企業誘致とは?方法や制度や事例、企業が立地先を選ぶポイントを解説

企業誘致とは?方法や制度や事例、企業が立地先を選ぶポイントを解説

目次

企業誘致は、自治体や地域が企業の工場・研究所・物流施設・本社機能などを呼び込み、雇用創出や地域経済の活性化を目指す取り組みです。誘致される側の企業にとっても、拠点戦略やサプライチェーン※1 、BCP※2 、地域連携を考えるうえで関係の深いテーマです。

本記事では、企業誘致の意味や注目される背景、主な方法、関係する制度、企業側から見たメリット、誘致事例を解説します。

※1 サプライチェーン:原材料の調達から製造、物流、販売まで、製品やサービスが消費者に届くまでの一連の供給網のこと
※2 BCP:災害や事故などの緊急時にも重要な事業を継続し、早期復旧するために企業が定める計画のこと

企業誘致とは?地域に企業の拠点を呼び込む取り組み

企業誘致は、自治体の地域政策であると同時に、企業の拠点戦略とも深く関わるテーマです。生産、物流、研究開発、本社機能などをどこに置くかは、事業成長やリスク分散にも影響します。

企業誘致と企業立地の違い

企業誘致とは、自治体や地域の開発主体が、企業の拠点を地域に呼び込むために行う施策や活動のことです。対象となる拠点には、工場、研究所、物流施設、データセンター、オフィス、本社機能などがあります。
一方、企業立地とは、企業が実際に拠点を設けることを指します。つまり、企業誘致は「地域側が企業を呼び込む取り組み」、企業立地は「企業側が拠点を設ける行為」と整理できます。

企業担当者にとっては、企業誘致を「自治体から支援を受けられる制度」としてだけ見るのではなく、自社の拠点戦略と地域の産業政策が重なる接点として捉えることが有効です。

企業誘致と産業集積・産業団地の関係

企業誘致と産業集積・産業団地の関係

企業誘致によって特定の地域に企業が集まると、産業集積が進みます。産業集積とは、同じ産業や関連産業に属する企業、取引先、人材、研究機関などが一定の地域に集まる状態です。
たとえば、自動車メーカーの工場が立地すると、部品メーカー、物流企業、設備保守会社、技術系人材、教育機関などが周辺に集まりやすくなります。こうした集積によって、調達や物流の効率化、技術交流、人材育成、共同研究などが進みます。

産業団地は、企業誘致を具体化する受け皿です。まとまった用地や基本的なインフラが整っていることで、企業は進出後の事業計画を検討しやすくなります。

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企業誘致が注目される背景

企業誘致が注目される背景

企業誘致が注目される背景には、地域側の課題と企業側の変化があります。人口減少、国内回帰、サプライチェーン再編、成長産業の拠点形成といった動きが関係します。

人口減少・地域経済の縮小への対応

地方では、人口減少や若年層の流出により、雇用の維持、地域内消費の縮小、税収の減少といった課題が生じています。企業誘致は、こうした地域課題に対し、新たな雇用や税収、地域内取引を生み出す手段として位置付けられます。

企業が地域に進出すると、直接雇用だけでなく、建設、物流、設備保守、清掃、飲食、住宅など周辺産業にも需要が生まれます。地域にとっては、単に一社を呼び込むだけでなく、長期的な地域経済の循環をつくるきっかけになります。

企業側にとっても、地域の人口動態や生活環境は無視できません。採用可能な人材がいるか、従業員が暮らしやすいか、通勤圏に住宅が確保できるかといった条件は、拠点の安定運営に直結します。

国内回帰・サプライチェーン再編の流れ

国内回帰・サプライチェーン再編の流れ

近年は、地政学的リスクや為替動向などを背景に、グローバルサプライチェーンを見直し、国内に産業や事業の拠点を持つ動きも見られます。経済産業省は、こうした動きに対して、企業ニーズに対応できる産業用地の整備が課題になっているとしています。

参考:経済産業省『産業立地』

経済産業省が2026年に公表した「2025年(1月~12月)工場立地動向調査」によると、2025年の工場立地件数は736件、立地予定面積は1,196haでした。また、立地地点の選定理由では「本社・他の自社工場への近接性」が最も多く、次いで「地価」が多いとされています。

