに需要予測を行っていましたが、近年はAIの活用が進んでいます。AIが過去の電力使用データ、気温や湿度、曜日や季節要因、イベント情報など大量のデータを分析することで、需要予測の精度が向上しました。
さらに、AIは太陽光発電や風力発電の供給予測にも利用されています。太陽光や風力は天候によって発電量が変動するため、AIを活用した予測技術が供給安定の鍵となっています。例えば、日射量予測による太陽光発電量予測や風の状況予測による風力発電量予測などが挙げられます。
IoTセンサー
IoT(Internet of Things)は、さまざまな設備や機器をインターネットにつなぎ、データを収集・活用する技術です。スマートグリッドでは、IoTセンサーが電力設備の状態をリアルタイムで監視しています。主な監視対象は、変電設備や送配電設備、太陽光発電設備、風力発電設備、蓄電池、EV充電設備などです。IoTセンサーによって、電力の需給状況をリアルタイムで把握できるのはもちろん、電圧異常や温度上昇、設備故障、電力品質の低下などのトラブルを早期に発見できます。
クラウド管理システム
スマートグリッドでは、全国のスマートメーターや発電設備から膨大なデータが収集されるため、従来のオンプレミス環境だけでは処理が難しくなっています。そこで活用されているのがクラウド管理システムです。クラウドを利用することで、電力使用量や発電量、蓄電池残量、系統情報などを一元管理でき、AIによる需要予測や設備制御、電力取引、デマンドレスポンスなどを効率的に実施できます。
VPP(仮想発電所)
VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)とは、複数の分散型エネルギー資源をまとめて制御し、あたかも一つの発電所のように運用する仕組みです。太陽光発電や家庭用蓄電池、産業用蓄電池、EV、自家発電設備などをICTで統合制御しVPPで運用することで、電力不足時は放電、電力余剰時は充電を自動的に実施できます。
スマートグリッド導入のメリット

スマートグリッドを導入することで、コスト面やエネルギー効率、災害対策など様々なメリットがあります。5つのメリットを解説します。
電力供給の安定化
スマートグリッドの大きなメリットが、電力供給の安定化です。政府が再生可能エネルギーを主力電源として位置付ける一方、再生可能エネルギーは発電量の変動が大きく電力系統の運用が難しいという課題があります。スマートグリッドを導入することで安定した電力供給を実現できます。
エネルギーコスト削減
スマートグリッドは、電力の使用状況をリアルタイムで詳細に把握できるため、無駄なエネルギー消費を削減できる点もメリットです。従来は毎月の検針結果でしか使用量を把握できませんでしたが、スマートメーターでは時間帯ごとの電力使用量を確認でき、リアルタイム制御でのコスト削減を可能にします。
また、工場や物流施設などでは最大需要電力(デマンド値)が電気料金に大きく影響します。スマートグリッドによってピーク時の電力使用を抑制できれば、契約電力を下げられるため、基本料金の削減にもつながります。
再生可能エネルギーの有効活用
スマートグリッドが、発電量のリアルタイム監視や余剰電力の蓄電、EV充電制御、VPPによる需給調整を行うことで、再生可能エネルギーを無駄なく有効活用できます。例えば、昼間に太陽光発電で余った電力を蓄電池へ貯蔵し、夜間に利用することでエネルギーを無駄なく活用できます。
災害時のレジリエンス向上
日本は地震や台風、豪雨など自然災害が多く、大規模停電への備えが重要な課題となっています。スマートグリッドで太陽光発電、蓄電池、非常用発電機、EVなどを組み合わせて運用することで再生可能エネルギーを非常用電源として使用でき災害時のレジリエンスが向上します。
CO2排出量削減
国の施策であるカーボンニュートラルによって、企業活動の現場にもCO2排出量削減への対応が求められています。スマートグリッドを導入することで、再エネ利用率の向上や電力ロスの削減、設備運転の最適化、デマンドレスポンスによる効率化などが実現し、CO2排出量を削減できます。
スマートグリッド導入の課題

スマートグリッドは導入時のコストの高さやセキュリティ対策、標準化など、乗り越えなければいけないハードルがあります。主な課題を3点紹介します。
導入コストが高い
スマートグリッドを構築するためには、前述したスマートメーター、通信ネットワーク、EMS(エネルギーマネジメントシステム)、蓄電池、IoTセンサー、VPP制御システムなどのデジタル技術の導入が必要です。さらに、相互に連携させるためのシステム開発や運用体制の構築にもコストがかかります。補助金や実証事業等、国や自治体の導入支援をうまく活用することが鍵となります。
サイバーセキュリティ対策
スマートグリッドでは、スマートメーターやEMS、発電設備、蓄電池などが通信ネットワークを通じて連携します。電力制御システムは重要インフラに関わるため、不正アクセスやサプライチェーンリスク、データ改ざんなどへの対策が欠かせません。
標準化・制度整備
スマートグリッドは、電力会社や発電事業者、自治体、工場、EVメーカー、蓄電池メーカーなど多くの関係者が関与するシステムです。そのため、関係組織を横断して、通信規格やデータ形式、制御方式を統一して運用する必要があります。違う組織間で統一した運用方式を導入するのには大きな負荷がかかります。
スマートグリッドとマイクログリッドの違い