出典:経済産業省『2025年(1月~12月)工場立地動向調査の結果について』

この結果からも、少なくとも製造業に関しては、企業は単に土地の安さだけでなく、既存拠点との近さ、取引先との距離、事業全体の運営効率を見ながら立地を判断していることがわかります。

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成長産業を地域に取り込む動き

自治体にとって、どの産業を誘致するかは地域の将来像に関わります。中小企業庁の2023年版中小企業白書では、自治体が今後企業誘致に力を入れていきたい産業分野として、再生可能エネルギー・カーボンニュートラル※3 関連、AIチップ・半導体関連、5G等の情報通信関連などが挙げられています。

※3 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量・削減量を差し引き、実質的な排出量をゼロにする考え方のこと

自治体が今後企業誘致に力をいれていきたい産業分野

出典:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

企業誘致は、単なる雇用確保策にとどまらず、地域の産業構造を形づくる政策としての意味を強めています。企業側にとっても、成長産業に力を入れる地域へ進出することで、関連企業、研究機関、行政支援、人材育成の取り組みと接続しやすくなります。

企業誘致の主な目的

企業誘致には、地域側と企業側の双方に目的があります。自治体は地域経済の活性化を目指し、企業は事業拡大や拠点最適化の機会として誘致施策を活用します。

雇用の創出

雇用の創出

企業誘致の代表的な目的は、地域に雇用を生み出すことです。工場や物流施設、研究所、オフィスなどが立地すれば、地域内で新たな採用が発生します。
ただし、雇用を生み出すだけでは十分ではありません。地域内で人材を確保できなければ、企業は長期的な操業に不安を抱えます。そのため、企業誘致では、学校や大学、高専、職業訓練機関との連携も求められます。

地域経済と税収の拡大

企業が地域に進出すると、法人関係税、固定資産税、従業員の所得や消費、周辺企業との取引などを通じて、地域経済に波及します。
特に製造業や物流業のように大規模な土地・建物・設備を伴う事業では、設備投資や関連産業への需要も生まれます。企業担当者にとっては、地域経済への貢献が自治体や住民との関係構築につながる点も見逃せません。

産業集積とサプライチェーン形成

企業誘致は、産業集積を生み出す出発点になります。中核企業が進出すると、関連企業やサプライヤー、物流事業者、研究機関などが集まりやすくなります。
産業集積が進むと、企業は調達、配送、人材確保、共同開発などの面でメリットを得やすくなります。サプライチェーンの強化は、事業継続の観点からも意味があります。

地域ブランド・人材流入の促進

企業誘致は、地域ブランドの形成にも関わります。「半導体の集積地」「ものづくりのまち」「GX※4 を志向する産業地域」といったイメージが定着すれば、企業や人材をさらに呼び込みやすくなります。

地域に特徴ある産業が育つと、学生や技術者、研究者がその地域に関心を持ちやすくなります。企業側にとっても、地域ブランドは採用広報や取引先への説明材料になります。

※4 GX:グリーントランスフォーメーションの略。脱炭素社会の実現に向けて、エネルギーや産業構造を転換する取り組みのこと

企業誘致を進めるための主な手法と支援策

企業誘致を促進する主な手法は、用地整備、補助金、税制、人材支援、インフラ整備、地域企業との接続などがあります。これらは企業側が立地を選定する際、支援内容を個別に見るだけでなく、地域の総合力を測る指標としても機能します。

産業団地・工場用地の整備

産業団地・工場用地の整備

企業誘致の基本となるのが、企業が進出できる土地の確保です。工場や物流施設、研究所はまとまった敷地とインフラを必要とするため、産業団地や工場適地の整備が進出判断を左右します。

経済産業省は、工場・倉庫・研究所・本社・支社などのニーズに応じた産業用地マッチング事業を実施しています。また、9,000㎡以上の工場適地に関する情報を収集・公表する「METI土地ナビ」も運用しています。

参考:経済産業省『産業立地』

参考:経済産業省『METI 土地ナビ』

企業担当者は、用地面積や価格だけでなく、造成状況、電力容量、用水、排水、道路幅、用途地域、周辺住民との距離、災害リスクなどを評価するケースが一般的です。

補助金・税制優遇による初期投資支援

企業が新たな拠点を設ける際には、土地取得、建物建設、設備投資、人材採用など、多額の初期投資が発生します。そのため、自治体や国の補助金、税制優遇、雇用奨励金などは、企業の意思決定に影響します。

中小企業白書では、中小企業が新たな立地の際に期待する支援内容として、補助金や税制優遇への期待が高いことが示されています。一方で、企業誘致の目標を上回る自治体では、補助金や税制優遇だけでなく、工場跡地の紹介や人材確保支援も積極的に実施しているとされています。

自治体が企業誘致で実施している取組と中小企業が期待する支援内容
順位自治体の取組中小企業の期待
第1位固定資産税の減免(60.1%)固定資産税の減免(58.3%)
第2位雇用奨励金(47.5%)設備に対する補助金(38.1%)
第3位設備に対する補助金(45.0%)不動産取得税の減免(34.2%)
第4位工場跡地、遊休地の紹介(40.8%)事業税の減免(32.5%)
第5位土地取得に対する補助金(36.1%)土地取得に対する補助金(31.9%)
資料:(株)野村総合研究所「中小企業支援機関における支援能力向上に向けた取組等に関するアンケート」、(株)野村総合研究所「地域における中小企業のデジタル化及び社会課題解決に向けた取組等に関する調査」
注)複数回答のため、合計は必ずしも100%にはならない。

出典:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

企業側は、支援金額だけで判断するのではなく、申請要件、対象経費、採択時期、操業開始期限、雇用要件、事業継続要件などを確認する必要があります。

交通・物流インフラの整備

交通・物流インフラの整備

製造業や物流業では、交通・物流インフラが立地判断に直結します。高速道路IC、港湾、空港、鉄道貨物駅、幹線道路、主要取引先との距離などは、輸送コストや配送リードタイムに影響します。
今後は、幹線輸送における自動運転技術や隊列走行、物流拠点間のデータ連携なども、物流インフラを考えるうえで重要な視点になります。将来的な物流DXに対応しやすい地域であるかどうかは、製造拠点や物流拠点の立地魅力を高める要素になり得ます。

経済産業省の工場立地動向調査では、2025年は立地件数の半数以上が高速ICから5km以内の立地とされています。

出典:経済産業省『2025年(1月~12月)工場立地動向調査の結果について』

自社の顧客、仕入先、既存拠点との位置関係を踏まえ、拠点網全体で判断することが欠かせません。

人材確保・教育機関との連携

人材確保・教育機関との連携

企業誘致では、土地や補助金だけでなく、人材確保も大きなテーマです。特に製造業、半導体、物流、ロボティクス、データセンターなどでは、現場人材と高度専門人材の両方が必要になります。

自治体によっては、高校、大学、高専、職業訓練機関と連携し、採用支援や人材育成を行っています。岩手県北上市の事例では、企業立地課とは別に産業雇用支援課を設け、誘致企業・地場企業を問わず人材確保や育成の助言を行う体制を整えています。

参考:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

地域企業とのマッチング・共創支援

地域企業とのマッチング・共創支援

誘致企業が地域に根づくには、地場企業との関係づくりが欠かせません。部品、材料、物流、設備保守、研究開発、人材育成などで地域企業と接続できれば、地域内での事業基盤が強くなります。

北上市の事例では、企業訪問を行い、誘致企業に対して地場企業の紹介や取引先のマッチングを行っていると紹介されています。

参考:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

また、佐賀県では、企業誘致を担当していた職員を、異動後も企業の意向に応じて「パーマネントスタッフ」として委嘱する制度があります。担当者が変わっても企業との関係が途切れないようにし、人材確保や用地拡張などの相談に継続的に対応することで、進出企業が地域に長く根づきやすい体制を整えています。

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企業側にとっては、自治体が単に用地を紹介するだけでなく、進出後の課題や取引先開拓まで伴走してくれるかが、立地後の成否に関わります。