スマートグリッドに似た言葉としてマイクログリッドを耳にすることも増えてきました。マイクログリッドは、特定の地域や施設内で電力をつくり、ため、使うことを可能にする小規模な電力ネットワークです。スマートグリッドが広域の電力需給を高度に管理する考え方であるのに対し、マイクログリッドは地域や施設単位での自立性・防災性を高める点に特徴があります。両者は重なる部分もありますが、対象範囲と目的が異なります。
マイクログリッドは、災害などで外部系統に障害が発生した場合に活用でき、地域における災害時のレジリエンス向上に寄与する仕組みです。通常時は電力会社の送配電網と接続されていますが、災害などで外部系統に障害が発生した場合に地域の太陽光発電や風力発電で作った電力の非常用発電へ切り替えることができます。病院や自治体の庁舎、避難所、工場、大学キャンパスなどを中心に、停電時でも電力供給を継続できる仕組みとして導入が進められています。再生可能エネルギーを活用することで、地域内で独立して運転が可能であるという点が、マイクログリッドのポイントになります。
【関連コラム】マイクログリッドとは?仕組み・メリット・導入事例までわかりやすく解説
スマートグリッド導入成功のポイント

スマートグリッドを導入する上で重要なのは、導入前、導入初期の準備です。また、一気に導入せずに段階的に導入することも鍵となります。スマートグリッド導入成功のポイントを紹介します。
導入目的を明確にする
スマートグリッドは、
- 電力コスト削減
- 脱炭素化
- BCP対策
- 再エネ活用
など目的によって最適な構成が異なります。まずは導入目的を明確にし、解決したい課題を整理することが重要です。
エネルギーデータの可視化
スマートグリッドはデータ活用が前提となる仕組みなので、導入前に、使用電力量や最大需要電力、設備別消費量等を把握しなければ適切な設備選定はできません。まずは第一歩としてスマートメーターによる「見える化」を行いましょう。
再生可能エネルギーや蓄電池との連携
既存の電力系統をスマートグリッド化するだけでは効果が限定的です。太陽光発電や蓄電池、EV、VPPと組み合わせることで、電力コスト削減やCO2削減、レジリエンス向上の効果を最大化できます。
セキュリティ対策を導入段階から組み込む
スマートグリッドでは、スマートメーターやEMS、クラウドシステムなどがネットワーク接続されます。導入時から国が示すガイドラインに沿ったサイバーセキュリティ対策が不可欠です。
段階的な導入と効果検証
いきなり全施設へ導入するのではなく、特定施設での実証実験→一部設備での運用→効果測定という順番で拡大することが成功のポイントです。
国内でのスマートグリッド事例

国内では、企業、自治体、学術機関を中心にスマートグリッドの導入や実証実験が進められています。代表的な事例を3つ紹介します。
トヨタ自動車「Woven City」
静岡県裾野市にトヨタ自動車が建設したWoven Cityは、自動運転やAI等の技術を実証するための実験都市です。2020年9月の実証実験では、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)をスマートグリッドに接続し、電力の需給逼迫時や再エネの余剰発生時に、車載電池を「動く蓄電池」として充放電させ、グリッド全体の需給を予測・制御するアルゴリズムの検証が行われました。
宇都宮市「宇都宮ライトパワー」
宇都宮市では市が出資し、宇都宮ライトパワー株式会社を設立。「家庭ごみ等の焼却によるバイオマス発電」や「家庭用太陽光発電で余った電気」を調達し、再生可能エネルギーだけで走る次世代型路面電車システム「宇都宮LRT」を運行しています。他にも再生可能エネルギーにより使用施設等の電力を地産地消で賄っています。
参考:宇都宮市『地域新電力会社(宇都宮ライトパワー株式会社)』
中部大学「スマートエコキャンパス」
中部大学では、スマートグリッドを導入し、エネルギーの使用や発電を一元管理しています。キャンパス内にある施設間でクラウド接続し、電力を融通し合うことで建物間での電力消費のピークを抑えています。例えば、夕刻の照明ピークにはグラウンドの消費電力が大きくなるため、生命健康科学部の蓄電池から放電を行いキャンパスの電力量を平準化するといったことです。
企業のエネルギー効率化を進めるならスマートグリッドを

スマートグリッドは国が主導する2050年カーボンニュートラルの達成に不可欠であり、そのため企業や自治体にとっても今後、導入の重要性は高まると考えられます。脱炭素社会やレジリエンス向上に大きく貢献するだけでなく、AIやIoTによる需給最適化が進展すれば企業にとって電力コストダウンにも寄与するメリットがあるので、積極的に導入を検討したいところです。さらに、今後はEVやマイクログリッドとの連携が加速することも予測され、エネルギーの効果的な運用はさらに進むでしょう。
GREEN CROSS PARKのGX

東急不動産が推進する「GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)」は、企業活動と環境負荷低減の両立を目指す次世代型の産業まちづくりプロジェクトです。再生可能エネルギーの活用や高度なカーボンマネジメントの導入により、エリア全体で脱炭素化を推進しています。また、入居企業のGX(グリーントランスフォーメーション)やカーボンニュートラルへの取り組みを支援しながら、持続可能な産業団地の形成を推進。将来的には、再生可能エネルギー100%で稼働する産業団地の実現を目指しています。