海外・外資系企業への誘致活動

企業誘致は国内企業だけを対象にするものではありません。外資系企業を地域に呼び込む動きも進んでいます。

JETROは、自治体、大学・研究機関、地域企業、産業コミュニティなどと連携し、外国・外資系企業の国内地域への誘致や国際協業連携に取り組んでいます。外資系企業を誘致する場合、英語対応、行政手続き、住環境、教育環境、研究機関との接続など、より幅広い支援体制が求められます。

参考:JETRO『地域エコシステムへの外国・外資系企業誘致活動』

企業誘致に関わる主な制度・支援策

企業誘致に関わる主な制度・支援策

企業誘致には、国の制度、税制、交付金、自治体独自の補助金などが関係します。制度ごとに対象者や目的が異なるため、企業側・自治体側のどちらに関係する制度なのかを分けて整理して把握することが重要視されています。
(以下、2026年7月現在の情報に基づく)

地域未来投資促進法

地域未来投資促進法は、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者に相当の経済的効果を及ぼす「地域経済牽引事業」を促進する法律です。

企業立地の文脈では、地域の産業特性を生かした設備投資や拠点整備を進める際に関係する制度です。経済産業省の産業立地ページでは、地域未来投資促進法を活用することで、農地転用許可や市街化調整区域の開発許可手続きに関する配慮を受けられる場合があると説明されています。

参考:経済産業省『地域未来投資促進法』

参考:経済産業省『産業立地』

地域未来投資促進税制

地域未来投資促進税制は、地域経済牽引事業計画に従って建物・機械等の設備投資を行う場合に、一定の要件を満たすことで、法人税等の特別償却または税額控除を受けられる制度です。経済産業省のページでは、適用期限が2027年度末、つまり2028年3月31日までと示されています。

この税制を受けるには、都道府県知事による地域経済牽引事業計画の承認と、国による課税特例の確認が必要です。投資判断の初期段階から、自治体や専門家に相談しておくとよいでしょう。

参考:経済産業省『税制支援「地域未来投資促進税制」』

地方拠点強化税制

地方拠点強化税制は、本社機能の地方移転や、地方にある本社機能の拡充を促す制度です。対象となる特定業務施設には、事務所、研究所、研修所などが含まれます。
一方で、生産や販売を主目的とする施設は原則として対象外とされているため、工場や物流施設そのものではなく、本社機能、研究開発機能、人材育成機能などの移転・拡充に関係する制度として理解する必要があります。

参考:内閣官房地域未来戦略本部事務局・内閣府地方創生推進事務局 地方創生総合サイト『地方拠点強化税制及び関連する自治体支援施策』

新しい地方経済・生活環境創生交付金

新しい地方経済・生活環境創生交付金は、地方公共団体の取り組みを支援する交付金です。内閣官房・内閣府のページでは、制度概要、制度要綱、採択結果などが公開されています。

企業が直接利用する補助金ではなく、自治体が地域づくりや生活環境整備に活用する制度として捉えるとよいでしょう。交通、住宅、子育て、教育、防災、デジタル基盤などは、長期的には企業の立地魅力にもつながります。

参考:内閣官房地域未来戦略本部事務局・内閣府地方創生推進事務局 地方創生総合サイト『新しい地方経済・生活環境創生交付金』

自治体独自の企業立地補助金・優遇制度

多くの自治体では、企業立地を促すために独自の補助金や優遇制度を設けています。対象は、土地取得費、建物建設費、設備投資、雇用、固定資産税、不動産取得税、オフィス開設費など、自治体によって異なります。

制度は毎年度見直されることがあるため、対象業種、投資額、雇用人数、操業開始期限、申請時期、予算上限など、進出検討時点で各自治体の最新情報を確認する必要があります。

※本記事は執筆時点の情報に基づいています。法制度や補助金制度は変更される可能性があるため、最新の公式情報をご確認のうえ、申請や活用の是非については、各社の状況を踏まえてご検討ください。

企業側から見た企業誘致のメリット

企業側から見た企業誘致のメリット

企業誘致は地域側の政策であると同時に、企業側にとっては拠点戦略を有利に進める機会でもあります。費用、人材、供給網、BCP、企業価値など、企業の観点からメリットを整理します。

初期投資を抑えやすい

企業誘致施策を活用することで、立地に際して土地取得、建物建設、設備導入、雇用などに関する初期投資を抑えられる場合があります。補助金や税制優遇だけでなく、整備済みの産業団地を活用できる点もメリットです。
造成済みの用地やインフラが整った場所であれば、操業開始までの期間を短縮しやすくなります。

人材確保や採用広報につながる

自治体が学校や大学、高専、職業訓練機関と連携している地域では、採用活動や人材育成を進めやすくなります。
また、企業誘致を通じて地域内で認知度が高まれば、採用広報にもつながります。地元高校生や大学生、Uターン希望者に対して、地域で働く選択肢を示しやすくなるためです。

サプライチェーンを強化できる

サプライチェーンを強化できる

産業集積が進む地域に立地すれば、調達先、物流企業、設備保守会社、研究機関などと連携しやすくなります。取引先との距離が近くなることで、輸送コストやリードタイムの短縮も期待できます。

特に製造業では、材料、部品、装置、保守、人材のネットワークが事業競争力に影響します。地域クラスターに入ることは、自社だけでは構築しにくい外部資源を活用することにもつながります。

BCP・レジリエンス※5の強化につながる

BCP・レジリエンス※5 の強化につながる

BCPとは、災害や事故などが発生しても重要な事業を継続・早期復旧するための計画です。企業立地では、災害リスク、電力、通信、物流、代替輸送、複数拠点化などの観点が欠かせません。
既存拠点が特定地域に集中している場合、別地域に新たな拠点を持つことでリスク分散になります。

※5 レジリエンス:災害やトラブルが発生しても、事業や地域の機能を維持・回復できる力のこと

地域との共創によって企業価値を高められる

企業誘致は、地域との関係をつくる入口でもあります。地域雇用の創出、教育機関との連携、地場企業との取引、脱炭素への取り組み、地域課題の解決などは、企業の社会的価値を説明する材料になります。
企業が進出先の地域と共創関係を築くことで、単なる拠点新設ではなく、中長期的な価値創造につながります。

企業が立地先を選ぶときの判断ポイント

企業が立地先を選ぶときの判断ポイント

企業誘致施策を活用するには、候補地を総合的に比較する視点が必要です。土地や補助金だけでなく、操業後の実務に関わる条件を確認しましょう。

土地・建物・インフラ条件

まず確認したいのは、土地とインフラの条件です。敷地面積、形状、造成状況、用途地域、建ぺい率、容積率、周辺環境、地盤、浸水リスク、電力容量、上水、工業用水、排水、通信環境などを確認します。
工場や物流施設では、将来の増設余地も見ておく必要があります。操業開始時点では十分に見える土地でも、事業拡大時に拡張できないと、再移転や追加投資が必要になる可能性があります。

交通アクセス・物流効率

交通アクセスは、原材料の調達、製品配送、従業員の通勤、取引先との往来に影響します。高速道路IC、港湾、空港、鉄道、主要顧客との距離、配送ルートの混雑状況などを確認しましょう。
製造業ではサプライヤーや既存工場との距離、物流業では配送先へのリードタイムや幹線輸送との接続がポイントです。

人材・生活環境

長期的な操業には、人材確保が欠かせません。地域の労働人口、職種別の採用可能性、賃金水準、通勤圏、教育機関、職業訓練機関、住宅、医療、子育て環境などを確認する必要があります。
高度人材や外国人材を必要とする場合は、住居、学校、医療、言語対応、交通アクセスなども見ておくべきです。

補助金・税制・行政支援

補助金や税制優遇は、立地判断を後押しする要素です。ただし、支援金額だけでなく、申請時期、対象経費、採択条件、雇用要件、設備投資額、操業開始期限、報告義務などを確認する必要があります。
行政支援の質も見逃せません。用地紹介、許認可相談、地域企業とのマッチング、人材確保支援、追加投資の相談など、進出後も伴走してくれる地域かどうかが、実務上は大きな差になります。

地域産業との相性

候補地を選ぶ際は、自社の業種と地域産業の相性を見ます。既存産業、取引先、大学、研究機関、物流網、エネルギー供給、自治体の産業ビジョンなどが、自社の事業と合っているかを確認しましょう。
地域の強みと自社の事業が重なれば、進出後の取引、採用、共同研究、ブランディングが進めやすくなります。

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企業誘致の代表事例・注目事例

企業誘致を理解するには、実際の事例を見ることが有効です。半導体産業の集積や工業団地整備、人材支援といった観点から、国内の事例を紹介します。

熊本県|TSMC・JASMを起点とした半導体産業集積

熊本県|TSMC・JASMを起点とした半導体産業集積

熊本県では、TSMCの進出を機に、半導体関連産業の集積が進んでいます。TSMCが過半数を出資するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)は、熊本県菊陽町にTSMCとして日本初となる工場を設けており、第1工場は2024年後半に量産を開始しました。

出典:TSMC『2025 Q4 Quarterly Results|Earnings Conference Transcript』

また、第2工場の建設も始まっており、両工場合計で月間10万枚超の生産能力や3,400人以上の雇用創出が見込まれています。

出典:TSMC『JASM Set to Expand in Kumamoto, Japan』

九州経済産業局の資料では、JASM第1工場・第2工場などを含む電子デバイス産業全体について、2022年から10年間の経済波及効果を約11.2兆円とする試算が示されています。さらに、熊本県の半導体関連産業では240社以上の企業進出や設備の追加投資が決定しているとされており、中核企業の立地が関連企業の進出、人材育成、地域経済へ広く波及する事例といえます。

出典:経済産業省 九州経済産業局『ご説明資料 令和8年3月19日』

この事例からわかるのは、中核企業の誘致が、関連企業の進出、人材育成、交通・生活インフラ整備、地域企業の取引機会へ波及するという点です。

北海道千歳市|Rapidusを中心とした次世代半導体拠点

北海道千歳市|Rapidusを中心とした次世代半導体拠点

北海道千歳市では、Rapidus株式会社による次世代半導体の研究開発・量産製造拠点「IIM(Innovative Integration for Manufacturing)」の整備が進んでいます。IIM-1は2023年9月に起工し、2025年4月にパイロットラインが稼働、2027年の量産開始を予定しています。また、2024年12月には、量産対応のEUV露光装置としては日本初となる装置がIIM-1に搬入されました。

出典:Rapidus『半導体開発製造拠点 IIM(イーム)』

北海道は、Rapidusの立地について、次世代半導体の製造だけでなく、研究や人材育成を含む複合拠点の形成につながるものと位置づけています。国や千歳市とも連携しながら、最先端半導体工場の整備が円滑に進むよう取り組んでおり、大規模な中核企業の立地を契機に、研究、人材育成、関連産業の集積を一体で進めようとしている注目例といえます。

参考:北海道『次世代半導体産業立地推進ポータルサイト』

岩手県北上市|工業団地と雇用支援による製造業集積

岩手県北上市|工業団地と雇用支援による製造業集積

岩手県北上市は、製造業の集積と雇用支援を組み合わせた企業誘致の事例として紹介されています。中小企業白書によると、北上市では企業立地課とは別に産業雇用支援課を発足し、誘致企業・地場企業を問わず、人材確保や育成の助言を行う体制を整えています。

同市では、東北各地の高校・大学等を訪問して市内企業の魅力を発信する取り組みや、地場企業の紹介、取引先のマッチングなども行われています。

参考:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

この事例からは、企業誘致を成功させるには、用地や補助金だけでなく、人材確保、地場企業との関係構築、進出後のフォローアップまで含めた支援体制が重要であることがわかります。

企業誘致の成功事例に共通するポイント

企業誘致の成功事例に共通するポイント

企業誘致を一時的な立地で終わらせないためには、地域の将来像と企業の成長戦略を接続する視点が必要です。成功事例から見える共通点を整理します。

誘致したい産業を明確にする

企業誘致では、どの企業でもよいという考え方ではなく、地域の強みや将来像に合う産業を明確にすることが求められます。

中小企業白書では、優先的に誘致すべき産業分野を検討している自治体では、検討していない自治体と比べて企業誘致政策の目標を達成している割合が高いことが示されています。

参考:中小企業庁『2023年版「中小企業白書」第1部 第5章 第2節 地域経済の持続的発展に向けた自治体による企業誘致の取組』

用地・制度・人材を一体で整える

企業が進出を判断する際、土地、補助金、人材、物流、生活環境、行政支援は一体で評価されます。用地があっても人材が確保できなければ、操業は安定しません。補助金が手厚くても、交通条件が悪ければ物流コストが高くなります。

企業側も、候補地を比較する際には「土地価格が安い」「補助金がある」といった単独条件ではなく、操業開始後の事業全体を見て判断することが大切です。

誘致後のフォローアップを行う

企業誘致は、企業が進出した時点で終わりではありません。操業後には、採用、取引先開拓、設備増設、行政手続き、地域住民との関係、交通・住環境など、さまざまな課題が出てきます。

北上市のように、企業訪問や地場企業とのマッチング、人材確保支援を継続する自治体では、誘致企業が地域に根づきやすくなります。

地域全体の産業まちづくりとして考える

企業誘致を長期的な地域成長につなげるには、産業まちづくりの視点が欠かせません。産業まちづくりとは、企業立地、産業集積、交通、生活環境、エネルギー、データ基盤、地域連携を一体で考える地域づくりです。

誘致企業と地場企業、教育機関、自治体、住民が関係を築き、地域全体で価値を生み出す仕組みをつくることが、これからの企業誘致には求められます。

企業誘致と産業団地・スマートシティの関係

企業誘致と産業団地・スマートシティの関係

企業誘致を進めるうえで、産業団地やスマートシティの考え方は、企業が進出しやすい地域環境を整える要素になります。

産業団地は、企業誘致の受け皿として機能します。道路、電力、上下水道、通信、区画、用途地域などが整っていれば、企業は進出後の事業計画を立てやすくなります。経済産業省の2025年工場立地動向調査では、工業団地に立地する件数は3割程度とされており、まとまった土地とインフラを必要とする製造拠点や物流拠点にとって、産業団地は有力な選択肢になります。

出典:経済産業省『2025年(1月~12月)工場立地動向調査の結果について』

また、スマートシティの考え方も、企業誘致の価値を高める要素です。スマートシティとは、ICTなどの新技術や官民データを活用し、都市や地域の課題解決、新たな価値創出を目指す都市または地域のことです。
企業誘致の文脈では、交通、エネルギー、防災、行政手続き、データ連携、物流効率化、生活環境整備などが、立地先としての魅力につながります。

参考:内閣府『スマートシティとは』

さらに、脱炭素対応を進める企業にとっては、再生可能エネルギーの活用、省エネ設備、CO2排出量の可視化、災害時の電力確保なども重要な判断材料になります。これからの企業誘致では、企業を呼び込むだけでなく、産業団地、スマートシティ、GXを志向する地域づくりと組み合わせ、企業と地域の双方に価値を生み出す視点が重要です。企業誘致は、地域と企業が共に成長する産業まちづくりの出発点といえるでしょう。

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まとめ|企業誘致は地域と企業の成長をつなぐ取り組み

企業誘致とは、自治体や地域が企業の工場、研究所、物流施設、本社機能などを呼び込み、雇用創出、税収増加、産業集積、地域経済の活性化を目指す取り組みです。

企業側にとっても、企業誘致は補助金や税制優遇を活用できる可能性があるだけでなく、人材確保、サプライチェーン強化、BCP、地域との共創にも関わる重要なテーマです。

これからの企業誘致では、単に企業を呼び込むだけでなく、産業団地、スマートシティ、GXを志向する地域づくりと組み合わせながら、企業と地域の双方に価値を生み出す視点が求められます。企業誘致は、地域と企業が共に成長する産業まちづくりの出発点といえるでしょう。

GREEN CROSS PARKとは

GREEN CROSS PARKのGX

GREEN CROSS PARK(グリーンクロスパーク)は、東急不動産が推進する産業まちづくり事業です。GX・DX・まちづくりの力を組み合わせ、産業団地を起点とした持続可能なまちづくりと、産業振興・地域共創への貢献を目指しています。
企業誘致は、地域に企業を呼び込む入口ですが、企業が集まるだけでは地域全体の価値向上にはつながりません。GREEN CROSS PARKでは、産業団地を単なる用地供給の場ではなく、企業と地域が新たな価値を生み出す場と捉え、企業誘致や産業集積を地域の持続的な成長につなげていきます。

GREEN CROSS PARK とは>>

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